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11月 三ツ池だより 「薄(すすき)をかざしけり」

by staff on 2011/11/10, 木曜日
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 11月は霜月です。例年よりは暖かいのですが、時に少し肌寒く感じます。そのくらい今年の夏は暑く、その後の気候も安定していません。庭には杜鵑が咲き乱れ、小ぶりですが鉢の菊が咲きだしています。玄関の横の侘助もふたつほど咲いています。これも小ぶりです。

 11月といえば「1」が二つ並んでいます。「禅シンプル発想術」枡野俊明著の中に「1日なさざれば、1日食らわず」という所がでてきます。「何のために働くのか」という項に出てきます。「自らが為すべきことを行わなければ、その分食事をしない」という労働も坐禅と同じ修行のひとつだという考え方のようです。

 社内で「何のために働くのか」を話し合ったことがあります。何故食べるの→何故生きるの→何故家族がいるの。なぜなぜなぜを続けるなかで「役に立ちたい」というキーワードが出てきました。人生が豊かになる”禅、シンプル片づけ術”で枡野さんはいいます。「まず、自分でもできると思えることから始めてみましょう。大切なのは、一時的に部屋をきれいにして満足することではなく、続けることなのです。」シンプルに考え、続けていくことの大切さを感じます。

 1はスタート。そのスタートが2つ並んだ月はもう1度スタートを見直す時です。
 そこで思いました。今年の初めにやろうと誓ったことで、続けてきたこと、できたことはどれだけあったのだろうかと。1月3日のノートから41項目でてきて、なんとか20項目やっていました。それでも50%を切っています。そのなかで続いていることに俳句があります。師匠の俳句に触れてみたいと思います。

 握手主宰磯貝碧蹄館の平成15年発行の句集「馬頭琴」からです。

天竺の空のあやしきどじょう鍋   磯貝碧蹄館

 今この句が出たらどんな評価がでるのでしょう。天竺が出てくるところが面白いところです。天竺だって空があやしくなる時があります。いつも晴れて乾燥しているとは限らないのです。どじょう鍋の絵柄がそれを受けています。美味しいどじょう鍋だけを思い描いていると、こういう句は現れません。ここで考えてみたいのは天竺とどじょう鍋の関係です。たかが「どじょう」されど「どじょう」です。師は「どじょう」の行く末を案じています。どじょうも、それを食する人も天竺を見据え、来る未来を、確かなものに願っているのです。師はその情景の前で照れています。いかにも道化師のように。

石門石鼓鬼女は薄を挿頭しけり   磯貝碧蹄館

 馬頭琴の中におさめられている句です。「挿頭しけり」は「かざしけり」と読みます。なんとも不思議な句です。「すすき」に込められた想いはどのようなものなのでしょう。以前「すすき」は寂しいものと感じていました。急速に葉の落ちる季節に入っていくからなのか、文字からくるのか。それが、孫がくるようになってお月見に薄を飾るようになってから薄が好きになりました。秋の味覚をお盆に載せます。その花と一緒に飾られた薄の向こうに月と雲が見えるのです。見ているのは家族みんななのです。

薄の穂揺れて小さき手握りしめ   詢

手を解き距離の広がる薊かな    詢

 師の薄は晩秋の景であるとおもいます。鬼女もかざしたいのです。苦楽を越えて生きていた証はなにも見えません。しかしながら歩みが今なのです。自分の存在を確かめたいのです。ふとすすきに手が届きそれをかざしたのです。途上にある私は、手を握りしめる確かな生きざまの所にあり、薊のなかに痛みを感じるのも生きている証しなのです。
 山茶花がさきはじめ、私には「たきび」の童謡が聞こえてきます。

「かきねのかきねのまがりかど  たきびだたきびだおちばたき
あたろうかあたろうよ       きたかぜぴいぷうふいている
さざんかさざんかさいたみち   たきびだたきびだおちばたき
あたろうかあたろうよ        しもやけおててがもうかゆい」

 日本の原風景はまだまだ探せばあると思います。しかし横浜にはなくなってしまったのではないでしょうか。なくなってしまった原風景を取り戻すということではなく、自然の風景そして子どもたち、そこを見守る大人たちといった、苦労しても安心して生活していることの、なんとも穏やかでほっとする光景。それを創り出していくことが必要なのです。やらなくてはいけないことであり、行動を急がなければいけないのです。

 11月は霜月です。今一度霜月を大きな楽しみの月にしたいと思います。

 

Photos

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(文・写真:横須賀 健治)

 

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