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「いいかげんがいい」 鎌田実著 集英社出版

by staff on 2011/8/10, 水曜日
「いいかげんがいい」 鎌田実著 集英社出版  

 昨年読んだ。「北極点が海に消える日」があるんだ。とてつもない大変なことが地球上で起こっているのだ。「家のまわりに木を植え、屋根にソーラー発電のためのパネルを取り付けた。家電も省エネタイプに買い換えはじめた。ソーラーパネルつきのカバンなんてものまで購入した。ささやかなことの積み重ねを大事にしていきたいと思っている。戦争なんてやっている暇はない。戦車を走らせ、戦闘機を飛ばすエネルギーが、膨大な二酸化炭素を排出している。地球号にムダなことをしている余裕はないはず。溶け行く北極圏を見つめながら、戦争何て止めろって怒鳴りたい気分になった。」鎌田さんはほころびかけた地球を紡ぎなおしたいと活動される。

 NHKラジオでのゲストとのいのちの対話でのことを紹介する。「ヒットから遠ざかった彼女は、道ばたに咲くマーガレットを見てハッとする。凛と咲く可憐な花の姿に、自分らしさを失っている自分に気づいた。もっとヒットをなんて無理に自分を奮い立たせるのは、もうやめよう。地味でも大地に根ざし、空を見上げてやさしく咲いていれば、私もいい音楽が生み出せるだろう。そして再びコンサートを開始した。」「苦しい時に支えてくれた音楽を人は忘れない。音楽、大好き。音楽は免疫力を高める。」と書く。

 鎌田さんたちが行っているNGO日本イラク医療支援ネットワークでのことも記している。「援助は難しい。誤解を恐れずに言えば、いい加減な援助がいいのだ。がんばりすぎると、つい自分のやりかたを押し付けて相手のニーズを置き去りにしてしまう。しんどくなって長続きしないことも多い。それに、やってあげすぎると、援助を受ける人たちの生き方を弱めてしまう。相手の状況を見ながら、彼らが必要としていることの中から自分たちでできることを、長く続けていく。」それが一番いい形のようだとも。

 鎌田さんは長野県の諏訪中央病院で院長もされ、地域と一体になった医療や患者の心のケアも含めた医療を実践されている。こんな話を紹介している。「ずっと気になっている患者さんがいた。脳卒中で左片麻痺のある七五歳の女性。ぼくの外来へ足を引きずってやってくる。いつもニコニコしている。笑顔があふれている。有り難いという。」デイケアに行き出したという。デイケアが楽しいと。ある時話をしてくれたと。「旅役者をしていました。学校に行かせてもらえませんでした。字は読めるんだけど、書けません。今デイケアでおそわることはなんでも、私にとってはうれしい勉強なんです。だから、脳卒中になってうれしい。病気をしてよかった。初めて勉強ができました。」お姉さんの子を育て、一緒に生活しようといわれ、その家族といる。「その子にもお嫁さんにも心から大切にされている。本当の親子でなくても、間違いなく家族なんだ。」

 夕張市立総合病院が閉鎖されると聞き、心配でいられなくなって夕張へ行ってきた話がある。救世主が現れたのだ。「笑ってしまった。ダジャレみたいだ。炭坑から観光へ、観光から健康へ移っていけばいいのか。この男の先見性と決断力にシャッポを脱いでいたが、会うとすぐにカウンターパンチをもらった気分。タンコウ、カンコウ、ケンコウ・・・・大ざっぱないい加減さがすごい。」「夕張医療センターで儲けようなんて、夢にも思っていない。街を元気にしたい。街を明るくしたい。再びたくさんの人がやってくる街にしたい、と目を輝かせる。彼なら、きっと達成できる。」

 帯の言葉に「無理しない、こだわらない、よくばらない、つっぱらない、頃あいに、融通をきかせる、ほどほどに、{いいかげん}には、こんなすてきな意味が、隠されている。」「がんばらない」が昨年ベストセラーになった。今一度日本を立て直そうとする時、多様な生き方の参考になると感じた。

(文:横須賀 健治)

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