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風景で読み解く横濱 (第八話)子守・洋傘の風景

by staff on 2022/12/10, 土曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第八話 子守・洋傘の風景

 

 子守の風景

絵葉書に映し出されている公園の風景です。
ここに集う人々の中に<子守する子供>の姿を確認することができます。場所は横浜ですが、<子守する子供>の風景はここ横浜に限ったことではなく、同時代の絵葉書全般に多く映し出されています。
現代なら肖像権やプライバシーの関係で映し出されることは稀で、戦前絵葉書風景の特徴の一つは人物がしっかり写り込んでいることです。
絵葉書に登場する子守の多くは少女ですが、時々少年も確認することができます。
<おきまりのように>公園や寺社の風景には<子守する子供>を確認することができるのです。

子供の子守の歴史を少し紐解いてみました。
子守の労働歌「竹田の子守唄」に表現されているように、子供が仕事として<子守>したのは江戸期からの習慣だったようです。
明治・大正期の統計資料にも小児労働の実態が記録されています。大正9年の国勢調査によればたとえば12歳から14歳までの年齢層で男女の有業率(職についている率)はそれぞれ30.6%28.8%に達していました。
ここに示す数字が全て子守人口を表す訳ではありませんが、「学校から帰ると尋常1,2年の間は子守て゛す。下の子か゛子守のて゛きる年頃になると,上の子は,おコシ゛ョ(おやつ)の芋た゛んこ゛を作ったり,山へ行ってる親たちか゛帰るまて゛に夕飯の用意をしたりしたもんて゛す。
(山川菊栄:女性史研究家、作家)」
と記述されているように家事手伝いとして子守が日常だったことが浮かび上がってきます。
「1920年の第1回国勢調査において12~14歳の有業率か゛約3割(男30.6%,女28.8%)に上ることを確認し,多くの子と゛もか゛働いていたにもかかわらす゛,それか゛大きな社会問題とはならなかったことを日本の特徴(荻山正浩)」と指摘しているレポートもあります。
改めて手元の絵葉書を見直すと、<子守>の風景が鮮明に浮かび上がってきます。
神社・公園は安全な子守場所だったと想像できます。

 

 洋傘の風景

もう一つの絵葉書風景の特徴を簡単に紹介しておきましょう。洋傘の風景です。
現在も明治時代の名残がことばとして残っています。
洋食、洋服、洋裁、洋傘、洋館といったワード使っていませんか?
これらの<洋>付きワードで消えつつあるのが<洋傘>です。対応する<和傘>が死語になってしまった現在、傘=洋傘を示しています。洋食や洋服はまだまだ現役ですね。
この<洋傘>戦前絵葉書に都市の風景の一部としてしっかり写し出されています。

洋傘は戦後早々まで<質草>にもなった高額商品でしたが和傘に対して実用性に優れていたので広く普及しました。戦前の繁華街絵葉書には構図や素材を若干作り込んだ<作品>もありましたので華やかさを引き出すために<傘さす婦人>を敢えて選んだ可能性も高く、果たして洋傘の風景は絵葉書レベルのように日常だったのかは分かりません。

絵葉書は大正期後半まで多くが手彩色であったこともあり、傘の色合いが実際どうだったかは不明です。
手彩色のように通りに艶やかな彩りをもたらしたことは間違いないでしょう。

※ここに紹介した絵葉書は個人蔵を使用したものです。(一部加工)
 転用等はご遠慮ください。

 

(第八回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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