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ビジネスの創造方程式で勝ち抜こう(第2回)

by staff on 2012/6/13, 水曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.創造方程式は意外に身近にある

さて、お待たせの創造方程式は、実は2種類あります。
(1) 異種間融合方程式
 A x B => C
(2) 改善方程式
 A => A’

(1)は、AとBの異なったものが、反応して別のCというモノに変わることを示しています。(2)は、Aが、元のモノから変化してA’に変わるというものです。

ポイントは、この(1)と(2)とも実際は組み合わせて使うことと、『=>』(矢印)の部分には困難を伴うことを覚えておいてください。

これが、どこにアイデアの創造などと関係するのかと疑問に思われたかもしれません。

例えば、マッチ棒を考えてみましょう。
マッチ棒が発明されるまでは、火を起こすのに大変な労力を必要としました。しかし、マッチ棒はよく観察すると、2つの働きがあります。1つは、マッチの先についた燃焼部分(発火部)であり、もう1つは棒の部分です。燃焼部分も一定の摩擦熱で着火するように出来ています。(1)の異種間融合方程式で分析すると、Aは燃焼部分、Bは棒の部分であり、Cはマッチ棒となります。

「なあんだ、常識じゃないか」とか「マッチ棒の組み立てか」と思ったあなた。ちょっと、考えてみてください。燃焼部分だけでもマッチ棒はできません。棒だけでもマッチ棒ができません。つまり、両者が融合しなければマッチ棒は火を起こす役目を担えないのです。さらに言えば、箱の側面についた摩擦の大きな部分(「やすり面」)と燃焼部分を、棒でこすりつけるといった発想がなければ、マッチ棒やマッチ箱も存在しないことになります。(1)の異種間融合方程式で表わすと、
 A(燃焼部分) x B(棒) => C(マッチ棒)
となり、『=>』(矢印)の部分は「こすりつけることで火を起こす」という発想で成り立っていることが分かります。さらに、簡単に言えば、「こする」という動作が引き金になっていることが分かります。

マッチ棒がマッチ棒と言えるには、実は火をつけるということです。少しまわりくどくいうと、火をつける解決策としてのアイデアを具体化したものがマッチ棒とマッチ箱であると言えます。

2.発想の触媒(その1)

化学の時間に「触媒」という言葉を聞いたことはありませんか?触媒と言うのは、化学反応を促進する物質で、それ自体は変化しません。つまり創造方程式で言えば、『=>』(矢印)の部分で反応を促す役割のモノです。

ここは化学の時間ではないで、早速、アイデアを出す場合の「発想の触媒」について触れましょう。すべてではないですが、主な「発想の触媒」を表にまとめてみました。

人間系 時間・空間・論理系 環境系
【五感】 【拡大/縮小】 【環境】
 ● 食べる
 ● 飲む
 ● 考える
 ● 話す
 ● 聞く
 ● 触る など
 ● 空間(広い/狭い)
 ● 時間(短期/長期、居今からX年後) など
 ● 現実/仮想
 ● リアル/ネット
 ● 身代わり/なりすまし
 ● 個別/集団
 ● 代替 など
【動作】 【反転/逆転】 【感性】
 ● 使う
 ● 書く
 ● 出来る など
 ● 左右反転
 ● 上下反転
 ● 因果逆転
 ● 主客転倒 など
 ● 極限状態
 ● 挑戦
 ● こだわり など

大きく分けて、人間系、時間・空間・論理系、環境系と分けてみました。
多くのアイデアを応用するときを考えると、相手は人間です。そこで、人間系は、大きな割合を島ています。時間・空間・論理系は、発想が凝り固まったときに特に有効です。いわゆる突飛もない考えを引き起こしてくれます。環境系は、創造方程式の『=>』(矢印)の部分の状況を示します。例えば、「明日がもし地球最後の日であれば」といった仮定で、
 A(燃焼部分) x B(棒) => C(マッチ棒)
を考えると、最後の日に相応しい発想が生まれるでしょう。

