Skip to content

10月 三ツ池だより 「あるとないだけでいいの?」

by staff on 2011/10/10, 月曜日
Navigation: HOME»コラム»横須賀詢

 10月に入って途端に涼しくなった。なぜか今迄の月とは違う感じがするのはなぜなのであろうか。4月に始まった新年度の6ヶ月が過ぎ、後半のスタートである。3・11という大変な出来事を経験し、忘れてはいけないし、走馬灯にしてはいけない。一方でたしかな一歩の踏み出しが模索されている。

 10という数字は両手を前にして、一本一本指を折り、曲げていくと全部を握った形になる時である。包みこもうとする両の手から、今しっかりと拳を作って、よしいくぞという決意を示す形である。そう10月とは、新たな決意の月なのである。

 蕪村に次の句がある。

山くれて紅葉の朱をうばひけり    蕪村

岡の家に画むしろ織るや萩の花    蕪村

 内職の絵筵を織っている農家があって、構図のように、庭先に萩の花が咲いている。一方は山が暮れ、紫色となり、紅葉の朱をすっかり奪っている。10月をどのように楽しめばいいのかと思案する時でもある。

 次のような句を私は書いた。

カエサルを迎える萩の白さかな    詢

 何年か前「カエサル」を観劇する機会があった。カエサルはカルタゴ語で象という意味。見る人によってその象、すなわちカエサルの姿は違ってみえるのだという。カエサルは川を渡ってローマ市内に入ってくる。今まさに新しいリーダー像が求められている。時まさに門の入り口に白い萩が咲いている。

 2進法、10進法ということがある。二進法は「ある」「ない」である。10進法は両の手の指の数から来ている。従って、両の手を一回終わると次の両の手に行く。10とはそのようなものだ。10本の指があって10進法として確立してきた。そして10進法は1・2・4・8という倍数の組み合わせの考えのなかで電子化され、2進法は計算速度を上げる中で普及してきた。

 蕪村の時代、どのように自然を文様に取り入れるかを考えた。紅葉の朱をすっかり奪い取った山の暮れる色に想いをいたした時代は半端でなく貧しい時代、もののない時代であった。今その時代に戻るというのではなく、その思いを大切にしたいのだが。日本の文化とは、生まれそして滅びることを前提に愛おしさ、もったいなさ、そして悲しさを大事にしてきた。悲しさは乗り越える為にあるとさえいわれている。あのローマでカエサルが熱狂的ななかで迎えられ、帝国はまもられていく、それでもローマは最終的に崩壊していく。

蝉の声消えて吾が年数えけり     詢

 この10月を豊かにするためには、不便をも楽しむ国であって良いと思うのだがいかがなものだろう。何が今をこんなに混とんとさせてしまったのだろうか。本当は何を考えないといけないのか。私達は過去に学んだはずだ。「森は海の恋人」といわれている。それに気付きながら、山が荒れている。手の入らない山は荒れていく。確かな水のあるところは外国の人が、水を求めて土地を買って行く。日本の国土の主張をきちんとしていくべきだ。そのさなかでの原発の問題である。謙虚に振り返らなければならない。

 「三桁の掛算の必要性」という芳澤光雄氏の記事が目に飛び込んできた。「縦書き計算の掛け算指導を、2桁同士で終わらせている国は主要国では日本以外見当たらない」という記事だった。ドミノ倒し等で3桁の必要性を述べている。「2個だけのドミノ倒しでは、倒すドミノと倒されるドミノだけで成り立っている。それが3個のドミノ倒しになると真中に位置するドミノは倒されると同時に倒す働きを持っている」「すなわち、繰り上がってきた数を加える計算と上の位に加える計算の二つの働きをしている」部分があることの必要性を説いている。覚えるに大変だから、又はゆとりの時間が欲しいからという理論でこれを解決してしまってはいけないように思う。

どんぐりや幻の湯に迷い込む   詢

 原子力発電所が何故悪いのか。それは明らかに人間の存在すら消してしまうからである。誰でもがじつは不安を抱えていた。だからこそ莫大な費用を費やした。それぞれの地域にお金を落とした。豊かさをもたらす電力の供給力UPの掛け声のために、不安を隠して原発があちこちに立てられた。実は今なお、その使用済み燃料の廃棄が宙に浮いている。今あるものの安全性を高めながら、大胆にエネルギー政策を変えていかなければならない。それにはまずもって、私達一人一人が、生き方生活の仕方を変えていく覚悟を持つことだ。いつまでも栄華は続くものではない。

ローソクの短し嬉し秋の夜    詢

 今私達に課せられたものは健全な命の伝承である。命を繋いでいく使命感であり、繋いでいる喜びを共有することだ。かけがいのない命をお金に換算することでなく、健全な命の伝承へのあくなき挑戦こそが求められているのだと思う。

 

Photos

(下の画像をクリックすると拡大写真が表示されます)

     
     

(文・写真:横須賀 健治)

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top