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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第6話『絵具屋 三吉』日本画『絵の具』のお話

by staff on 2012/6/13, 水曜日


作:佐々木彬文

 

 東雲・辰砂・岱赭・京陽炎・緑瑪瑙・空蝉・醍醐・・・
皆さん読めますか?
今回は、日本画の絵具のお話です。

 横浜の関内にひっそりと絵具屋さんがあります。名前も『絵具屋 三吉』http://www.sankichi.com/
名前を聞いただけでは、可愛い学生やお子さん用のお絵描きの絵具を扱っている文房具屋さんのように思うでしょう?・・・実は凄い所なのです。

 

豊富な品揃え、しかも「水彩人」というオリジナル絵具を作っています

 何が凄いのでしょうか? 横浜、いえ、神奈川県で日本画の絵具の種類・品揃え全てにおいて、ここが一番なのです(一番だと私は思っているのです)。三吉は自社でも「水彩人」というオリジナル絵具を作っています。また、三彩紙という名の紙も作っています。

 兄弟会社が渋谷のウエマツ画材店です。http://www.shibuyamiyamasu.jp/uematsu/main.html

 このお店の守備範囲は広く、関東はもとより、伊豆を超え、箱根の山を超え注文が来ます。

 NHKでは、日曜美術館等の番組で(日本画家の取材の時は必ずと言って良い程)絵具の入った硝子瓶を背景にして、画家を撮影します。

 テレビの画面に映った小さな硝子瓶に貼られているラベルをよく見て下さい。『絵具屋三吉』と書かれてはいませんか? 小倉遊亀さんの映像にも映っていました。平山郁夫先生のアトリエでも見掛けました。それほど凄いお店が横浜にあるのです・・・そんな日本画の絵の具のお話です。

(クリックで写真拡大)


絵具屋三吉の正面入り口とショーウィンドウ

 


店内:オリジナル絵具 水彩人 コーナー

 

色・色・色・・・色の多さに圧倒されます

 日本画の絵具は粉末です。それを膠(にかわ)で溶いて使います。絵具の名前が素敵なのです。それは絵具一つ一つに歴史があるからです。昔から付けられてきた名前が今でも生き続けております。

 東雲(シノノメ)辰砂(シンシャ)岱赭(タイシャ)京陽炎(キョウカゲロウ)緑瑪瑙(ミドリメノウ)空蝉(ウツセミ)醍醐(ダイゴ)・・・素敵な名前の色、まだまだあります。

 東雲は朝の、夜が明ける直前の東の空の色です。和歌では恋の歌に「東雲」が使われます。しのび逢う恋人たちが別れを惜しむ「夜明け」が「東雲」の色に重なります。

 辰砂は赤レンガ色より少し赤いでしょうか? 辰砂は水銀の元となる鉱物です。弥生時代から採掘されていて、魏志倭人伝に邪馬台国の『丹有』と書かれています。

 丹とは丹頂鶴(たんちょうづる)の丹の事で、丹頂鶴は頭のてっぺん(頂)が赤い(丹)鶴と言う意味です。その色(丹)が採取(有)されていると書かれています。

 朱の漆もこの色を生漆に練り込んで作ります。神社の赤い漆の柱や壁はこの漆です、この朱は魔から守る「結界」の意味もあります。

(クリックで写真拡大)

 

 

弘法大師と辰砂

 近畿・四国に多いのですが、苗字が「丹生」という方がおられます。祖先は、高句麗に圧迫され、聖徳太子を頼って日本に移って来られた百済の技術者です。鉱物を採取し、生成する技術を持った一族・・・この方たちの苗字に『丹』が入っています。つまり辰砂を採取していたのです。他に金も採取していました。そして、両方そろうと原始的メッキが出来上がるのです。

 丹生一族の話はさらに続きます。「弘法大師に資金援助をし、唐に渡る手助けをしたのでは?」と考えられています。

 「何故?」・・・四国八十八か所と和歌山の弘法大師(空海さん)の修業した跡を線で結ぶと、丹生一族が採取したと思われる鉱山跡と重なります。「面白いでしょう?!」

 面白い名前では、「利休鼠色」なんていかがでしょう?「利休」という茶人の名前が色に付いてしまいました。女性の名前みたいな「美春(ミハル)」なんてロマンチックな名前もあります。

 絵具一つとってもこんなに話が広がります。一つ一つの絵具の説明をすると話が、永遠と続きそうです。続きはまたの機会に取っておくことにして・・・・。

 