ここで重要なことは、発想の触媒を何時でも使えるように「練習」することです。また、練習できる場を創ることです。トイレや喫煙所、喫茶店など、一人でリラックスできる環境なら、発想がよく出てくるという方も多いでしょう。是非、練習場として、一人でリラックスできる環境=発想の場を探してみてください。

3.ビジネスでの発想体験から~発想の瞬間~

ここからは、ヨコハマNOWの読者には著名な、ともクリエーションズの渡邊桃伯子さんへのインタビュー。今回のねらいは、発想の瞬間です。

松本: ともさん(渡邊桃伯子さん)と最初に知り合ったのは、丸の内でのセミナーでしたよね。

渡邊さん:そうですね。東京駅前の丸ビル(新丸ビルではありません)が会場でしたよね。丸ビルが新しくなったときですから10年ほど前になりますね。(※丸ビルは2002年9月にリニューアルされた)

松本:そのときも今も、渡邊さんはいつも「新しいコト、モノ」そして新しいヒトとの出会いについて語られますよね。さらに重要なことですが、いつも目をランランと輝かせてワクワク感、一杯という感じです。ところで、今、マイブームというか、ワクワクしているってな何でしょうか?公開してはまずい秘密のことなら、一番でなくて、二番目でも良いですが・・・

渡邊さん:松本先生にお会いした10年前は、ネットショップシステム「商売自慢」の開発に取り組んでいた時期でした。「商売自慢」をどのように売り出していくかをご相談いたしました。
今のマイブームですか・・仕事では、様々な人たちと出会ってビジネスにつながっていく「ビジネスマッチング」でしょうか。プライベートでは「落語」にはまっています。

松本:失礼な質問ですが、これらの話のどこがワクワクするのでしょうか?

渡邊さん:昨年一月に「横浜売れるモノづくり研究会」を立ち上げたのですが、その研究会に参加された方々の間で様々な取引が自然に発生しているのです。その場を私たちが提供しているってうれしいことです。皆様のビジネスの場が広がることが、研究会設立の目的の一つでもあるので、それを実現できていることがうれしさになっていると思います。

松本:ここでいう、うれしさは具体的に何でしょうか。お互いに知り合ってもらって、成果が出たというのか、あるいはともさんの目利きに間違いながなくてそれがうれしいとか・・・。

渡邊さん:弊社も取引を生みださなければならないのですが・・・。私は「人のモノを売ることは得意ですが、自分のモノを売るのはイマイチ」のようです。(笑)

松本:ワクワクというのは、どこか自分で、完成のイメージができるところがありますよね。将来的なイメージとは?

渡邊さん:自社の技術を今まで考えもしなかった分野に活用して、新製品を創り出す製造業が増えていくことです。日本の中小製造業が元気になってほしい、というのが私達の願いであるからです。

松本:なるほど。それでは、どうして今まで、これに気付かなかったのでしょうか?

渡邊さん:製造業の生き残り戦略の一つとして、最終消費者向けの製品開発が重要だと思いながら、どこの会社も日々の作業に追われています。行政機関がアレンジするマッチングでは、互いの企業の情報交換まで進むことができないようです。私達は中小製造業の悩みを同じ目線で感じることができます。私達の手作りの研究会セミナーでは名刺交換に終わらないように、幹事が企業同士を紹介することをやっています。もっと早くこのような取り組みをすれば良かったと思っています。

松本:この取り組みに気付かれたときのインスピレーションはどこから? 何かの拍子や天啓?で・・・。このあたり、今回のテーマの「発想の瞬間」につながりますね。新しいことを生みだすヒントがこのあたりに在りそうですね。ヒントになるようなことはありますか?

