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風景で読み解く横濱 第一話 時を聞く風景

by staff on 2022/5/10, 火曜日

【風景で読み解く横濱】
戦前に発行された絵葉書、写真、地図から歴史の風景を読み解いていきます。

第一話 時を聞く風景

「伊勢山 時の鐘」が映る絵葉書

この風景は「横濱市街全景(其三)」と題された絵葉書で手彩色のため色合いは正確ではありませんが、当時の様子を確認することができる貴重な資料です。撮影年代は他の風景写真と併せた結果、明治後期頃と推定しました。
中央奥に横浜港が広がり多くの船を確認できます。手前には人家と木造の”鐘楼”らしき建物が建っています。これが「伊勢山時の鐘」または「野毛の鐘」と呼ばれた、時を告げる”鐘撞き堂”です。
この”鐘撞き堂”が設置されたのは明治元年の事で、最初の報時は12月30日午後6時だったと記録されています。公共施設として町が運営し、専任の人によって定時(2時間に一回)に鐘が鳴らされていました。ここで使われたのが和梵鐘で、最初に使われた鐘は音色が良くなく、最終的には武相国境の境木地蔵尊のものが使われ、関東大震災で崩壊するまで時を告げました。
時刻に応じて時の鐘が鳴らされる制度は古くから行われていましたが、横浜は外国人居留地ができ貿易の中心地となり、最初の鉄道や郵便制度運営のために「西洋時刻」がいち早く取り入れられることになったことも報時促進となったのでしょう。
さらに横浜には山手を中心に教会も多く鐘(bell)も定時に鳴っていた中でゴーンと和梵鐘の音には外国人も驚いたことでしょう。
実際、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が横浜で一時期過ごしたエッセイの中にNOGIYAMA(野毛山)の鐘の音に驚いたというシーンが描かれています。

Glimpses of Unfamiliar Japan 「邦訳:知られぬ日本の面影」
And suddenly a sound-solemn, profound, mighty-peals to my ears over the roofs of the town, the voice of the tsurigane, the great temple-bell of Nogiyama.

また、横浜を支えた“お茶工場”で働く女性たちの哀歌として
「野毛山の鐘がゴンと鳴りゃ、港が白む、早く行かなきゃ、カマがない慈悲じゃ情じゃ開けておくれよ火番さん」
と歌われました。朝一番の鐘が仕事を得る時限だったのでしょう。
佐佐木信綱編『和歌名所めぐり』には
「秋近し野毛山の鐘夜を呼びて港の町はいま燈ひともりぬ」野村富貴子
という句も収録されているように、野毛の時鐘は55年もの間、横浜生活の重要な存在だったことがわかります。

 

 もう一つの報時鐘

横濱開港五十年祭祝典 本町一丁目ノ装飾 辨慶ノ釣鐘ト提灯

もう一枚時を聞く風景を紹介します。
1909年(明治42年)開催の開港50年祭を記念して発行された絵葉書で、本町通りの展示物を紹介したものです。ここに写っている和梵鐘はアメリカ人建築家ブリジェンスが設計した「町会所」に設置されていた<時の鐘>です。
「町会所」は近所からのもらい火によって焼失してしまいましたが、運良くその前に取り外され保管されていました。この鐘を開港祭の本町通り展示作品に使われたと思われます。
なぜ、展示モチーフが近江三井寺に伝わる「辨慶の引き摺り鐘」となったのかは定かではありませんが、当時の人の深い思いがこめられていそうです。
この鐘はその後新しく建てられた「開港記念横濱会館(後の横浜開港記念会館)」に設置され、関東大震災もくぐり抜けましたが昭和初期発行の観光案内書に紹介された以降の情報が不明です。恐らく戦時金属供出されたのではないでしょうか。

野毛山ヨリ見タル橫濱全景の一部で開港50年紀年スタンプ

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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