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6月 三ツ池だより 「ぴょんぴょんと行く」

by staff on 2011/6/10, 金曜日
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 日曜日早朝に車を走らせるとラジオから朗読の声が聞こえた。先日亡くなった児玉清さんの藤沢周平傑作選から「山桜」であった。

 「履き物を脱ぎかけて、野江は不意に式台に手をかけると土間にうずくまった。ほとばしるように、眼から涙があふれ落ちるのを感じる。取り返しのつかない回り道をしたことが、はっきりとわかっていた。」「あのことがあってから、訪ねてくるひとが一人もいなくなりました。さびしゅうございました。ひとがたずねて来たのは、野江さん、あなたがはじめてですよ」

 ひととひとの出逢いは糸のほつれのような時もあり、衝撃的な直接のひらめきの出会いだったりする。読書家であり、努力家であった児玉さんの声がしっかりと物語に張り付いていた。

 鶺鴒(せきれい)の姿を見つけたのはそんな日曜日に家に車で戻ってきた朝の事だった。静かに近寄るとぴょんぴょんとしながら駐車場の方へ入っていく。あふれるばかりの新緑の隙間から陽がこぼれる。ここは横浜市鶴見区駒岡である。ぴょんぴょんの先にもう一羽いて写真に撮っておきたいと思った。カメラを取りに走った。まだいてくれた。久しぶりの出来事であった。

鶺鴒の尾の礼儀よき学びかな     詢

 番いの鶺鴒が歩いている 。ピアノの鍵盤の上をでも歩いているように。
 アクアラインを通ることがあった。午前中の立ち会いをどうしても済ませる必要があった。昼を食べる必要があって、海ほたるに入った。海をゆっくり見るのは久しぶりだった。風はかなり強く、走っている車のハンドルがとられそうになるほどだった。

 船の前半分はデッキで空間をみせ、後方に操舵室をつけた船が行きかう。おもちゃの船が動いているようだ。かすんだ向こう岸に煙突・鉄塔。今訪ねてきた君津・富津の方になるのだろう。海の中には船が・船が・船がただよう。波が白い歯を出して笑っている。笑顔が次から次へと。鰯の煮付けや浅蜊汁を食べているうちに、右側から左側に船が進んでいる。気がついてみると船が皆右から左に向いている。停泊しているのかもしれない。風が右から左に吹いているのかもしれない。

 波は行ったりきたりだ。毎日の営みはそんなに大きなことばかりではない。寄っては返す波のような繰り返しである。その波がさまざまなものを運んでくる。その波こそが新鮮さをたもつもとでもある。3・11の不幸をどう乗り越えるのか。大きな波は津波となって根こそぎ持っていった。今はまたふつうの波となる生活に戻る 。どう戻るのかが問われている。寄せては返す波を意識する。船の向かう方向ははっきり今までと変えていく 。組織の在り方が問われ生き方が問われている。その中でもう一度習慣として持っているものを見直していく。お互い様の意識のなかで心の豊かさを求めていく。寄せては返す波は人様が生み出しているのではない。大自然の大いなる力が波を作り出している。寄せくる白波を見ながら自然の力に思いを馳せる。

五月雨や己のアカは流されず     詢

 このところ、25℃程になったり15℃くらいだったりする 。少しというか大変に体調を崩しやすい。五月の雨は不思議だった 。今年の雨は特別なのだ 。それでいて、朝、床のなかで聞く雨音の連続した確かなリズムを心地よく思う事があった。

 

Photos

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(文・写真:横須賀 健治)

 

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