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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第99回)

by staff on 2021/6/10, 木曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第99回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

故・ダイアナ妃のケンジントン宮殿の執務室には日本人画家・吉田博の木版画が2枚飾られていました。1枚は瀬戸内海の “光る海” 、もう一枚は背後に興福寺が見える “猿沢の池” 。学校の教科書では、日本の近代絵画は黒田清輝が主流。吉田は黒田との対立もあり、最近までは忘れられた存在。しかし、実力の凄さが評価され、現在は黒田清輝を凌ぐ人気。イノベーションも、目先の成果を追わず、ひたすら “地力” を蓄積することが最後はものをいうのかも。吉田の海外拠点はフランスでなくアメリカ。また、油彩・水彩だけでなく木版画にも挑戦。江戸の浮世絵の刷りが10回前後といわれる中で、代表作の一つである日光東照宮・陽明門の木版画は刷りが100回前後で独特の瑞々しさ。戦後、GHQの将校や夫人は真っ先に吉田詣で。マッカーサー夫人もアトリエを訪れています。梁塵秘抄では “娑婆にゆゆしく憎きもの 法師の焦る上馬に乗りて 風吹けば口開きて 頭白かる翁どもの若女好み 姑の尼君のもの妬み” とあります。女性のエキスがもつ粋なパワー。 “データも表現に変えられる” とメディアアーティスト・真鍋大度。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

型から入り型を体得、型を出る あとは型を破り、独自の世界に挑む
今後の経済・経営の基盤 二〇世紀は物理学型、二一世紀は生物学型
数字・データはあくまでも素材 環境適応の生態系としてイメージ化
混沌と非常識、その延長線を乗り越えて世界を観る 予定調和はない

サイバネティックスは通信工学と制御工学を融合し、生理学・機械工学・システム工学を統一的に扱う学問。サイバーやサイボーグなどの語源となり、1960年代前後は大きな関心を集めました。その中心にいたのがMIT教授のノーバート・ウィーナー。今でも、ウィーナーの本が書棚に何冊か残っています。渡り鳥の飛翔からヒントを得たといわれ、語源はギリシャ語で “舵を取る者” 。現在のICT/AIの魁。NASAのロケット科学者が金融工学を開拓し、その鉱脈の中でAIが進化したのと韻を踏む流れ。アメリカの底力。 “IoT時代のネットワークの肝は柔軟性” とコンピュータ科学者・村井純。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

組織内改革は難しい 外部の目線やネットワークを如何に組織に持ち込むか
三振をとれる余力を残しながら とりあえず打たせてとるピッチングを工夫
三振という固定観念や思い込みを排除する 変革の可能性を常に念頭に置く
上策は敵も察知、下策をとる、と上杉謙信 共振、科学だけでは答が出ない

上杉謙信は、戦国時代に越後を中心に支配した大名。関東や北陸地方にも度々出兵。私の育った能登・七尾城も謙信に滅ぼされています。その時の謙信の漢詩 “九月十三夜” は “霜は軍営に満ちて秋気清し 数行の過雁 月三更 越山併せ得たり 能州の景・・・”。学校では時々詠わされました。謙信は戦国時代でも屈指の戦上手といわれ “上策は敵も察知、下策をとる” は現在のビジネスにも通用しそう。これからは、努力も大切ですが、発想の切換えが大前提になるのかも。三振に拘らず、打たせてとるのも一法。 “一瞬たりとて危険な綱渡り状態でない時はなかった” とミュージシャンのデヴィッド・ボーイ。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

好奇心が強い分、世界は広くなる 答ではなく考え方を徹底して教育する
多くの人が納得・満足してくれない場合 自分にまだ力がないということ
技術やスキルはいくらでも教えられるが プレッシャーは教えようがない
脳は、人間を前にして初めて本気になる 段取りを整えて、命と向き合う

ナポレオンはセントヘレナ島に流されて死を迎えますが、生前 “人間とは何か” と問われ “好奇心がすべて” と即答。21世紀の大変革期は今までの前提・常識が打ち砕かれ、一人ひとりが自分の頭で考え抜くことが必要な時代に。“努力さらに発想の転換” の時代、考える訓練に注力して許容範囲を拡大。学校教育や社会人の訓練もゼロから再構築。答ありきでなく見ぬ世界を友とする覚悟。理論修得だけでなくプロトタイプを創り続けることでセレンディピティを呼込む。“新たな視点を発見すること。AI時代にはスキルだけで生き抜くのは難しい” とクリエイティブデレクター・佐藤可士和。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第99回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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