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書評 「日本一心を揺るがす新聞の社説」 ごま書房新社 水谷もりひと(著)

by staff on 2021/7/10, 土曜日
 
タイトル 日本一心を揺るがす新聞の社説
単行本 189ページ
出版社 ごま書房新社
ISBN-10 4341084607
ISBN-13 978-4341084608
発売日 2010/10/29
購入 日本一心を揺るがす新聞の社説―それは朝日でも毎日でも読売でもなかった

突然この本が送られてきた。送り主の名がない。著者はみやざき中央新聞の編集長である。新聞社に電話で問い合わせた。「送っていない」という返事であった。しばらくして、埼玉から宮崎に移った友人が来社の予定を連絡してきた。はっと思って「本送った?」と聞いたら、「送ったよ!」ということであった。

感謝 勇気 感動 の章、「心を込めて“いただきます”“ごちそうさま”を」から。
食肉加工センターの職場では毎日たくさんの牛が殺され、その肉が市場に卸されていく。「牛を殺すとき、牛と目が合う。そのたびに坂本さんは、いつかこの仕事をやめよう、と思っていた。ある日の夕方、牛を乗せた軽トラックがセンターにやってきた。しかしいつまで経っても荷台から牛が降りてこない。不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、牛のお腹をさすりながら何か話しかけている。その声が聞こえてきた。」「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ・・・」女の子のおじいちゃんが頭をさげた。「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。明日はよろしくてお願いします・・・」坂本さんは、もうできない、この仕事やめようと思った。家にかえってから、そのことを小学生の息子に話した。小学生のしのぶ君じっと聞いていた。一緒にお風呂に入ったとき、父親に言った。「やっぱりお父さんがしてやってよ。心のない人がしたら牛が苦しむけん」

「私達は奪われた命の意味も考えず、毎日肉を食べています。自分で直接手を汚すこともなく、坂本さんのような方々の悲しみも苦しみも知らず、肉を食べています。“いただきます”“ごちそうさま”も言わずにご飯を食べることは許されないことです。」

「ひとさし指が見つけたもの」から。
「“ひとさし指から奏でる しあわせ“(新水社)は、20歳のとき、医療事故でひとさし指以外すべての機能を失ってしまった坂中明子さんと母親のひろ子さんの、壮絶な生きる戦いを描いた作品だ。」「ひとさし指でメールをしているという話を聞いた時、明子さんに”みやざき中央新聞にエッセーを書いてみませんか?あなたの思いをいろんな人に伝えてほしいと誘った。”こんにちは“、わずかこの五文字を打つのに10分くらいかかる。一つの原稿を書くのは体力と精神力の戦いになる。不安の中、彼女は決意してくれた。」
「国立身体障害者リハビリテーションセンターの医師らが全身麻痺の明子さんの体の中で、一つだけ動くところを見つけた。それが左手のひとさし指だった。」ひとさし指のリハビリが始まり、パソコンで自分の思い、自分の気持ち、自分の意志を伝えることができるようになった。」
「この本を読んで障害者の自立についての考え方が180度変わった。障害者は自立できないから支援が必要なのではなく、支援さえあれば自立できるのだということ。それは健常者でも同じだ。みんな誰かにささえられながら自立しているのだから。」

優しさ 愛 心根 の章、「愛されるために生まれてきた」から。
「ミュージカルが始まる前のオープニングで、年齢からして30代、40代の男女が出てきて歌とダンスを披露した。子どもたちによるミュージカルと聞いていたので、最初、“ん?”と思ったのだが、この人たち、とてもいい表情なのだ。激しい動き、それでいて終始、さわやかな笑顔。」「途中からハッと気付いた。“もしかしたらこの人たち、障害のある子供たちの親たちじゃないのかな”って。それから舞台を観る目が変わった。」「彼らはわが子と一緒に舞台にたっていたのだ。」「みんなとても仲がよさそうである。きっと日常生活のなかでも彼らは支えあい、助け合い、励まし合い、そして共に泣き、共に笑ってきたんだろうなぁと思った。」
エンデングでは何人かがマイクをもってこんなメッセージを送っていたという。
「子どもがうまれたという喜びと同時に、お医者さんから、“お子さんには障害があります。一生治りません”、と告知され地獄に落とされました。一緒に死のうと思ったこともありました。」「この子は何のためにうまれてきたの?ってずっと問続けてきました。ある日わかったのです。この子は愛されるために生まれてきたんだって」
「あの子は私をいろんな色に塗ってくれました。そして私はたくさんの優しさと出会いました。ありがとう」
「今あの子の障害は愛に満ち溢れています。今、障害をもっている小さなお子さんを育てている親御さんに言いたいことがあります。障害のある子どもを育てるってまんざらでもないよ」

まんざらでもないよ、と言えるようになるまでに、どれほどの歳月が必要だったかわからないが、「きっと彼女は同じ境遇の親たちと出会い、同じ悩みや悲しみや絶望感をくぐりぬけて、ようやく“共に生きよう”という気持ちになったのだろう。」

