第10回 どあっぷ「肝っ玉母さんに学ぶ」
シティズンシップ教育を目指すNPO法人ど・あっぷ(DOUP!)です。 今回のメニュー
です。最後まで、どうぞお付き合いください。 |
肝っ玉母さんに学ぶ
先日ファミレスで出会った、ある肝っ玉母さん率いる一家を見て、街全体が、こんな肝っ玉母さんのように、子ども達を見守れたら、素晴らしいだろうにと、感じたことを少々お話したいと思います。
ファミレス全館にとどろく、ちびっこギャングの泣き声
その家族は、おかぁさん、15歳くらいの大きなお姉ちゃん、まだ小学校1~2年くらいの弟(長男)、2歳になるかならないかのちびっこBOY(次男)の4人でした。
すると、突然、ちびっこBOYが泣き始めました。おかぁさんに抱かれ、背中をさすられています。別に珍しくもない、ファミレスではよくある光景ですので、はじめは私も気にも止めていませんでした。
ところが、15分たっても、20分たっても、30分たっても、一向に泣き止みません。それどころか、その泣き声はどんどんエスカレートし、比較的広いファミレス全館の隅々にまでとどろく、雷鳴のような勢いにバージョンアップし始めていきました。BOYの顔は真っ赤で、鼻水と涙でぐちゃぐちゃです。途中咳き込みながらも、その勢いは加速がつくばかりです。おかぁさんも何があったか分からず、終始「どうしたの?」と、だっこしながら聞いています。
が!母は、だっこしながら、背中をさすりながら、パスタもちゃんと食べています。っていうか、パスタメイン。「どうしたの?」とは発するものの、それはまるで、壊れたテープレコーダーのように、ただ言葉を連呼するだけ。無論、「どうしたの?」と聞かれても、「これこれこうだ」と上手く言えないから泣いているんじゃないか!と訴えているかのように、BOYの雷鳴は止まりません。
さらに、長女も、長男も、次男が号泣する中、嫌な顔をするわけでもなく、かといって、あやすわけでもなく、もくもくと自分のメニューを無言で平らげています。
彼らにとっては、これが日常なのでしょう。
はじめは、号泣ぶりが尋常ではないように思え、ケガなど病院に連れて行く必要があるのではと心配したのですが、どうやら取り越し苦労のようでした。
よく見れは、母の後ろ姿は、絵に書いたような肝っ玉系。背中はモスラのように3段に別れ、立派な腕は、1本でBOYを抱き、1本でパスタを混ぜています。体全体から、ドーンとした重厚感と、おおらかさがにじみ出ていました。
こんなおおらかな母に育てられたBOYも、ちょっとやそっと泣いたくらいでは、自分の主張が通らない事は、きっちり理解しているのでしょう。生まれてからこのかた、日々の鍛錬を積みに積み、見事な大声を習得したものと思われました。
30分も号泣していた彼は、その鍛錬の成果を発表している最中だったわけです。
なんといういい家族
母に負けない落ち着きさを持った年の離れた長女が、みごとなお姉さんぶりを発揮したのは、BOYが鍛錬の成果を発表しはじめて、30分を過ぎた頃のことでした。
自分の料理を平らげた彼女は、すっくと立ち上がり、BOYを母から受け取ると、彼を自分の左の腰に上手に乗せ、左手で体を支え、抜群の安定感でスタスタと外に出ていきました。その見事な抱きっぷりから、日ごろ弟達の面倒を良くみているのだとすぐにわかりました。残された、長男の安心した顔も、そのことを証明していました。
お姉ちゃんのお陰で、お母さんも長男も、残りの料理を静かな環境でしっかりと完食できました。
程なくして、顔をベタベタにしながらもニコニコしたBOYを連れて、お姉ちゃんが戻ってきました。長男の隣にBOYを座らせると、今度は、長男がBOYをあやし始めます。
ケラケラと幼児独特の笑い声が、館内に響きわたります。それぞれが、それぞれの役割を果たし、次男をみんなが見守る姿がそこにはありました。
それは、決して自分を犠牲にする事でもなく、問題を無視し放置することでもない。
いい家族でした。
シチズンシップの原点がここに?
