Skip to content

2012年12月 三ツ池だより 「坂道は光っていた」

by staff on 2012/12/10, 月曜日
Navigation: HOME»コラム»横須賀詢

 銀杏紅葉を背にして坂道を登りながら、今住む場所が芋畑だったことを思いだした。

 12月16日が衆院議員選挙の投開票が行われる。何はともあれ期待せずにはいられない選挙である。結果はその時の空気を表していることに間違いない。気になるのは、どの政策・主張も間違っているわけではない。我慢もしようという我々国民も国難を理解している。しかしながら不安の是正されない苛立ちがある。

 芋畑のことを思い出したのは偶然ではない。その後60年ほどを経ていた。

 大正生まれで女学校を出た母は父親を早く亡くして、父と結婚した。一時は妹弟と母親も一緒に同居していたようにも思われる。そんな母が鍬を持ったのは戦後のことであり、父の実家の近くに疎開してからである。震災で被災した父母はよく眠っている私をおぶって川崎の元木町から横浜の駒岡へ疎開のために歩いた。何も持てずお釜をさかさまにして大事なものを入れて慌てて川崎の家をでたという。父の実家はもちろん、近所は農家がほとんどであった。疎開してしばらくして、そこのお寺の境内に家を建てさせてもらった。目の前の道には小川があった。近所の子供たちは戯れたり泳いだりしていた。「いけません」と母はそこで泳ぐことを私には禁止していた。ある時、裸で皆と水の中にいるところを見つかってしまった。悲しそうな顔をしていた。

 その母は私が中学になると畑の芋を収穫に行くときに決まって私に声を掛けた。畑は実家等から借りての3か所であった。リンゴ箱を自転車の後ろに括り付けた。収穫でいっぱいの自転車は重くてゆらゆらし時々倒れた。鍬を担いだ母は自転車の後ろを歩いてくるのであった。その頃鶏を飼っていた。日本鋼管に勤務していた父は少し体が弱かったこともあって、卵を毎日食べていた。鶏が数羽いて複数卵が取れると一つを残して乾物屋さんに持っていって買ってもらった。時々母に代わって卵を乾物屋にもっていく仕事を手伝わされた。当時は手伝いというより、家のことをするのは当たり前であった。井戸から水をくむこと、風呂に水を入れる時の水汲みのこと、風呂に薪をくべることなど、手伝うことは沢山あった。

 その畑だったところに今住まわせてもらっている。

 出勤前のひと時の、輝くような朝陽に照り返されての木々を背に、坂道を登って家に戻るときに、今と昔を比較してしまったのであった。ここは横浜市鶴見区である。圧倒的に幸せでありながら、今は考えさせられることの多い時代である。

 脱原発は間違っていない。では代替えエネルギーはどのようにするのか。エネルギー消費はどう制御していくのか。廃炉の処理をどうしていくのか。世界的には脱原発での全廃に進んでいない。日本はどのような立場でリードしていくのか。まさか廃炉の処理を他国に任せっぱなしにしようと言うのではあるまい。

 社会保障と税の一体化の議論がある。「高齢者を費用負担の大きい存在と見てしまう現状がおかしくないか」と朝のテレビでのコメントがあった。まさにそのことである。高齢者医療をビジネスチャンスとした風潮が間違っている。ビジネスと考えると大きい方がいい。ビジネスと考えると儲けはどれだけあるかになっていく。大きな資本の投入を必要としていく。これも間違っているわけではない。しかし違和感があり、それが財政破綻への入り口になっていく。高齢者は邪魔者ではない。

 「ビジネスとは人を幸せにするもの」と考えてみることはできないのだろうか。中小企業家同友会での視察でフィンランドを訪問した時「なぜ福祉国家を目指してきたかわかりますか。」こんな質問を逆に受けたのだった。「私たちは高齢者になったときに自宅でゆっくりしたいのです。」そのための負担として高い税を受け入れているのでした。議員は大半が女性であり、ボランテアに近い待遇でした。隣に住んでる人のお世話ができる人が議員になっているといったものでしょうか。

 枯葉を燃やせない。落葉炊きが出来ない。落葉を塵という。

 公園で孫と一緒に花火をしようとしたら「禁止です!」と監視員。

 誰が悪いというのではなく、いつもYESかNOかの判断の求められる生き方でいいのかという思いだ。時にははみだしてみる許容、時には恐れおののいてみる謙虚をどう政治家に求めていくのか。だから選挙を楽しみたい。その結果を楽しみたい。決まったら数年しっかりやってもらいたい。見守る勇気を日本人として持ちたい。いまだからこそ「しっかり日本の未来を見据える」政治家の姿を追い求めたいところだ。

 

Photos

(画像をクリックすると拡大写真が表示されます)

     
     

(文・写真:横須賀 健治)

横須賀 健治プロフィール

メジャーテックツルミ 代表取締役
はかることのプロとして50年です。
食品の放射能測定のアークメジャーを設立しました。
「計量から見える幸せ」をライフワークにしています。

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top