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風景で読み解く横濱 (第四話)手彩色絵葉書の風景

by staff on 2022/8/10, 水曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第四話 手彩色絵葉書の風景

 

 手彩色

戦前絵葉書の風景を通して横浜の風景を紹介してきました。今回は絵葉書そのものに関して少しご紹介したいと思います。これまで紹介してきた絵葉書は手彩色です。大正初期まで、絵葉書の多くが手彩色でした。
手彩色絵葉書の工房は、マニュファクチュア(工場制手工業)生産で、彩色は女性の職工が分担し、モノクロ印刷の原版を流れ作業によって着色していました。
特に横浜では国際港であったこともあり、この手彩色絵葉書が多く制作されたようです。
日本では江戸期からカラー印刷、版画による繊細な多色刷り技法が伝わっていたので、絵葉書も背景色に版木が使われ空や遠景のグラデーションは刷りを使いましたが、細かい彩色は人手をかけて塗られました。
中には結構テキトウな着色もありますが、…。

手彩色絵葉書は日本が近代化を進める中で誕生した明治期の傑作です。年間数億枚流通した時期もありました。この絵葉書は万国郵便制度の中の葉書(はがき)が進化したもので、1868年(明治元年)にオーストリアで発行されて以来、あっという間に世界各地に広がった規格です。1874年(明治7年)万国郵便条約によって「万国郵便連合」が設立され日本は1877年(明治10年)に加盟しましたので欧米との時間差は殆どなく葉書を使い始めました。

葉書というフォーマットは不思議な規則の産物で、現在も殆ど変わらず国際標準のもとで運用されています。
言われてみるとなるほど!葉書の不思議紹介しましょう。
面にも決まりがあり宛名面が<表>です。
絵柄やメッセージを書く面が<裏面>になります。
気にするほどのことではありませんが、規則に明記されています。なぜなら、郵便配達の基本は私信を勝手に読んではいけないのですが、配達のために<表は読んで>も良いことになっているからです。

元々<裏面>は文を書くことが目的でした。
この裏面を絵柄にすることで、送る楽しみ、文を書かなくても情報量が一気に増え市民の手軽な情報ツールとなりました。現在減少傾向にある「年賀状」も、この絵葉書の歴史と共に歩んできました。年末一定期間に投函して正月に一斉に配達するようになったのは年末利用者が急増したために苦肉の策で誕生した制度です。

詳細はこの辺にして、大正期まで多量に発行された手彩色絵葉書の中から横浜風景を幾つか紹介します。

海岸通りの風景です。震災前、山下公園が造成される前です。
海岸通りの絵葉書は数多く人気スポット、まさに絵になる風景だったので、構図にも多数使われています。
改めてこの絵葉書、人物がポーズをとっているように見えませんか?
二枚は水平線の色合いが全く異なります。原版から二種類つくるつもりだったのか、工房の色指定が異なったのか判りません。同じ写真を異なる工房が原版として使っているケースもあります。

次に、手彩色とは直接関係ありませんが、時折発見することができる逆版刷りです。
<資料>として使用する際には先ず確認しなければならない項目の一つです。文字でも写り込んでいない限り、逆版を見抜くのは中々難しいことです。
特に左右対称の建物ともなると、これが逆版だとは製作者も気づかないまま発行したのではないでしょうか。

最後に
横浜の手彩色絵葉書風景としては珍しい方に入る”冬景色”とかなり力の入った一枚を紹介しましょう





アクセントに赤を入れたのか、南天の木のように赤みがあったのか定かではありませんが、明らかに赤色をちょい塗りしているのが判ります。
たしかにこの赤で 冬景色が際立ちますね。
工房には絵心も必要だったようです。
最後の一枚は、明治41年米国(白船)艦隊歓迎一色の伊勢佐木通りです。

※ここに紹介した絵葉書は個人蔵のものです。
転用等はご遠慮ください。

 

(第四回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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