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「インド・から」 水島司著 (山川出版社)

by staff on 2011/2/10, 木曜日
「インド・から」 水島司著 (山川出版社)  

 最近、BRICs(ブリックス)という言葉をよく耳にします。
 BRICs(ブリックス)とは、経済発展が著しいブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India)、中国 (China) の頭文字をとった言葉です。日本の8.7倍の面積に多様な民族からなる約12億人の人々が暮らすインドは、今や世界経済を牽引するほどの経済力を持つようになっています。

 30年ほど前、私の学生時代からインドはバックパッカーの聖地でした。インドに行くとその不思議な魅力に誰もが囚われて、何度も訪れたくなる言う話をよく聞きましたが、私はまだ訪れたことがありません。私にとってのインドは、「暑い」「カースト制度」というイメージでした。

 「インド・から」は、南インドの農村での調査をライフワークと
する著者の水島司氏(アジア史学者で東京大学教授)が25年ぶりに訪れた農村の変貌をわかりやすい言葉でまとめたエッセイです。

 私は30年来の知人であるグラフィックデザイナーの柴永文夫氏が写真撮影などで、この本の制作に関わったというご縁で、この本を読み始めました。
 この本には著者や柴永氏が撮影したインドの人々の日常生活の写真が186点、地図が11点掲載されています。
 写真はインドの農村の激変を物語っています。

 「カースト制」は身分制で、下層の人々の生活を虐げているものという認識を持っていましたが、地域共同体として機能していくために生まれてきた側面もあったそうです。「カースト制」で最下層であった不可触民が、最近は土地を所有し農業に携わるようになって生活レベルを格段に向上させていることが、著者が撮影した25年前の住宅の写真と現在の写真を比較して解説されています。

 また著者は、日本の農村でもあったような「水」や「土地の相続」についてのトラブルを、歴史的な背景を含めて解明しています。
 南インドの歴史や文化そして人々の暮らしを、インタビューや史料を通してこれほど克明に伝えてくれる本はないのではないでしょうか。著者の25年にわたる調査に裏打ちされた鋭い考察には感服です。

 
画像をクリックして拡大写真をご覧ください。
 

 この本では東南アジアのインド文化の伝播にも触れています。インドの人々は東南アジアだけでなく世界各国に進出しています。「0(ゼロ)」の概念や円周率「3.14」を発見したインドの人々はIT技術にも卓越した能力を発揮しています。世界のIT産業を支えているのはインド人だと言っても過言ではないくらいです。

 「インド・から」は、インドの計り知れない可能性を感じさせてくれる凄い本です。

<参考>

 

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