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ゆるマナー講座(第78回) 他者との関わり方-見えないリュックサック

by staff on 2022/4/10, 日曜日

マナーアドバイザー/フレアLLP 岡田 承子

ヨーロッパの幼児教育に関わる機会に恵まれています。以前触れた「8つの才能」を活かすこともその一つですが、今回は北欧の教育の中で学んだことについてほんの少しだけピックアップして触れてみたいと思います。

「義務教育」と「教育の義務」

日本には、小学校から中学校まで、国や政府、保護者が全ての子どもに受けさせなければならない「義務教育」があります。それは、全国民に共通の一般的・基礎的な、職業的・専門的でない教育のことです。

一方、北欧の国デンマークでは、定められた年齢において教育をする義務が大人にはあります。子どものそれぞれの特性をもとに一人ひとりに合った多様な教育環境を選択し、学びにおいては自由な受講スタイルがあることを前提にした「教育の義務」です。言葉は似ていても本質が全く異なります。

「教育の義務」では、社会の中で生きていくために行われる教育、つまり、自分自身を知り、どのように社会と関わりながら生きていくかということを学ぶのです。国語・算数・理科・社会といった科目に沿った「学力」のほかに、「社会性」という人間関係や心の発達をベースに社会生活を送るために必要な教養力を育てることを大切にしているのです。

見えないリュックサックを見ること

「社会性」を育てるには、社会との関わり、すなわち他者と関わり方を学ぶ必要があります。

当たり前のことだけれど、人は一人ひとり違っています。他者との関わりの中で、それぞれが違っていることは理解していても、私たちはどうしても自分自身の裁量で他の人のことを判断しがちです。

フランスの社会学者ピエール・ブルデューは、人にはそれぞれハビトスがあると提唱しました。ハビトスは、「見えないリュックサック」とも言われます。人の経験や、文化、教育など多種多様な事柄が含まれますが、一見しただけでは他の人にはわからない部分です。

例えば、育った国、地域などが違えば、言葉も食べ物も習慣も考え方も違うかもしれません。各家庭によっても違いがあるでしょう。兄弟姉妹でも一人ひとりのハビトスは異なるはずです。

ですから、他者と関わるときに大切なのは、それぞれが背負っている “見えないけれど違っているだろうリュックサック” を推し量って考えてみることなのです。
まずは自分自身のハビトスは何だろう? それから、関わる相手のハビトスは何だろう? と。それが、お互いを知るうえで大切なことです。特に、意見の相違や相互理解が難しいときは、その原因がハビトスなのかもしれません。そんなときは、相手についてさまざまな情報を得ることも必要になってきます。もちろん、ある情報だけにとらわれて、先入観で判断したりすることはしないようにしないといけないのですが。

子どもたちと関わるときも、それぞれの見えない背中のリュックサックはどんなだろうと推し量りながら、相手を理解しようと努めるとよいですね。
そのように子どもたちと接していれば、子どもたちも知らず知らずのうちに他者との関わりを考え、学んでいくようになるでしょう。

傾聴すること

もう一つ、他者との関わり方の中で学んでおいたほうがよいことに、「傾聴」があります。

人の話に耳を傾ける「傾聴」。
傾聴には、話の内容を理解しようと一生懸命に聴く「内容傾聴」と、相手の感情を汲み取り受容し、相手の気持ちに自分の気持ちを添わせようとする「感情傾聴」があります。
それぞれに大切なことですが、相手の言うことに身を乗り出して、否定せず、相手の気持ちに共感して聴いてくれる「感情傾聴」をしてくださる方がいたら、またその人に話したいなって思いませんか。

人が好感を持ったり信頼をおくのは、話がうまい人よりも、自分の話をよく聴いてくれる人のほうだと言われます。

そういった気持ちは、大人も子どもも同じです。
話を聴くときは、相手の目をしっかり見て、うなずいたり相槌をうったりしながら話をよく聴きます。そして、「それから?」などと話を促して、相手が話しやすいように導くようにします。そうすることで、話している人は聴いてくれる人に信頼感も抱くようになるのです。

「何故この人はこんなことを言うのだろう?」「何故この子はそういう判断をしたのだろう?」などと不思議に思うときは、相手の話に一生懸命耳を傾けながらも、その人の後ろにあるだろう見えないリュックサックについて考えてみるのもよいかもしれませんね。

大人の行動を子どもは真似て覚えますから、大人は意識して振る舞わなければなりません。

違っても同じもの

知識とともに情緒を大切にする北欧の教育。子どもの教育というとどうしても学力に重きを置きがちな日本の教育とは違っていますが、それでも心を育てるという根本の考え方は日本でも大切にしていることなのではないでしょうか。

他者と関わる力は、どのような世界に住もうとも社会生活を行う上で必要となるものです。
子どもたち自身が社会性を身につけるにはどんなことが大事なのかを感じ取るためには、私たち大人の日常的な振る舞いが大きく関わることでもあると、改めて自分自身の行動を見つめ直したいと思っているところです。

 

筆者プロフィール

岡田 承子(おかだ しょうこ)  

岡田 承子(おかだ しょうこ)
マナーアドバイザー/フレアLLP
日本航空国際線客室乗務員を経て、国際交流協会での仕事、また社会福祉法人では障がい者国際スポーツ大会事務局の運営業務やマナー研修に

携わる。現在は、自治体、企業での接遇研修や、NPO法人日本マナー・プロトコール協会認定講師として大学で指導をしている。

柳田 圭恵子(やなぎだ けえこ)  

柳田 圭恵子(やなぎだ けえこ)
マナーアドバイザー/フレアLLP
日本航空株式会社国際客室乗務員を経て、2009年よりマナー講師に。企業や自治体、大学、専門学校で接遇研修や マナー・プロトコール講

座を行っている。NPO法人日本マナー・プロトコール協会認定講師。

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