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風景で読み解く横濱 (第十二話)占領という風景

by staff on 2023/4/10, 月曜日

「風景で読み解く横濱」
戦前に発行された絵葉書、写真、地図等から横浜の風景を読み解いていきます。

第十二話 占領という風景

 

 Rename

横浜の戦後は、昭和20年8月末、連合国軍の進駐・占領によって始まりました。
昭和27年4月28日にサンフランシスコ平和条約が発効するまでの7年間、横浜市の中心市街地の大半が占領され、その後も横浜は日米安保条約の下で多くの接収地が残ることになりました。都市部の大半を接収されほぼ機能停止となったのは唯一横浜でした。※沖縄を除いて

この地図は昭和24年に外国人向けに発行されたものです。偶然入手するまで、占領中の主要道路名がリネームされていたことを知りませんでした。他国の土地を勝手に名付けるのは本牧先をミシシッピーベイと呼んだ<ペリー>に始まる欧米各国の植民地主義の現れですね。
南北に走る道はAVE.(avenue)A、B、Cとし
東西に走る道はST.(street)1th、2nd、3rdとなっています。
このルールは占領中、他の都市でも実施されていましたが、接収面積の大きかった横浜が最も占領軍に利用されたのではないでしょうか。

関内エリアの詳細地図にも
海岸通りはAVE.A、本町通りはAVE.B、吉田町がAVE.E、長者町通りはAVE.Gとなっています。
国道16号線は4th ST.
馬車道から伊勢佐木町通りに続く道は5th ST.となっています。
ここには表記されていませんが、改めて占領時代の資料を調べてみると、中華街長安通りが「KENTUCKY AVE.」 水町通りは「ALABAMA AVE.」という名前が付いていました。
悔しいですが 実用的でわかりやすいです。日本の道路番号はわかりにくいです。

この通り名は地図上だけではありません。当然ですが実際に標識が建てられました。県庁前を当時撮影した風景はまるで米国のどこかの町のように思えるような景色です。
判読しにくいですが「AVE.A 2nd ST.」と表示された標識が建っているのがわかります。横には占領軍の各施設案内標識が建っているのが確認できます。
標識のYOKはYOKOHAMAの略です。

 

 Airstrike

横浜は数十回にも及ぶ空襲によって各地が焦土化し終戦を迎えます。中でも1945年(昭和20年)5月29日午前に行われた「横浜大空襲」は熾烈な集中爆撃によって、旧市域の市街地が壊滅します。
空飛ぶ超要塞とも呼ばれたボーイング戦略爆撃機B29が500機で無差別焼夷弾爆撃を行い、ノースアメリカン製で「第二次世界大戦中後期の最優秀戦闘機」と評されたP51は100機来襲し銃爆撃を行いました。この爆撃による焼夷弾投下総量は2,570トンにも及びました。

現在の埋地7ケ町一帯の空襲による被害は大きく、その殆どが空襲により失われてしまいました。

現在の福富町一帯には、焦土化した土地を整地するとそこにカマボコ兵舎が次々と建てられていきました。

現在の若葉町周辺は、更地になり急遽軽飛行機発着場が造られました。伊勢佐木裏に戦後飛行場があったことは意外に知られていません。

 

 Occupy

一方焼失を免れた建物の多くが占領軍によって接収、利用されることになります。

現在「YCCヨコハマ創造都市センター」が管理しています。元々馬車道通り寄りにあった第一銀行横浜支店ビル(その後横浜銀行)を<曳家>により移動・復元したものです。
写真の風景は移動前の風景で、米軍の娯楽施設として接収され「CABARET GRAND CHERRY」だった時の写真です。

現在は伊勢佐木ドン・キホーテのビルです。戦前・戦後はオデヲン座として伊勢佐木のランドマークとなる映画館でしたが、一時期米軍専用施設であった時の風景です。
戦後すぐに横浜税関に司令部を置いた陸軍第八軍のマークが最上部に掲げられているのが象徴的です。

※ここに紹介した絵葉書・地図は個人蔵を使用したものです。(一部加工) 転用等はご遠慮ください。

 

(第十二回了)

 

河北直治さん プロフィール

風景で読み解く横濱 河北直治さん   西区在住。
自称 横濱界隈研究家。
市内をとにかく徘徊するのが好きで、市境を川崎市から横須賀市まで三回踏破。
市内全駅に降り立ちぶらり探索。バスで18区を一筆踏破など。
 
父の認知症介護をキッカケに父の専門分野だった幕末・近代史を<イヤイヤ>始め、歴史のドツボにはまり目下横浜を軸に歴史研究に没頭。大岡川運河史にテーマを絞り、「大岡川運河ハンドブック」決定版をまとめ中。
 
「よこはま路上観察学会」世話人として観察会を開催し、今年で70回を越え100回をめざす。
季刊横濱「大岡川」特集で運河史を恩師斎藤司先生の下で執筆。
時々テレビにも登場。
運河やまち歩きガイドも楽しみの一つ。

 

 

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