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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第13話 お正月の床の飾

by staff on 2013/1/10, 木曜日

 

 今年こそ良い年でありますようにとの願いから、床飾りには色々な思いが込められています。今回は、茶道で必ず飾る柳のお話です。

絵:佐々木彬文画伯
絵:佐々木彬文画伯
 

 お正月の床飾りです。柳の枝を輪にして、ひと結びして飾っているのを、ご覧になられた事が有りますか。この柳を『結び柳』とか『綰柳』(わんりゅう)と呼びます。とても勢いのある美しいものです。ところが、一般の方はあまり目になさらない様です。今回は、この綰柳(わんりゅう)について、結構中身の濃い、知っていて損の無い『お話』です。

 

なぜ柳なのでしょう?

 柳の枝はしなやかで、一年をしなやかに過ごし無事を祈る意味があります。そして、お正月の頃から柳は、新しい芽を息吹きます。生命の再生・誕生などの意味があります。次に、『正月旦 取楊柳枝著戸上 百鬼不入家』。つまり、正月に家の戸口に柳の枝を挿しておけば、百鬼が家に入れないという故事があります。また、柳を龍が昇る姿にたとえ、『登竜門』の願いを重ね合わせています。中国の故事に、友が旅立つ時、名残り惜しく、見送りに来た人と無事を願い「柳の枝を結び合わせることが行われていた」とあります。意味は色々含まれておりますが、現代の床飾りでは華やかでお正月らしく、柳の勢いが見る者を元気にさせてくれます。

 

柳を輪に結んで友との別れを惜しんだ千利休

 柳の枝はしなやかで丸く、結ぶ事が出来る事から、車輪をイメージしていたのでしょう。物事が順番にうまく回転し、無事にたどり着けますように・・・との意味もあったと思います。利休様が、友の旅立ちの時に、茶室にこの故事になぞって床に柳を輪に結び飾ったと伝えられております。利休様が茶室に柳を飾った最初の方のようです。

 

万葉歌や和歌の中での柳

 万葉集の中にこのような歌があります。『霜枯れの冬の柳は見る人の縵にすべく萌にけるかも』(注1)とあります。「縵(かづら)」とは柳を輪に結んだ姿を云い「綰柳」の意です。

 
 

 大伴家持の歌に『青柳のほつ枝捩ぢ取り縵くは 君がやどにし千年寿くとそ』と「彼女の家が千代に栄えることを祈る」と歌っています。この方、下級官僚で地方転勤が多く、暇なのかあちらこちらで恋の歌を読んでいます。

注1) 霜で枯れた冬の柳は、見る人の髪飾りになるくらいに芽がでています

 

『万能綰一心』

最後に、小生の好きな言葉で世阿弥元清(注2)が『花鏡』の中の述べている言葉がございます。『万能綰一心』(ばんのういっしんにつなぐ)(注3)この言葉にも『綰』の字が使われています。

注2) 世阿弥元清:世阿弥(ぜあみ、世阿彌陀佛、正平18年/貞治2年(1363年?) ~嘉吉3年8月8日(1443年9月1日?)は室町時代初期の大和猿楽結崎座の猿楽師。 父の観阿弥とともに猿楽(現在の能)を大成し、多くの書を残す。『花鏡』は能芸論書である。観阿弥、世阿弥の能は現代の観世流として受け継がれている。

注3) 万能綰一心(ばんのういっしんにつなぐ)。見物人の批評に「演技しないところが面白い」などと言うのがある。これは仕手が秘事としている内心の工夫によるものである。つまり演技と演技の「間」のことである。この間がどうして面白いのかと言うと、それは油断なく張りめぐらした心の働きの力である。舞を舞い納めた時の間、謡をやめた時の間、その他言葉、物真似全ての演技と演技の間、つまり心の緊張感を緩めず演技を繋いで行くその心の奥の心の働きである。この内心の緊張感が外に匂い出て面白いのである。ただ内側の心が外に見えるようではいけない。それではまるで操り人形の繰り糸が見えるようなものだ。無我の境地で自分でも自分の心を意識しないほどの深い心の働きで演技と演技の間を繋ぐべきである。これを『万能を一心に綰ぐ』と言うのだ。この心掛けは能を演じている時だけでなく、常住坐臥、立ち居振舞いの全てを通じて生かされなければいけない。そういう努力をしていれば能は上達する一方であろう(webから引用)

 

お正月飾りの『お炭』

 そして、茶道でとても大切で無くては成らない物があります。それは『炭』です。炭もお正月は大切な飾りです。飾りというより「奉る」と言ったほうが正しいと思います。

 炭は、管炭三本を半紙で巻き、紅白の水引で結い、丸い三方にのせて床に奉ります。神楽鈴を奉る先生も居られます。『神楽鈴』は、四角い三方にのせて床に奉ります。

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昔より伝わってきたものを次世代につないでいくこと

 宜しければ、このような床を飾っている空間で少しの時間を楽しんで下さい。心の奥の方からホッとしたような寛ぎの感覚が湧いてくると思います。

 もっとも「日本文化」と改めていうのもあまり好きでは無いのですが、昔より伝わってきたものを忘れないでつないで(綰)いって下さい。私たちの代で途切れてしまわないように。

 

佐々木彬文画伯と茶懐石料理を作りませんか?

 日本画家であり茶道講師である佐々木先生と茶懐石料理を1~3品作り、楽しくおしゃべりをしながらいただきます。会話の中から「日本文化」の良さに気づいていく教室です。女性の参加者が多い教室ですが、男性も大歓迎です。

(お問合せ/お申込み:http://www.ikiiki-club.jp/


 
 

2012年11月は『蛤寿司』でした。
入手が困難になりつつある「蛤」を通して環境問題も考えました。

 

佐々木彬文プロフィール

 日本画家(彬文会主宰)
 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
 クラッシックギター演奏者

文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/写真・構成:高野慈子

 

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