「年老いても愛を語りましょう」から。
教師をしている友人が椎間板ヘルニアで入院した。入院してから一ヶ月の間にいろんなことがあった。付き合っている会社員の彼からプロポーズされた。喜んだのもつかの間、その数週間後に彼が突然福岡に移動になった。彼女は病院のベッドに1人残されたという。「数日後、病室が変わった。4人部屋で、ほかの3人はみな70歳を超えている。整形外科なので頭と口は健康だ。彼女たちは1日の大半をおしゃべりについやした。そのおしゃべりは彼女には騒音だった。一人自分の殻に閉じこもって読書したり、泣いたり、彼と携帯電話で話したり・・・。孤独だった。」「同僚の英語の教師がお見舞いに来た。外国人が入ってきたので3人は一斉にこっちを見た。そのうちの1人が“きれいな髪ね”と英語で話し掛けた。」
「亡夫と見た古いアメリカ映画“誰が為に鐘は鳴る”の話を始めた。70歳を超えた老婆が熱く男女の愛を語る姿に感動した。その日からおしゃべりな老婆たちを見る目が変わった。結婚のこと、仕事のこと、病気のこと、3人の先輩に話してみた。“縁は大事にせんといかんよ”“今は男女平等とかいうけど、やっぱり男は立てんといかんよ”“女の幸せなんて単純なところにあるのよね”一つ一つの言葉が重かった。何か目に見えない力でこの病室にきたのではないかと思った。」

「今福岡県の高校で教師をしながら3人の子供の母親をしている。いつかおばあちゃんになったらこのときの愛の話を娘たちにして欲しいなぁと思う。」

志 生きかた の章、「物理的な時間を情緒的な時間に」から。
「カー用品の専門店“イエローハット”の創業者で、“日本を美しくする会”の鍵山秀三郎さんは、新聞・社会面の暗いニュースは読まないそうだ。理由は、“そういう記事を読んでも、それが後々自分の人生に何か参考になるとは思えないから」
「鍵山さんのように“いつも心をきれいに”“いつも身の回りをきれいに”と心がけていないと、ついつい他人の不幸やプライバシーを酒の肴にして会話を弾ませてしまいがちだ。」
「たとえば、朝、新聞を読む時間が20分あるとして、その中で心が温まるような記事を一つでも見つけることができたとしたら、その物理的な時間はその人にとって情緒的な時間になる。“暗いニュースは読まない”という鍵山さんも、たとえ小さくても心が温まる記事に目が止まると、切り抜いて保存しているという。“そういう記事は繰り返し読んでも心にほのぼのとした感動をあたえてくれます”と。」

「改めて、人生に役立つ情報というのは、探そうとする意志がないと出会えないものだと思った。受信機としての機能を持つ私たちの感性も常に磨いておくことが大事だ。」「“身の回りをいつもきれいに・・・”と心掛けていると、1日の多くの時間を心豊かに送れるのかもしれない。」

「屈辱感は自分を強くするツボ」から。
「かって三船プロダクションの宣伝広報部長として俳優・三船敏郎を担当したプロヂューサーの明石渉さんと一緒に飲む機会があった。三船敏郎は付き人を持たず、どこにいくのにも自分で車を運転した。撮影現場には台本を持って行かない。セリフはすべて頭に叩き込んでくる。ハリウッド映画に出たときは、英語のセリフもちゃんと覚えてくる。英語なんてしゃべれないのに。若き日の明石さんにとって三橋敏郎から学んだことはあまりにも大きかった。明石さんの口からよく出てくる言葉がある。“人間を極めろ!”“演技力は人間の魅力に勝てない。”人間を極めろ!“とは”人間としてのプロになれ!“ということだ。役者である前に人間としてどうか。あいさつはきちんとできるか。年上の人を敬っているか。思いやりの心で人と接しているか、人として道理をわきまえているか。”それが人としての基礎だ。基礎とは鉄骨である。鉄骨が入っていないと、いつか映画やテレビの世界から消える“と明石さん。」

明石さんは俳優養成所で俳優の卵に言うそうです。「人間は失敗し、挫折するものだ。時には心底屈辱を味わうことがある。人はそんなとき、“もうやめよう”と思うものだ。いいか、自分を強くするツボを持っておけ。たとえば、過去の屈辱。それを思い出し、“コンチクショウ”という気持ちから一歩前に進めたら必ず成功する」

あとがきである言葉・トルストイの言葉を書かれています。
「どうでもよいこと。不必要なことをやたらにたくさん知るよりも、たとえ少しでも真によいこと、必要なことを知るほうがよい」と。
 参考に「株式会社宮崎中央新聞社 〒880-0911 宮崎県宮崎市田吉6207-3 電話0985-53-2600」です。週一の日本講演新聞も発行してます。」

(文:横須賀 健治)

 

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