トリアー選帝侯の不治の病を癒したワイン
トリアー選帝侯の不治の病を癒したワイン
写真) ベルンカステルとドクターの畑
中央モーゼルの代表の町ベルンカステル(Bernkastel)は、切妻屋根の美しい伝統の木組み建築がつづく、お伽のような町並みです。14世紀のころ、その町を見下ろすように丘の上にそびえるランズフート城に滞在中のこの地方の領主トリヤー(Trier)の選帝侯(ベームント2世)が、不治の病に冒されました。侍従の医者たちはあらゆる手を施しましたが病は治らなかったため、大公は「誰かわが病を治す者はいないか」と国中におふれを出しました。 ある日のこと、大公の前に一人の農夫が樽を担いで現れ、「これは先祖より伝わる我が家の妙薬す。毎日この杯で一杯お飲みください」と差し出しました。大公は藁をもすがる思いで飲んだところ、大変おいしく、つい2杯、3杯と毎日杯を重ねていくうちに、やがて病は治まり元気になって参りました。 そこで、彼の農夫が再び訪れた際、大公は「これは如何なる妙薬ぞ」とお尋ねになりました。すると農夫は「これは先祖より伝わるブドウ園で、丹精込めて造りましたワインです」と答えました。大公は、その畑に『ドクター(Doctor)』と名付けるよう命じ、農夫には数倍のブドウ畑を褒美として与えました。 現在そのブドウ園は、「ターニッシュ博士家(Dr.Thanisch)」が代々所有しています。ターニッシュ博士家は、ランズフート城をモーゼル川対岸に臨む場所に、石造りの重厚な館をかまえ、毎年素晴らしいワインを造りだしています。 現在の当主はソフィア・ターニッシュ(Sofia Thanisch)夫人で、ワインは造る人の心情を表すと言われる通り、このドクターのワインを味わえば、その優雅で上品な味香は、かつてトリアー大公の不治の病を癒やした物語も納得できる、飲む人の誰をも癒すワインでしょう。 |
ターニッシュ博士家の領主館
エチケット
ベルンカステルの木組みの家々 |
(文・写真:ワインブティック伏見)
ワインブティック伏見
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