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ビジネスの創造方程式で勝ち抜こう(第8回 最終回)

by staff on 2012/12/10, 月曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.資本金とは?

 前回は収益モデルをクルマに例えて、継続的に走るためには燃料(利益)が必要であることを説明しました。ただし、新規事業やベンチャーではまだ商品が整わず、利益をねん出する以前の状態です。言い換えれば、商品を揃え、顧客に提供できる状態をつくる資本金が必要となります。

 資本金は、
 ①売上の内だけでいつまで事業停止あるいは倒産に至るか
 ②将来の成長性の根源(設備、人員、情報武装)などにどれだけの投資が必要かを基準に算出
といった点で考えてみます。

 ①は、売上がゼロであっても、どのくらい会社の体制が維持できるかといったコスト面で考える方法で、投資家のいうバーンレート(燃焼率)です。具体的には、キャッシュアウトするまで何カ月あるかといった考えで自ずと必要な資金が割り出せます。

 ②は資本を増強して投資を行うことを前提にした、適正な投資額に基づく資本金です。投資に対する使途とそれに対するリターン(成果額)を算出して割り出すものです。

2.資本とガバナンス

 社内の新規事業であれば、資本金に当たるのは、新規の予算と考えることができます。この場合は、事業推進に必要な予算ですから、企業内の統治(ガバナンス)に大きな影響は通常ありません。

 ところが、ベンチャーの起業や事業の大きさによっては資本金を社外から調達する必要がでてきます。つまり、既存事業(起業の場合は既存事業自身が存在しない)を上回った資金が必要となる場合です。

 資金をすべて自分で都合できれば自己資本として統治は問題にはなりません。しかし、起業時には開業に必要な人・モノを集める必要があり、自分以外の他人に資本金を求めることになります。これ以上は、企業経営の話になるので、このコラムの本題から逸れるため、資本とガバナンスが他人資本を考えた場合密接に関係してくるとだけ述べておきます。

3.創造方程式の応用

 さて、8回にわたり、アイデアの出し方や誘発の仕方、アイデアから事業ネタ、さらに事業テーマと展開する方法について解説してきました。

再度、創造方程式を掲げ、ちょっとその応用を見てみましょう。
(1) 異種間融合方程式
 A x B => C
(2) 改善方程式
 A => A’

の二つですが、これを組み合わせていくと、下図のようにも考えることができます。

 つまり。A:「おとな」、B:「オフィス」として
(1)A => A’:「おとな」からイメージできる:「バリバリ仕事をするビジネス・パーソン」
(2)B => B’:逆転発想で「休憩場所」
とすると、使えそうなアイデアとして、
C’:「メリハリをつけるために休憩が必要である」
が導かれます。このような掛け合わせを行うことで、新たなアイデアを拡げていくこともできます。以前にも書いたようにアイデアは質よりも量が重要ですから、このような一見無意味でもアイデアを誘発するネタが浮かび上がってきます。

 また、今回はビジネスに焦点を当てましたが、創造方程式は、発想に限らず、多くのシーンで活躍します。
(1)オプション選択
 何かの決定を行う際に、必要な情報(オプション)を漏れなく考慮したかなどを点検できます。
(2)意見出し
 ブレストで発想の枠を拡げるために、創造方程式でネタを増やしていきます。
 もちろん、読者のみなさん、これ以外に応用してみてください。

4.まとめとフレームワークについて

 これまでは創造方程式を使って発想を拡げることを考えてきました。実は、それ以上に大変なことは、具体的にまとめることです。そのためには、発想を実際の計画や実践に進めるための具体的なまとめ方や枠組み(フレームワーク)が重要であることが分かりますね。
 拡げて、まとめる(絞り込む)ことの両用が次への発想を生むためにも必要です。
 今回のコラムでは拡げる発想に必要な創造方程式について語りましたが、次回機会があれば、絞り込み、まとめ、具体化するフレームワークについてお話し出来ればよいと思っております。

※「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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