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匣SAYAから発信・やきものの話 ~桃山陶~

by staff on 2010/12/10, 金曜日

「匣」ってなあに?

「匣」、又は「匣鉢」と書いて、焼物業界では「さや」と読んで、やきものを焼成する時に使用するある道具を指します。「匣」は通常辞書などでは、「こう」とか「はこ」という読みがなでしか出てきませんので、「さや」という読みかなは、この焼物の世界だけの当て字という事になります。

どんな道具かといいますと、陶磁器を保護する箱のようなものです。やきものには灰が被って景色(模様)を作るのを珍重したり、炎の痕跡が残っているのを愛でたりすることも多いですが、逆に、白磁や量産のものなどでは、変化のない仕上がりをさせたいという場合もありますね。仕上がりに炎や灰の影響を与えたくない場合に、匣(さや)を使います。匣を使うことにより、より完成度の高い計画通りの焼物ができ、匣を何重にも重ねて焼けば、効率よく数量も多く焼ける訳です。そんな便利な道具「匣」は箱のような機能を有していて、上下の蓋を合わせてその中に焼物を入れて窯の中で焼きます。

 
画像をクリックして拡大写真をご覧ください。
 

横浜・東神奈川で私の営む陶磁器のお店の名前が「匣」といいます。匣という箱の中から、これからやきものやくらしを豊かにする情報についていろいろなものを発信していければと思っております。今回はやきものの話の初回という事で、うるわしの「桃山陶」について考えてみたいと思います。つたない文章で個人的な意見に偏った部分もあろうかと思いますが、最後までお付き合い頂けましたら幸いです。

「桃山陶」について

「桃山陶」とは、まず、日本が胸をはって世界に誇れる文化だという事を知っていただけたらと思います。この「桃山陶」を知れば、貴方もちょっとした焼き物通になれます。「桃山陶」は現代日本の陶芸の全ての基礎になっていると言っても過言ではありません。日本の焼き物を知るには、「桃山陶」を知るのが一番近道かと思います。では、「桃山陶」という概要から入っていきましょう。

日本にあった弥生、縄文と生活に根ざした焼き物が中国からの輸入の陶磁や六古窯などの窯の焼き物に変化したあと、さらに、お茶の文化が僧侶によりもたらされたことにより新しい変化が生じました。17世紀桃山時代に茶陶というお茶と結びついた陶磁器制作が始って日本独自の焼き物へと進化し始めました。それは、主に千利休や古田織部、小堀遠州といった著名な茶人達の美意識や創意工夫を受けて、様々な美しい技法やフォルムがもたらされました。今でも再現し得ないような、美しい釉薬の色つや、大らかな造形に、現代に生きる人達が美術館などで目にして感嘆の声を挙げているのも珍しくはありません。

焼き物に興味をお持ちの方で、まず日本の陶磁器の一種の頂点を知りたいとお思いの方は、ぜひ「桃山陶」という文字が入った展覧会に足を向ける事をお勧めいたします。現在に引き継がれている、様々な技法を知ることが出来ます。現代の陶芸家はまず、桃山陶を再現することを目指します。それは簡単には出来ることではありませんが、今の時代の日本の陶芸を志すものとしては、桃山陶に類似したものを作ることが出来て初めて、次なる現代の陶芸を生み出す指標が得られるのではないかと個人的には思っています。今、世に多くの名前を残している陶芸家は必ずその狭き門をくぐった方々ではないでしょうか。これは、前時代の最高峰の絵からまず学ぶという洋画でも日本画でも同じことが行われていますね。
正しく温故知新、最近ブームの魯山人にしても、殆ど、桃山陶などを含む日本の陶磁器の最高峰を模写し再現して、実用に供したことでそのよさを、当時は財界人、亡き後はその名を残して一般にも普及させ現在に至っています。

では、桃山陶とは具体的にはどのような焼き物なのか、といいますと、安土桃山文化研究の矢部良明氏により「世界に先駆けた“抽象芸術”の出現、つまり“オブジェ”」と表現されています。日本人が20世紀に知った概念、“オブジェ”という前衛芸術運動を、既に400年前の日本人が実践していた!なんて、すごいと思いませんか。お茶の世界の普及により、当時の人たちの創作意欲が刺激されて、世界に類を見ない器の数々を生み出すことになったのです。技法的に言うと、『黄瀬戸』『志野』『織部』『楽茶碗』『伊賀』『備前』など多種の焼き物わたっており、寂の精神に基づいた大胆な造形がそれに加えられています。
「桃山陶」について、興味をお持ちいただけましたでしょうか。

「黄瀬戸大根文鉦鉢」

今でも斬新なフォルムと模様
釉薬の光沢を取った油揚げ手と言われる黄瀬戸
桃山時代 16~17世紀
径25.5 萬野美術館
(写真-「日本やきもの史入門 矢部良明氏著」より)
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。
  「志野茶碗 銘・蓬莱山」

お茶碗に豪快なデフォルメが加えられ、個性を発揮した
桃山陶の精神が感じられる
桃山時代 16~17世紀
高10.1
(写真-「日本やきもの史入門 矢部良明氏著」より)
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。

次回は、その技法ごとに大まかなイメージや特徴をお伝えできればと思います。
最後までご拝読をありがとうございました。

「くらしの器と絵 匣」主宰 重田葉子
横浜市神奈川区西神奈川1-8-4
(JR東神奈川駅徒歩1分・京急仲木戸駅徒歩2分)
TEL  045-548-4901
E-MAIL  saya-art@d8.dion.ne.jp

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