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風景で読み解く横濱 (第二話)時を観る風景

by staff on 2022/6/10, 金曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第二話 時を観る風景

本町通りに建つ横濱町会所(早稲田大学図書館蔵)歌川國鶴 画

前回「時を聞く風景」で紹介した本町通りの町会所は「時計台」としても有名で当時のランドマークでした。
明治初期の1874年(明治7年)に竣工し、石造亜鉛葺二階建て、一部4階建て延床765㎡の当時としては壮大な洋館です。ここには行政府の役割に加え歩合金徴収所や貿易商組合事務所などが入っていました。
この町会所の4階には文明開化を象徴する巨大な「時計台」と「時鐘」が鐘塔(しょうとう)に設置されていました。人々は時を聞くとともに見ることもできたのです。
鐘塔は洋風のドーム風の設計で、時計の機械は幕末から横浜に拠点を置いたスイスのファーブルブラント商館(C.&J.FAVRE BRANDT)が輸入し創始者のジェームス・ファーブルブラント自らが塔屋に登って取り付けを指揮したというエピソードが残っています。
このように時を見る装置「時計台」は明治以降急速に普及し全国各地の要所に建てられました。広範囲に時を知らせることができる<報時鐘>と比べ「時計台」はそこにいる人にしか伝えることができませんが、正確な時間を伝えることができるため、目抜き通りや駅などの施設に設置されました。
横浜では明治初期からいち早く時計台が複数設置され、人々に時を知らせました。

弁天通り河北時計店

本町通りには「町会所」に加え「横濱郵便局」に時計台を設置、外国人で賑わった弁天通りには1894年(明治27年)開業の「河北時計店時計台」、短期間ですが高島にあった「岩亀楼遊郭」にも明治6年初期に時計台を設置し時を知らせました。
この「時計台」、公共の時計(公衆時計)は現在も交通機関以外に床屋、公園、学校等に残っていますが全体的には急速に減っています。

 

 報時球

もう一つ横浜ならではの“観る時間”を紹介しましょう。
横浜港、海岸通りにあった「報時球(time ball)」です。
「報時球」多くの方が初めて聞く名前ではないでしょうか。
時を報じる<球>とは不思議な感じがします。

横濱海岸

写真に写っている報時球は現在のホテル・ニューグランド前にある沈床公園あたり、仏蘭西波止場(東波止場)と呼ばれていた頃に桟橋のたもとに建っていました。
この報時球は世界の国際港に設置されていました。Time ballと呼ばれたこの仕組は19世紀末から20世紀前半、世界の港に約140ヶ所(1904年時点)設置されましたが、無線の普及につれてその役割を失い消えていきました。
日本での設置は1903年(明治36年)3月に横浜と神戸に初めて開設され、その後門司・長崎・大阪・佐世保・呉と計6ヶ所設置されました。
どのように使われたのか紹介しましょう。仕組みは簡単で、<球>が高所からトンと落ちるタイミングで時間を合わせる装置です。
港や国によって報時時間が決まっていて日本の場合「中央標準時の正午時」でした。タイミングは東京からの電信信号によって操作され、球が5分前になると頂点に移動し時間になると落下することで時を知らせました。
港内に停泊している船舶はこの報時球を船から望遠鏡等で確認し船内の時計修正用に利用したそうです。
当時の報時球規定には
「正午時約五分前即ち午前十一時五十五分より上部横木下まで引揚げ正午時に於て東京天文台より電気作用を以てこれを墜下せしめ其墜下し始むる瞬時を以て正午時とし若し過誤ありたるとき又は故障の為め該信号を為し能わざるときは球檣下桁端に万国船舶信号W旗を掲げて不正確の信号とせり。(神奈川県港務要覧1910年(明治43年))」
のんびりした港の光景を想像することができます。
この「報時球」が港の風景に写り込んでいる風景を幾つか紹介しこの回を終わります。

横濱海岸雪の景

横濱海岸通りオリエンタルホテル

次回は 見上げる風景 紹介します。

(第二回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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