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楽しい文字の世界(第27回) 和名色「鼠色」の奥深さ

by staff on 2021/6/10, 木曜日

第27回 和名色「鼠色」の奥深さ

 

世界で共通する色の名前とは違い、日本特有の和名色。四季折々の美しさや歴史の中から、情緒を大切に生まれた色ということが色名を見て感じます。

数限りなくある和名色の中から今日は「鼠色」についてお話したいと思います。

ねずみと言えば、ねずみ取り、ねずみ駆除、ねずみ講、ねずみ男、ねずみ小僧…が連想されます。どれも決して良いイメージはありません。しかし、色となるとそれはそれは深くなります。
ちなみに「鼠」の漢字は横を向いた鼠をそのままデザインして文字として誕生しています。

 鼠色が好まれた

鼠色は灰色とも呼ばれますが、厳密には違う色で、少しだけ明るく黄みを含んだ鼠色を灰色とすることがあります。鼠色の方がどんよりと暗い灰色及び灰色全般を指す色名です。古くは「うす墨」とも呼ばれました。

そして江戸時代には政府が贅沢を禁止し、派手で贅沢な着物を着てはいけないという「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」を発令しました。それでもその中で、「人と違うものを着たい」とか「おしゃれを楽しいたい」という気持ちから、茶色や鼠色の中で、試行錯誤して微妙な違いを生み、派生色が色々と誕生し大流行しました。まるで校則の中で何とかおしゃれを考える高校生のようで、禁止されるところから色々生まれる訳ですね。

 「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」

四十八茶百鼠とは、茶色を48色、鼠色を100色ほど使用したことからつけれれた言葉ですが、実際にはそれぞれ100色以上あります。

ということで、鼠色の他に「〇〇鼠」と鼠がつく多くの色名からいくつかをとりあげてみましょう。
「藍鼠」は藍みを帯びた暗い鼠色のことです。
「小町鼠」「源氏鼠」「利休鼠」など人物に因むものもあります。

「小町鼠」はほんのりと赤みを帯びた淡い鼠色。昔からあった色でしたが、美人の代名詞がつけば気品と知性あふれる印象になり、流行色になった訳です。
「源氏鼠」は光源氏に由来する色で、紫みを帯びた鼠色。高貴で品が感じられる色です。
「利休鼠」は千利休のお茶の緑みを帯びた鼠色。この色名は私も北原白秋の詩「城ヶ島の雨」で学生の頃に知りました。「なんと素敵な名前なんでしょう」と詳しく調べたことを思い出します。

「鴨川鼠」「深川鼠」など地名に因むものもあります。
「鴨川鼠」は青みの鼠色で、京都で呼ばれました。
「深川鼠」は薄い青緑みの鼠色で、深川のいなせな若者や渋さを好んだ芸鼓さんが愛用したそうです。

高校生の頃に作品の題材にした「城ヶ島の雨」を、数十年後また、鼠色の古墨で書いてみました。鼠色をお楽しみください!

筆者紹介

 
書家名 粟津 紅花 KOUKA AWAZU
本 名 粟津 絵里 ERI AWAZU
略 歴 愛知県生まれ。 横浜市在住。
3歳から筆を持ち、書を学ぶ。
銀行勤務を経て紅花書道塾を主宰して26年。
現在10か所の教室で門下生を指導。
また古典書道の作品制作に加え、店舗ロゴ、商品ロゴ、ポスター等のデザイン書道を手掛ける。
書道パフォーマンス、障がいをお持ちの方への書のボランティア指導、セミナー講師などにも力を入れるなど、国内外で幅広く活動中。
読売書法会会員。
謙慎書道会会員。
横浜書人会審査員。
日本デザイン書道作家協会正会員。
カルチャーセンター講師。
著 作 法華経書写書き込み練習帳―釈尊の究極の教え
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