ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第95回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第95回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
100歳になる文化勲章受章者の画家・野見山暁二は東京美術学校(現・東京芸大)を繰り上げ卒業になり出征、戦後は戦没画学生慰霊美術館 “無言館” を支援しました。絵には “具象” “抽象” のほかに “象徴” があると主張、 “絵を描くことは省略すること” との信念を貫いています。 “目の前の対象をひっくるめた空間や空気” で描く東洋画の世界を油彩で表現。はっきりした境界もなくあいまいだけど、全てが一体になって宇宙が出来上がっているとの感覚。日本人はそうやって象徴的に空間を捉えているとの見立て。高齢になるに従い一段と過激になり自由自在。絵のタイトルにも “夜が過ぎても夜” “窮屈な空” “誰にも言うな” 等の鋭い突っ込み。夢や課題を設定し、強敵に挑むように一途にやる覚悟。対象に引きずられることなく、自分の中にあるものを引きずり出す執念。新型コロナ後の生き方・ビジネスのあり方の本質を示唆するものかも。梁塵秘抄では “珍しき今日の春日の八少女を 神もうれしと偲ばざらめや” とあります。少女の舞に神もご満悦。 “化粧は顔にすればいい、心にまでするな” と思想家・モンテニュー。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
予測可能なエラー 発生する確率を減らす
苦しみの中では 一〇〇%楽しい歌でなく
暗く陰のある歌を明るく歌う、と山田太一
山田太一は脚本家。 “岸辺のアルバム” “ふぞろいの林檎たち” など、数々の名作を残しています。就職難の時代で、希望していた教師になれず、松竹大船の助監督に滑り込み。入社後は名匠・木下惠介監督に師事。脚本家としてしのぎを削った “北の国から” “前略おふくろ様” で知られる倉本聰のインタビュー番組が一番印象に残ります。約50人に対して、各人1か月4回のシリーズで、山田太一、山田洋次、津川雅彦、八千草薫、大竹しのぶなど多士済々。その時の山田太一の人生観・人間観の重さには唸りました。脚本も全体重が産みだすものと実感。 “腹の虫で客観的に観る” と画家・中川一政。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
蕾・開花・敗荷 流行の移り変わりが早まる
三跡の世界 小野道風・藤原佐理・藤原行成
昼も夜も熟慮し温める、と画家・ルーベンス
ルーベンスは17世紀フランドルの画家・外交官。祭壇画・肖像画・風景画など、様々なジャンルの絵画を残しました。大規模な工房を経営し、ルーベンス風の絵画に “ルーベンス工房” の表記が見られます。同じ17世紀、俵屋宗達も “俵屋工房:伊年” を率いています。古典的知識を持ち、7ヶ国語を話し外交官としても活躍。宗達も、当代一流の文化人・本阿弥光悦らと交わり、茶の湯を嗜む教養人。ルーベンスも、フィレンツェ・ローマで古代ギリシャ・ローマの芸術作品に触れた修業は大きな財産。どの時代も、外に出て修業するのは血肉になるもの。 “苦難の位置を変えてみる” とアンネ・フランク。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
一人になっても 顧客とともに遊ぶ・協創する
世界で勝つことを 考えているのかいないのか
浮世絵 国貞・似顔 国芳・武者 広重・名所
浮世絵は、江戸初期に成立した絵画。江戸を中心に発達、大和絵が源流で狩野派・土佐派などの様式を取り入れたもの。浮世絵の形態は肉筆画と木版画に分類。庶民に広まったのは、版画形式による大量生産と低価格化が決め手。題材は極めて多種に及び、美人画・役者絵・名所絵など、庶民の需要や当時の風俗を反映したものが多数。 “浮世” とは憂き世が語源といわれますが、 “好色気味の俗世間” との意味も込められているとか。顔だけでなく心にシワを刻み込むのが人の一生。上野・国立博物館は絶品の浮世絵のオンパレード。この世の肯定感タップリ。 “一番面白い劇は歴史” と劇作家・寺山修司。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第95回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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