Skip to content

2012年9月 三ツ池だより 「縄文のビーナスとジャム」

by staff on 2012/9/10, 月曜日
Navigation: HOME»コラム»横須賀詢

 ジャムをいただいた。神奈川から秋田へ移住された友人が持ってきてくれた。秋田の自宅の前の畑に植えた苺がふえているそうである。苺としては少し酸っぱいのでジャムにしてみているとのこと。奥さんが自分で器具を揃えて調理している。このジャム、じつは我が家では好評なのである。秋田フェアーを横浜でやるたびに出展され、そのたびに私は買い求めた。無くなるとオーダーもしていた。味は軽いのだがしっとり感があって朝の食卓には一時欠かせないものになっていた。

 先日は、ところ変わって静岡でジャムをいただいた。「名誉教授のジャム」と家では名付けた。静岡大学に友達が奉職していた。退官して数年たつ。ストロンチュームの難しい課題があって、相談の連絡を取った。「もう現役ではないよ」といいながら教え子の先生の紹介をしてくれた。その帰りに自分手作りのジャムをお土産にくれたというわけだ。ジャムはイチジクとミニトマトのものだった。「山に行くことがあるので、調理を自分でするのは苦でない」と言って、コンパクトなプラスチック容器に入れてくれていた。それぞれに手書きでの付箋がついていて、イチジク、ミニトマトと書いてあった。淡々とするなかにそれぞれの味がしっかりし、これもなかなかのものだった。

 無花果(イチジク)といえば次のような句が思い出される。

ドフトエススキーの匂い無花果よ
坪内捻典
無花果や竿に草紙を縁の先
夏目漱石
手がとどくいちじくのうれしさよ
山頭火

 無花果は比較的どこの家にも植えられている。すぐ大きくなるのでおやつにも恰好のものだ。手でもぐと白い液が出てきた。我が家も植えていたが収穫の頃になるとカラスにとられてしまうし、木が大きくなるので処分してしまったが、少しまえはどこの家でも見かけた。新鮮な日常を句は描写している。無花果の句といえば、

いちじくや才色共に身にとほく
三橋鷹女
無花果をもぐに一糸を纏わざる
三橋鷹女

 鷹女の句を見つけてはっとした。それは蓼科での「縄文のビーナス」の国宝をみてから感じていたことなのである。縄文時代に日本でもこれだけの加工技術をもっていたことに感動し嬉しくなっていたのだが、妊婦さんであるのか、下腹が膨らんでいるのは不思議な魅力であり、なにかなつかしいものを感じていた。無花果の形が縄文のビーナスの姿に飛んで行ったのである。やわらかで包み込む曲線がここにあったのだと。素朴であるが懐かしい無花果である。

 ジャムを二週間続けていただいたことが吉報の予感ではないかとおもっている。秋田からのジャム、そして名誉教授綬のジャム。それぞれに長い付き合いのなかからのいただきものであった。偶然とはいえ心からありがたいと思うのであった。

 夏から秋になる。人は夏に何を想い、秋に何を期待するのだろうか。私は縄文のビーナスと無花果が結びついた驚きのなかで、確かなことは、繋がりであり絆であると感じる。何千年もまえの日本にすでに立派な文化があったことにも誇りを持ちたい。そのなかで新しい可能性に何をもって挑戦していくのか!

 「おーい!あきらめるなよ!日本はいいところをいっぱい持っているよ!」
 一歩一歩手を取り合ってもう一度頑張ってみようではないかとおもっている。

 

Photos

(画像をクリックすると拡大写真が表示されます)

     
     

(文・写真:横須賀 健治)

横須賀 健治プロフィール

メジャーテックツルミ 代表取締役
はかることのプロとして50年です。
食品の放射能測定のアークメジャーを設立しました。
「計量から見える幸せ」をライフワークにしています。

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top