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絵本から笑本へ(第71回) 絵本作家のしゃべりたい絵本。
~絵本作家になりたいなら絶対に読んでおくべき絵本3冊~

by staff on 2022/10/10, 月曜日

絵本作家 保科琢音の連載コラム「絵本から笑本へ」

おかげさまでこのコラムも六年半が過ぎ、今回から第5期の連載となりました。
第5期では「絵本作家のしゃべりたい絵本。」というテーマで
絵本作家らしく絵本についておしゃべりしていきます。

ぼくは、公共図書館に約十年間勤めていました。
絵本作家になる前にまずは絵本を読むことを仕事にしようと考えたんです。

だから絵本作家 保科琢音は
絵本作家になる前に日本一絵本を読んできた絵本作家だということになります。

そんな、絵本にも絵本作家にも詳しい絵本作家 保科琢音の
新しい絵本の楽しみ方、絵本の読み方をご紹介していきます。

第5期初回のテーマは…
「絵本作家になりたいなら読んでおくべき絵本3冊」

絵本をつくりたい人、絵本作家になりたい人はたくさんいるけれど、
実はほとんどの人が絵本をそれほど読んでいない。知らない。

絵本について知らないのに絵本なんてつくれる訳がない。
絵本作家になれる訳がない。そう思いませんか?

という訳で、絵本をつくりたいなら、絵本作家になりたいなら、
「まずはこの絵本を読んでおくと良いよ」って絵本を3冊ご紹介します。

1冊目「もこ もこもこ」

作・たにかわ しゅんたろう
絵・もとなが さだまさ
文研出版・1977年

いわずと知れた大ベストセラー絵本。出版されたのは五十年近くも前なのに
いまだに売れ続けている絵本です。

今も現役バリバリの詩人・谷川俊太郎さん(90歳)のつくる擬音の世界に、
前衛的な美術家としても知られた元永定正さん(享年88歳)が絵を描き出来上がった
どこか不思議な絵本。
そんな不思議で意味の分からない絵本に
子ども達は声を出して笑います。
そして、大人はその不思議に意味を探しながら読み進めます。
世代を越え、時代を越え、子どもから大人まで様々な楽しみ方を教えてくれる絵本。

この絵本の凄いところは、
「絵だけで成立していない」・「文章だけで成立していない」ところ。
絵本は絵だけでもダメだし、文章だけでもダメ。
絵と文章が合わさって初めて絵本になる。
そんな絵本にとっての当たり前をバシッと提示し、教えてくれるのが
この「もこ もこもこ」だと思います。

2冊目「100万回生きたねこ」

作・佐野 洋子
講談社・1977年

こちらもいまだ売れ続けている大ベストセラー絵本。
この絵本を読んで絵本好きになった人も多いんじゃないでしょうか。
作者の佐野洋子さん(享年72最後)はエッセイストとしても活躍された方。
絵本を原作に舞台化や映像化もされています。

この絵本の凄いところは勿論、「物語の素晴らしさ」です。
五十年近く前につくられたお話なのに、
今の時代に生きる人たちにも感動を与えてくれる。
そんな物語をつくることは簡単なことじゃありません。

どうしてそんなに長い間読み継がれるお話がつくれるのか?

これはぼくなりの解釈ですが、
作者の佐野洋子さんは多くの作品で「生と死」をテーマにしています。
幼少期の家族との別れや、ご自身の病気。
そんな中で生まれた生と死に対しての価値観や概念を、
この「100万回生きたねこ」でも表現しているんじゃないでしょうか。
だからこそ、子どもの頃と大人になってからとでこの絵本は見え方が変わってくる。
だからこそ、長く読み継がれる絵本になっているんだと思います。

3冊目「やさしいライオン」

作・やなせ たかし
フレーベル館・1975年

アンパンマンの作者としても知られるやなせたかしさん(享年94歳)第一作目となる絵本。
もともとはラジオドラマのお話としてつくられ、放送後に絵本として出版されました。
改訂版が1975年に刊行される前には、
あの手塚治虫さん製作で短編映画としても公開されています。

やなせたかしさんと手塚治虫さんは
「漫画家の絵本の会」というグループでも活動されていました。

いまでこそ絵本を原作にしたメディア展開は当たり前になっていますが、
この「やさしいライオン」はそんな絵本原作におけるメディア展開の
先駆け的な絵本だったとぼくは考えています。

絵本作家は絵本をつくって終わりではない。
絵本作家は絵本をつくり、届けるまでが仕事なんだ。
そんなことをこの絵本は、そしてやなせたかしは生涯をかけて伝えてくれていました。
この「やさしいライオン」という絵本があったからこそ、
あの国民的ヒーロー「アンパンマン」は生まれたんだと思います。

さて、いかがだったでしょうか?

第5期の連載はこんな感じで絵本について好き勝手おしゃべりしていきます。

今回の絵本をご紹介しながら思った事は…
1970年代には既に絵本のひとつの完成形は出版しつくされているんじゃないか?
という事です。

先人たちが築き上げてきた絵本に見習うことで、
先人たちが考えもつかなかったような絵本を、
これからたくさんのひとが創造していくんだと思います。

絵本は自由なのだから!

YouTubeとの連動コラム

第5期「絵本作家がしゃべりたい絵本。」は、
絵本作家 保科琢音のYouTubeチャンネル『笑える絵本ダナ』と
連動していくカタチになっています。

今回のテーマ「絵本作家になりたいなら読んでおくべき絵本3冊」も
既に、同じテーマで動画公開しています。

コラムでは書ききれない部分を動画で。
動画でしゃべりきれない部分をコラムで。

コラムとYouTubeの新しい試みを是非、楽しんでもらえると嬉しいです。

絵本作家 保科琢音チャンネル『笑える絵本ダナ』
絵本作家になりたいなら絶対に読んでおくべき【絵本3冊】

絵本作家 保科琢音 チャンネル『笑える絵本ダナ』

https://www.youtube.com/channel/……

<ラフコネクトホームページ>

https://www.laughcnt.com/

<ラフコネクトYouTubeチャンネル>

https://www.youtube.com/channel/…

(文・イラスト:保科琢音

筆者紹介

【保科琢音】
1983年生まれ。br />
神奈川県横浜市在住br />
2013年 絵本「あっかんべー」出版br />
2019年 絵本「ままも」出版br />
2019年 ベトナムにて絵本「ままも」・「よぞらのおくち」同時出版br />
2020年 絵本「ちーちゃんのおなかのあな」出版br />
2020年 ベトナムにて絵本「ねてばかりいるカバ」出版br />
2022年 絵本「よぞらのおくち」・「たまちゃん」同時出版
 
公立図書館に10年間勤めた後、絵本作家・紙芝居作家として本格的に活動を始める。 絵本や紙芝居の創作だけでなく「読絵ん会(どくえんかい)」という名の読み笑わせ口演を精力的に行っている。 幼稚園、保育園、小学校、図書館、美術館、科学館、寺院、子ども病院、療育施設、障害者施設等… 口演場所はこれまでに600カ所以上。 他にも、子育て支援施設業務委託。障害児施設美術プログラム講師。コラム執筆等。 活動は多岐に渡る。また、絵書家筆之輔(えかきやふでのすけ)の芸名で落語家としても活動。
 
2021年 出版社「ラフコネクト」設立 取締役社長に就任

ヨコハマNOW取材記事
「僕にとっての横浜は「未来へ笑がおをつなぐ街」。絵本作家の保科琢音さん」
https://yokohama-now.jp/home/?p=13904

『読絵ん会(どくえんかい)』の様子を動画でご覧下さい。

 

 

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