ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第97回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第97回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
横浜美術館では、先日まで “トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館-20世紀西洋美術コレクション” が開催されました。まさに“鼎(かなえ)の軽重を問う”展覧会。3館が誇る20世紀西洋美術コレクションを横浜美術館に集結したもの。3美術館のコレクションを集結させることにより、海外の美術館にひけをとらない展示を実現する狙い。海外作品借用が難しいコロナ禍では、今回のやり方が新たな発想の切り口になるかも。まだまだ国内の多くの美術館には想定を超えるお宝が埋もれていそう。21世紀の面白く快適な社会では “多様・異彩・自律” が本命。ここでのAIの役割は、誰も予想しない多様な選択肢を提案できること。実現できれば、AI時代はワクワク。3館所蔵のピカソの女性像を比較できる面白さ。思想の革新が重なり合う20世紀美術のマグマ。今後2年間、横浜美術館は大規模改修工事のため休館。休館前の素敵なプレゼント。梁塵秘抄では “東には女は無きか男巫女 さればや神の男には憑く” とあります。降臨する神が憑くのは女性。 “作曲は右脳、アレンジは左脳” と作曲家・小林亜星。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
スティーブ・ジョブスの眼力は鋭い 他人の考え方に惑わされず、直感を信じる勇気
知識社会のリーダーに求められる資質 知的で複雑な成長プロセスを推進できること
もう一つは起業家的な発想 マネをするだけでは、仕事や人間が小さくなるという戒め
スティーブ・ジョブスは、ハングリー精神を土台にバカを貫いた人生。アップルに復帰してCEOに就任後、基本給与は年1ドル。勿論、アップルからは莫大なストックオプションを獲得。 “点と点をつなげること”が核心的な基軸。一見バラバラに思える経験でも、後に思わぬ形でつながり、将来の大きな糧になること。大きな喪失や敗北が創造的な時間と人との出会いを齎すこと。21世紀のAI時代を先読み。リーダーに求められる条件は“知的で複雑な成長プロセスを推進できる” 資質。 “既知の領域が拡大するに伴い、未知の領域は狭まるどころか、かえってそれに比例して拡大する” と思想家・林達夫。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
主力事業が消えたら何で食べていくか 現状が永遠に続くとは誰も考えていないはず
現状否定に対する抵抗は強いが 限界と真趣への思いを忘れず危機では積極策をとる
山ほどのデッサン そのままではなく、再構成した後で絵にしていく、と画家杉山寧
哲人セネカは、ローマ皇帝ネロの幼少期の家庭教師として有名。治世ではブレーンとしても皇帝を支えたとか。ストア派哲学者として知られ、ラテン文学を代表する一人に列せられました。新型コロナが世界を揺るがす中、 “誰かに起こることは誰にでも起こる” とは至言。これからの時代環境を考える時、 “問題になるのは量にあらずして質” という言葉を吟味すべきかも。AI時代は、若い人間も経験者・高齢者も同じスタートラインに立つ。であれば、何が何でも質・本源に注力。山ほどのデッサンをした後の再創造に没入。 “仕事が楽しみなら人生は極楽、仕事が義務なら人生は地獄” と作家・ゴーリキー。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
前も後も断って進む、後を振り返らず前ばかりあまり見ず 足元をしっかり見て進む
自分の問いを、常に見えるようにする やり過ごさない、棚にあげておくと忘れがち
それでも大抵は失敗や挫折 簡単に成功する時は、かえって危ないと気を引き締める
“自分の問いを常に見えるようにする” というのは禅の根本理念とか。ビジネスの場では、 “禅:マインドフルネス” としてよく使われるようになりました。 “禅:Zen” を世界中に広めた貢献者の一人が鈴木大拙。出身の金沢に立つ鈴木大拙館は海外の旅行者には人気スポットの一つ。AI時代は “問題の発見” が第一義。問いがあってのAI活用。大拙が語る“霊性の自覚”とは、悟りの具体相と心理的過程を捉えること。常に “問いを見える化” するということ。五感の視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚を研ぎ澄ます。苦行ではなく遊び。 “欠点を直すことに一生懸命にならない” と将棋棋士・羽生善治。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第97回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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