渡邊さん:情報収集に努めることだと思います。社会全般の動きを見極める力を付けることが、新製品の種を生み出していくことにつながるのではないでしょうか。また、自社製品の最終消費者の目線に立って考えることも重要だと思います。会社や人を結びつけることをビジネスにしたいと思うほど、最近はマッチングをしていますね。すべて無償ですが・・・(笑)
弊社のお客様とお話していて、こんなことを”売り”にしていきたいと伺ったときに、「そうだ。あの会社だったらこの”売り”が必要かもしれない」と思いつくのです。直近では、和装を得意とするブライダルエステのオーナー(弊社のお客様)とブライダルビデオ制作会社の方(私の知人)をマッチングする予定です。

松本:つまり、渡邊さんからみて、マッティングしたい会社のリスト“売り”によって、関係会社同士が浮かび上がる、ということですね。
1つの要素がこれまで自分でははっきりと気づかなかったマッチングの可能性のある会社であって、もう1つが会社の多くの“売り”。この2つに対して電気ショック(笑)や天啓?で、化学反応がおこり、アイデアが出てきたと言えそうですね。そのアイデアによって、マッチングする両方の会社のお客さんによろこばれるサービスや商品が生まるという・・・・。更にまとめると、
 A(企業リスト)x B(各社の”売り”)=> C(新サービス・商品)
という式にかけそうです。これは=>の創造方程式ですね。
さて、ちょっと問題なのが、この電気ショックに相当するものが何かということです。渡邊さんの場合は、これは何ですかね?

渡邊さん:人との出会いとコミュニケーションですね。弊社の集客システム「サポチュー」が生まれたのも、販売代理店の若手の方々と意見交換していたときに、「お問合せ」をしていただいた方に、その方の要望に合致した返信がシステム的に出せたらいいね・・ということを言われました。「お問合せ」の内容はデータベース化できるですから、条件ごとに返信する内容を変える、つまり一律から個別にメールすることができれば、いいのではとひらめいたのです。例えば、港区在住の30代男性がワンルームマンションを探している時に、その方にふさわしいワンルームマンションの物件を瞬時紹介できればいいのです。企業ごとにシステム構築すれば簡単なことですが、それだと、会社ごとに同じようなシステムを別々に構築しなければなりません。汎用性を持たせてどの企業でも使えるようなシステムはできないかを考えてみようと思ったのです。

松本:なるほど。お問い合わせの個別対応を自動的に行うことですね。この発想は、発想の場となる人との出会いとコミュニケーションを意識的に作って、一律=集団を個別にしてみるといった発想の転換(触媒)を働かせる、と言えそうです。いつも、発想の場となるのは?

渡邊さん:「出会い」でしょうか。「横浜売れるモノづくり研究会」で様々な製造業の事例発表を聞いていると、なぜそれが実現できたのか、そのバックグランドを知りたいと考えます。いつでも誰に会っても、その人のことをもってと知りたいと思います。「人」が好きなのかもしれませんね。

松本:アイデア豊富な渡邊さんでも、これはちょっと意識的というのは難しいところかもしれません。でも、よく探ってみると、意図的に創造方程式を促すような「出会い」という発想の場を用意して、発想の触媒を使いこなせるようになれば、アイデアは意外とポンポンと出てくるのではないでしょうか?渡邊さん、ご自身の経験ではいかがでしょうか?

渡邊さん:それに関係するかどうかわかりませんが、商品力と人間力の両方がそろわないと「商品」は売れないと言われています。情報発信力がいくらあっても「商品」に力がなければ消費者からは見てももらえません。「商品」の独自性を出していくのかが組織としての課題だと思っています。独自性は、自社の強みが何にあるのかそれを分析して、消費者の目線に立って、自社の技術力や商品力で何ができるのかを追求していくことから生まれると思います。

松本:そうですね。渡邊さんの場合は、商品力×人間力といった、渡邊流の創造方程式がすでにあったと言えるでしょうね。消費者の目線が、発想の触媒ともいえるでしょう。

松本:それでは、これから長い連載にお付き合い頂くことになりそうです。改めまして、今後ともよろしくお願いします。

次回の予告

次回は、発想の触媒についてもっと詳しく見てみます。さらに(2)の改善方程式にスポットをあてます。改善は、新規発想でないという誤解を先ず取り払うことからはじめましょう。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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