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書評 「君は君の道をゆけ」 ワニブックス 齋藤 孝(著),東元 俊哉(イラスト)

by staff on 2021/12/10, 金曜日
 
タイトル 君は君の道をゆけ
単行本 299ページ
出版社 ワニブックス
ISBN-10 4847099141
ISBN-13 978-4847099144
発売日 2020/6/19
購入 君は君の道をゆけ

「どのようにして精神が駱駝になり、駱駝が獅子になり、獅子が小児になったかを述べた。」で始まるプロローグ。いったい何が始まるのかと思った。「駱駝を見ていますと、“重荷を背負って、大変だなぁ”と思いませんか?ですから、義務という重荷を背負って頑張る人間の象徴が、駱駝というわけです。」そして次に「義務や抑圧された現状に、ノーと言って立ち上がる。それが獅子です。」そして次に「これら駱駝、獅子の時期を抜け出した人だけが、初めて、何かに対抗するわけでもなく、自身から湧き出るものを楽しめるようになります。これこそが小児、つまり子どもの時期なのです。」「たとえば、子どもたちは、何もないような場所でも、楽しい遊びを考え出します。」「メジャーリーグの大谷翔平選手などは、たとえケガをして深刻な時期であっても、どこか楽しんでいるような印象を受けます。その姿は軽やかでまるで少年のようです。」義務や抑圧、試練を乗り越え、成長した人だけに、見える景色があります。それらを乗り越えることによってはじめて、人は自信を得て、自己肯定感が高まり、他人にも明るく接することが出来るようになるのです、と言われます。

「最大の敵は、おのれ自身である」の所で「どうせ、そんなことをやっても無駄だよ、などと、思い込んでいることはありませんか?そんな思い込みこそ、要注意です。自身の判断で“これくらいでいいだろう”と考えることは、自分自身を甘やかすことにもなり、せっかく目の前に広がっている未来を、自分自身で消去してしまうことにほかなりません。」「くれぐれも、自分で自分の力に限界をつくらず、言い訳をせず、目の前のことに取り組むようにしましょう。それこそが克己心と言うものです。」そして次のように言われます。「とはいえ、ニーチェの言葉は劇薬ですから、ちょっとずつ、無理のない範囲で取り入れるようにしましょう」と。

「安易な道を選ぶことなかれ」の所で「日本のサッカー選手がせっかく海外のクラブへ移籍するも、活躍できずに帰国することがあります。見ているのと実際にやるのとでは大違いでした、ということで帰って来るわけです。しかし、そのチャレンジは決して失敗ではありません。なぜなら、そこに行かなければ見えない景色であるからです。つまり、チャレンジしたことは、絶対に無駄にはならないのです。」そして次のように語られます。「徒然草に、高名の木登り、という話があります。ある人が高いところに登っているとき、はたから見ればとても危ないように思えますが、そばで見ている木登りの達人は注意しません。その人がある程度の高さまで降りてきたときにはじめて“気を付けて降りてきなさい”と注意するのです。」

「たとえ絶望していても、仕事をこなしてみよ」の所で「楽しくすごすよりも、仕事をする方が退屈しない、とありますが、“本当に?”と疑問に思う方がいるかもしれません。楽しいことでも、しばらくやり続けていると新鮮さがなくなり、必ず飽きてしまうものです。」次のように言われます。「好きだからやる、面白くないからやりたくないではなく、絶望している状態でも仕事をやれ、という言い方も、いかにもニーチェらしいですね。」「仕事というものは、時間の過ごし方として、もやっとした時間を過ごすには打ってつけなのです。働かなくていいというのは、一見、魅力的なようですけれども、一年中バカンスになってしまったら、どんな人でも仕事をしたい!と思うことでしょう。」ですから、好きとか嫌いなどと言わず、どうぞ、目の前にある仕事をまずはこなしてみてください、と言われます。

「不快すらも、よい刺激として生きよ」の所で「行動しなければ何も始まりませんが、行動すればするほど不愉快なことが出てくるというのも、また事実です。」「普通に仕事をしていても、世の中には不快だと思うことがたくさんあります。しかし、その不快こそが“生の刺激”となって、“力への意志”を鍛えてくれます。たとえば、営業で頑張ったことがある人は、クレームや突発的なアクシデントに対して、さほど驚きません。経験を多く積んできたことで、不快を“生の刺激”に変える力がついているからです。」「このことを踏まえ、私は“刺激には、愉快な刺激と不愉快な刺激の二つがあります”というお話をすることがあります。」不愉快な刺激を不快に思うばかりでなく、ぜひ、それを「愉快な刺激」に変えてください、と言われます。

