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風景で読み解く横濱 (第六話)鉄道150年

by staff on 2022/10/10, 月曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第六話 鉄道150年

2022(令和4)年は、鉄道開業150年、一世紀半を迎えました。全国で記念品や記念イベントが開催されています。
今年は「新橋と横浜の間を結ぶ鉄道が開業してから150周年の節目の年」ということで、10月14日を鉄道記念日としています。
ちょっと屁理屈を申し上げると、日本初の鉄道は10月から遡ること四ヶ月前の1872(明治5)年6月12日(旧暦5月7日)に「横濱~品川間」で(仮)開業、試験運転などではなく営業運転を行いました。
しかし、正式には「横濱」と少し延伸した「新橋」の両停車場で10月14日に開業式が挙行されこの日を記念日とした訳です。初めてにこだわるなら、6月12日が鉄道開通記念日なのです。
屁理屈はさておき、日本初の「横濱駅」には移転という歴史が刻まれています。現在の横浜は三代目、1928(昭和3)年に開業しました。
初代から二代、三代目の姿を戦前の絵葉書や写真画像から辿ってみましょう。

 

 初代横浜駅

明治維新からたった5年で近代技術の象徴的存在の鉄道が開業しました。
上記の風景は、周辺の風景から明治期の初代横浜駅の写真です。もちろん手彩色で、大岡川右岸から見た初代横浜駅が確認できます。左手には1870(明治3)年架橋の木製大江橋が見えます。手前の船頭と平船が印象的です。
ちょっと素人時代考証してみましょう。
左岸の存在感のある建造物に着目しました。これはおそらく明治12年初夏に整備された「公衆便所」と思われます。当時の実業家浅野総一郎が近代公衆便所を整備した記録が確認できます。残されている設計図から横浜駅前公衆トイレだと推察しました。
写真には電信柱が確認できますが、電信で電力ではないので電力供給が始まった1890(明治23)年以前の風景ではないでしょうか。

この風景は、最初の風景と大江橋を挟んで別方向から撮影された写真です。すでに電信柱、電力柱が駅周辺に張り巡らされているので、時期は明治30年代以降ではないでしょうか。
大岡川岸には柳でしょうか桜ではないのが印象的です。

 

 二代目の悲劇

初めての鉄道事業は現在の桜木町駅と新橋駅間でしたが、その後全国で鉄道網が整備されるようになり、新橋(汐留)から東海道線が西へと延びていく中で、初代横浜駅を経由するには一度スイッチバックしなければならず、横浜駅移動計画が持ち上がります。
東海道線は1887(明治20)年に国府津駅まで開通し、次第に利用客も増加、1889(明治22)年に新橋駅と神戸駅間が全通します。
1914(大正3)年12月20日に東海道線は新橋駅から東京駅に延伸し東京・大阪・神戸を繋ぐ基幹路線となります。利用度が高まるほど横浜駅(現桜木町駅)の位置がネックとなっていました。
ついに
1915(大正4)年8月15日に二代目横浜駅が移動し開業します。
初代駅は桜木町駅となり、現在のように磯子方面への延伸計画が実現するのは半世紀後の1964(昭和39)年となってしまいます。
二代目横浜駅の絵葉書を紹介します。かなりリキの入った設計で、東京駅に準ずる豪華な外観を誇ります。現在の西区高島二丁目に位置し、路線は石崎川に添って保土ケ谷に繋がっていました。

モノクロですが、駅前の賑わいの様子がわかります。

1923年(大正12年)の関東大震災で二代目は倒壊し廃止を余儀なくされます。被災後の倒壊横浜駅の様子です。

 

 三代目

復興事業の一つとして再建が始まりますが、東海道線がさらに直線化し、1928(昭和3)年に現在の路線と位置に落ち着きます。
開業当時、表玄関は東口で西口界隈は荒れ地でしたが、戦後西口が開発され東西競いながら日本最大級のターミナルとなっています。

大岡川河口に初代(桜木町駅)、石崎川河口に二代目(焼失)、帷子川河口に三代目(現駅)と、これだけ移動したことは大変珍しいことです。

※ここに紹介した絵葉書は個人蔵のものです。
 転用等はご遠慮ください。

 

(第六回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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