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風景で読み解く横濱 (第三話)見上げる風景

by staff on 2022/7/10, 日曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第三話 見上げる風景

 

 谷戸の横浜

東海道に鉄道の無い頃、旅人は鶴見川を越えるあたりから付近に見える山が気になり神奈川宿に近づくとこの先に坂道が連続する覚悟をしたそうです。
歌川 広重の「東海道五十三次」も神奈川宿あたりから近くに山が描かれています。
横浜市域は谷戸が川筋に沿って襞のように幾重にも重なっているのでどこ行っても、坂のない場所を探すのが大変です。
開港の舞台となった「関内外」エリアを俯瞰してみると南北に小高い丘陵が大岡川下流を挟み込むように横たわっていることがわかります。
北が戸部丘陵、南は山手の丘が連なり、そこには名前のついた坂が多くあります。このあたりの震災以前の絵葉書から「見上げる風景」を2点紹介しましょう。

 

 百段階段(坂)

冒頭の絵葉書はかつて「百段階段」「百段坂」と呼ばれた風景です。元町の真ん中辺りから丘の上へ一本の真っ直ぐな階段が作られていた時期があり観光名所でもありました。百段とありますが、実際は101段ありました。キリ良く百としたのでしょう。
階段の上には古くから<祠>があり、信仰の場所でもありましたが、高低差約25mの崖に直線的な石段を設けた理由は何だったのでしょうか? この絵葉書を見るたびに考えます。
一般的に絵葉書では頂から見下ろす風景が主流ですがここ「百段」に関しては、前田橋あたりから”見上げる”風景が何種類も発行されています。珍しかっただけでは無いと私は感じます。
元々暮らしていた土地に開港場ができ、半ば強制的に移住した横浜村の刻一刻と変化していく姿を、横浜村の元村民が記憶にとどめようと多くの人々が百段を踏みしめたに違いありません。かつての「元橫濱村」を眺めることができたこの場所は村民の記憶資産だったと思います。
この「階段」開港後まもなく地元の篤志家の尽力で普請されましたが、背景には村民の強い願いがこめられていたのではないでしょうか。階段は関東大震災で崩壊し再建されることはありませんでした。記憶も遠のき、最近まで忘れ去られた存在となっていましたが近年、茶屋があった付近に記憶をたどることができる場所として「元町百段公園」が整備されました。季節の花も咲き、見下ろす風景も堪能できます。ぜひ訪れてみてください。

 

 横濱地蔵坂

次に紹介する風景は、山手の丘と開港場を結ぶ重要な坂の一つだった「地蔵坂」です。

地蔵坂下は中村川に架かる亀ノ橋で、約420mの曲坂を登り切ると地蔵坂上、山手桜道に出ます。江戸期から石川村と本牧根岸村を繋ぐ交通の要衝でしたが同時に急坂難所としても有名で人力車・荷車の時代になると、車夫がフーフー言いながら必死に登る姿も名物だったそうです。
明治2年、地蔵坂下に一軒の呉服店が開業します。鶴屋の号で一躍人気店となり、その後伊勢佐木に進出、東京「松屋」を傘下に置き「銀座MATSUYA」として現在も老舗百貨店として人気です。
地蔵坂鶴屋開業後、店前の中村川に「亀ノ橋」が架橋。鶴屋さんが要望して<亀>の名がついたという話もあります。
震災後に軌道鉄道を通すため車橋から登る坂道が切り開かれ打越橋が架けられる事で、地蔵坂の交通量は減り近隣の人たちが利用する坂となりました。
「地蔵坂」「濡れ地蔵」その名の由来はぜひ一度橋の袂でお確かめ下さい。

 

(第三回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
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横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
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