「自分の殻を脱ぎ捨て、脱皮し続けよ」の所で「今ある状態から、常に抜け出していく、脱皮していく必要があるということです。蛇が脱皮すると、抜け殻が残りますね。たとえば、自分が一カ月くらい前に書いた文章を読み直して、“なんだか蛇の抜け殻みたい”と思えるぐらいがちょうどいいのです。」「人間というものは、時が経つにつれ、当然、顔つきや表情も変わっていくものです。しかし、それすら“老けたな”ではなく、”脱皮したんだな“と思うとよいでしょう。”ずいぶん脱皮したなあ“と思えば、感慨もひとしおです。」したがって、抜け出すということがポイントです。いえ、脱ぎ捨てる、といった方がいいかもしれません。仮に「君は、コロコロと意見が変わるね」といわれたら「いや、脱皮しているんですよ」とでも返してください、と言われる。

「すべてを捨て、新しい自分になれ」の所で「このフレーズのあとには、“孤独の者よ、君は創業者の道を行く”という言葉が続きます。つまり、何かを生み出し、創造する人は、今までのことをすべて灰にするほどの気概を持って、新たなものを生み出す覚悟が必要だということです。」「昔と違い、昨今では火を使って燃やすと危ないということで、場所などに制限がありますが、昔は小さなドラム缶のようなもので、要らなくなったものを、一日の終わりに庭で燃やしたものです。一日で発生したごみをその日に処理できるわけですから、あの習慣は、人間の精神安定上、とてもよかったような気がします。」一時期、「断捨離」という言葉が流行しましたが、何かを捨て、デトックスして次のステージに行くということを、人間は本能的に知っているのかもしれません。

「神なき時代に、君はどう生きるか」の所で「ニーチェの言葉のなかでも、群を抜いて有名なフレーズかもしれません。“ツァラトゥストラ”では、この他にも“神は死んだ、お前は知らないのか”“あの人はまだ知らないのか、神は死んだということを”など、“神は死んだ”という表現が繰り返されます。」「一般的に神々は私達人間をはるかに超越した存在として扱われてきました。その神々を敬愛し、恐れおののき、ひれ伏すということは、古来より人間が続けてきた、精神安定のシステムにほかなりません。つまり、神の存在によって、私たち人間は精神の安定を保ってきたわけです。」「常に“自分を乗り越えていかなければいけない!”というのも、疲れてしまいます。ですから、たまには神仏を拝んだり、占いを見てホッとしたりということも必要かもしれません。神仏に“感謝しています”“ありがとうございました”などと言いながら、一方で、自分をのりこえていく・・・。そのようなスタンスで、“神”と上手く付き合っていくといいでしょう。」

「やるしかないという意思が君をすくう」の所で「人間というものは、何かに没頭しているときに、虚無感に襲われることはありません。たとえば、“これを明日までに仕上げなければいけない”と動いているときには、他のことを考える暇もないはず。とにかく“やるしかない”からです。」「一見大変そうに思えるかもしれませんが、この“やるしかない”状況が連続しているとき、人は意外に調子がいいものです。たとえば準備はしっかりできていないけれど、明日にはプレゼンが控えているとなれば、“やるしかない”。このやるしかないという意思こそが、自分を救済してくれるのです。」

「ひた走りに走った者が、幸福をつかむ」の所で「なかなか象徴的で、かっこいいフレーズですね。“疲れきったおまえに、いまようやく、幸福が追いついた”わけです。いったいどのような幸福なのでしょうか。」「一生懸命に仕事している。その時は渦中にあり、本当に大変なわけですから、自分が幸福かどうかなどを考える暇はありません。ところが、どうにか仕事が終わって“ああ、疲れた!”と思った瞬間、ハッと“あの忙しかった時間はなかなか幸福な時間だったんだ”と気が付くものです。つまり。“ああ、しんどい”と言っていた時間こそが幸福であったと、あとから気がつくわけですね。」「ひた走りに走り、疲れきる。これがいいあり方ということです。幸福を求めてあたりを見回し、慎重に“どれがいいか、あれがいいか?”などとうかがっているようでは、幸福もやってきません。そもそも、幸運というものは”求めるもの“ではなく、結果的にやってくるものなのですから。」

「ニーチェも孔子も、この通り、“まずはひた走りに走って、倒れてみろ”と言うわけです。なかなか手厳しい言葉ですが、一つの真理なのかもしれません。」疲れ切るところまで走り切った者にのみ見える世界。それが、つまり、幸福なのです、と言われます。

エピローグで「今の時代にこそ、ニーチェの言葉で自らに火をつけ、炎をかき立ててみてください。あなたが持つ力を、存分に発揮してみてください。もし、一歩も踏み出せない人は、半歩でも構いません。半歩も無理な人は、じりじりとにじり寄るがごとく、とりあえず前へと、進んでいってはいかがでしょうか?」と語られています。

(文:横須賀 健治)

 

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