大げさかもしれませんが、シチズンシップの原点を、この家族に見たように思いました。
家族を街に見立てたなら、家族のメンバーは、市民です。
街に問題が発生した時、それを神経質に騒ぎ立てずにおおらかに見守り、問題の程度を判断し、それを見て見ぬふりはせず、自分の役割、できることを考え、的確に役割を果たす。でも、決して、それは自分が犠牲になる事ではなく、自分のやりたいことはしっかりやって、問題も解決するのです。
あの家族も、BOYのせいで、料理が食べられなかった人は一人もいませんでした。皆、しっかり温かいうちに料理を食べました。且つ、結果、BOYはニコニコ顔でファミレスを出ていったのです。
これまで、シチズンシップを考える上で、「公の問題を他人ごとにせず、自らが問題解決に貢献する」という事ばかりを考えてきましたが、「問題を神経質に騒ぎ立てず、おおらかに直視し、見守り、状況を判断し、役割を果たす」という「おおらかさ」という感覚も、重要な要素であると感じました。
皆さんは、どう思われますか?
藤沢市から依頼を受け、ワークショップ開催しました/10月20日
ふじさわ未来プロジェクト
藤沢市は、10年以上前から毎年、小・中学生を対象に、「こども議会」など、自分の街を考えるプロジェクトを実施しています。
今年は、「ふじさわ未来プロジェクト」と題し、市内の小学生(5~6年生)を募集。自分達の住む街の様々な活動をする人々を取材し、最終的にビデオ作品を制作、試写会を行うという取り組みが計画されています。10月から来年の1月までの約5ヶ月間、全6回のプロジェクトで実施される予定です。
ど・あっぷは一回目を担当
先月(10月20日)その第一回目がスタートしました。私たち”NPOど・あっぷ”は、その第一回目を担当。藤沢青少年会館にて、アイスブレイクとまちづくりワークショップを行いました。
公募で小学生が集まっているので、子供達はこの日が初対面。これから5ヶ月もの間、力をあわせて一つの作品を作っていくわけですから、初回が肝心です。仲良くなることが、何よりも大切な第一回目ということになります。
そこで、ゲーム感覚で、楽しく、でも一人ひとりにスポットが当たり、できるだけ沢山の発言の機会のあるワークショップになるよう工夫しました。
オリジナル「まちづくりワークショップ」を実施!
実施したのは、「まちづくりワークショップ」。 架空の街の地図が各チームに配られます。そこに必要な施設を皆で検討して建てていくというワークショップです。予算内で、どこに、何を建てるかを皆で決めるのです。 さらに、5~6人で構成されたチーム内で子ども達は、くじ引きにより、架空の年代に割り当てられます。 お年寄りにさせられる子もいれば、若者になる子もいます。 |
(クリックで画像拡大) |
子供達はその年代の代表(議員)として、まちづくりを考えていくことが求められるという条件付きです。
このワークショップの狙いは、以下のようなことです。
- 街全体を俯瞰して見るという経験を養う。
自然豊かなエリアもあれば、人口の密集するエリアもある地図を見て、まわりへの影響や効果も考えながら、施設の建設地を考えてもらいます。 - 年代が違えばニーズも異なることに気づいてもらう。
自分とは異なる意見を持つ人々が集まるのが街です。それを、自分が異なる年代を演じる事で、実感してもらいます。 - ニーズが異なる人たちと、どのように合意形成をとるかを意識してもらう。
それぞれの立場に立てば、皆もっともな意見を持つ中、どれが正しく、どれが正しくないかという議論は成り立ちません。その中で合意形成を取ることの難しさを体感してもらう。
盛り上がりました!
結果子供達は、予想以上に真剣に取り組んでくれて、大変盛り上がりました。自分の主張をしつつも、皆のニーズをくみ取るため、活発な意見を交わし、時間が足りないくらいでした。各チームは同じ課題に取り組んでいるのですが、狙い通り、チームによって建てた建物は様々。また、苦労した点も様々となり、とても興味深いワークショップとなりました。
ファシリテーターとして、主に私たちの大学生メンバーが各チームに入りましたが、「子供達の議論を聞いていて、自分もとても勉強になった」と、子供達の視野の広さ、思考の深さに驚いていました。
参加した子供だけでなく、大人にとっても有意義な時間を共有できるワークショップだったと自負しています。
今後は、このワークショップで使った教材を広く公開して、どの学校でも実施できるようにパッケージ化できたらいいなと思っています。
★ど・あっぷに「参加したい」、「ワークショップをやってもらいたい」、「ミーティングを見てみたい」等等、どんなことでも結構です。ご興味がありましたら、是非ご連絡ください。
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(写真・イラスト:NPO法人ど・あっぷ!(DO UP!) / 文:ツッキー(築山 美樹)
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