日本ほど色の名前が豊かな国は他にありません

 大きく分けて、日本画の絵の具は2種類に分けられます。鉱物を粉にして作られる岩絵具と、色の泥を水槽の中で捏ね乾燥させて作る水干絵具です。

 日本人は、色を見分ける能力に凄く長けている民族です。ですから、色の言葉が凄く多いのです。

 赤色と言われる色も、緋・紅・赤・・・等に分類します。緑色の種類等は、松葉緑青等の緑青グループ・群緑と云われる種類・白緑の仲間・唐緑・そして黄緑のグループ等に、青色の仲間では、群晴・納戸・藍・・・等に分けられています。

 黒色も黒と一言で済まされない世界です。白に至っては○○白土や、胡粉と言っても面胡粉であったり、貝殻胡粉であったり、本代胡粉であったり・・・素材や粒子の大きさで発色が違ってきます。私たちは、それらを見分けられる能力をDNAの中に持っている素晴らしい人々なのです。

 

パリの赤富士の話

 昭和の時代、ある画商がパリのリトグラフ(石板画)で広重の赤富士を作ろうと考えました。「赤富士」の見本を持ってパリに行ったそうです。そして石板職人さんが摺ってくれた絵を見てがく然!!見事な赤富士のグラディエーションがベッタリした橙に近い赤色に成っていたそうです。訊くと広重の細やかな色の移りは印刷ミスだと片づけられたそうです(がっくり)。

 

日本画を身近に! 「絵具屋 三吉」を覗いてみよう!

 三吉に色を見に行って下さい。そして、何とはなくフィーリングに合った色、気に入った色があれば、一両程買い求め小瓶に入れて部屋に飾ると、とても心休まると思いますよ。

 そうそう、最後に絵具を買う時、現代でも一両・二両と買います。江戸時代みたいでしょう?

 一両とは「一両小判」一枚の重さなのです。ですから、両替商(現代は銀行)の地図の記号は分銅の図形で表されます。絵具の入った硝子瓶には、一両いくらと書かれてあります。一両は15gで『一両頂戴なァ』は『15g頂戴なァ』なのです。

 

(クリックで写真拡大)

 日本人の素敵なところ・・・今でもこの単位(両)を使っているお店が他にもあります。1つは、お香屋さんです。でも、(ここが一番日本人の素敵なところ)お香屋さんの一両は15gで無くて14gなのです。それは、金より香の方を大切に扱ってきた気持ちが残っているのです。

 一両は、それ以外にも紅花や御抹茶の単位に使われています。

 まだまだ、お伝えしないといけないのに、何か書き忘れているように思うのですが…今は思い出せません!故にこのくらいで…続きは、思い出した時に、また、書きましょう!

頓首

文・絵・写真:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)高野慈子

岩谷学園「粋生倶楽部」

岩谷学園「粋生倶楽部」 「茶懐石料理を楽しむ」~茶懐石料理を笑顔で・造って・味わって~

和食を世界遺産の無形文化財に申請する運動が広がっています

第一回 4月25日(水)終了 「鴨の射込みロースと山芋の板摺り」の八寸2品
第二回 5月23日(水)終了 「峰岡豆腐と椀物・小鉢」
第三回 6月27日(水)11:00~13:00 「鯛の酒〆と粽寿司」と(蘇民将来孫也のお話)、飾り付け

(クリックで写真拡大)

 

(岩谷学園「粋生倶楽部」茶懐石料理を楽しむ 第二回「峰岡豆腐と椀物・小鉢」の様子)

参加費:1回毎 一般3,700円  会員3,200円

お問合せ/お申込み:http://www.ikiiki-club.jp/
 

匣SAYA

佐々木彬文の裏千家茶道教室 & 絵手紙教室

6月14日(木)13:00~ 立礼(椅子席)茶道教室 参加費3,500円
6月17日(日)13:00~ 立礼(椅子席)茶道教室 参加費3,500円
6月20日(水)14:00~16:00 絵手紙教室 参加費3,000円

お問合せ/お申込み:https://www.supportyou.jp/saya

お抹茶を楽しみませんか?

小さなグループを集めてティーパーティはいかがでしょう!
茶道教室というと堅苦しいでしょう? 「茶話会」をご自宅で・・・「ご一緒にお抹茶を楽しみましょう」
 

日本画教室も随時開講中

佐々木彬文プロフィール 日本画家(彬文会主宰)
茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
クラッシックギター演奏者

 

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ヨコハマNOW 動画

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ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
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