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ビジネスのフレームワーク入門(第3回)

by staff on 2013/3/10, 日曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.基本のフレームワークMECEを学ぼう

 前回 、フレームワークが意外に身近なところで使われていることに気付かれたと思います。モレやダブリのない枠組み(フレームワーク)を作る基本となるMECEについて紹介していきましょう。MECEに慣れることで他のフレームワークについても理解しやすくなると思います。

MECE (ミッシー) とは

 米コンサルタント会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが1980年代に作ったと言われるフレームワークで、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive (相互に排他的な項目」による「完全な全体集合」, Wikipediaより)の略とされています。今回、この名称がどうであれ、意味するところは、重複なく・漏れなくという点が重要なのです。

 読者も筆者もMECEを使うのは全体を把握したいときです。抜けや死角などのモレを排除し、全体像をシンプルに見て、無駄や混乱を避けるためにダブリも外すことです。

 米国のコンサルタント会社がMECEを作りだしたのも顧客のニーズが疑問に対して、モレなく、しかもシンプルにダブらずに要望に応えるためと考えられます。

対立軸の発見と例外の発見

 MECEの基本は、対立軸の発見と例外の発見です。

 対立軸の発見とは、『内側」と『外側』や『プラス』と『マイナス』のように対極や正反対のように、対立する軸を見出すことです。

 さらに、この考えを拡げると、例えば、これまで日本国内で販売していた商品を日本国外、つまり海外で売ればどうなるかといった具合です。お気付きかも知れませんが、良く考えると、対立軸でなくても、○○ と ○○ 以外という2つの集合に考えることでも、MECEであることを満たしています。国内市場に対して、国内以外=海外市場というわけです。

 信号機の色のように赤色、青色、黄色で、危険、注意、安全にようにリスクの段階を表わすとしても、これ以外の状態が存在しなければ、3項目でもMECEです。すなわち、モレがないことです。

 ただ、現状のリスクがどれかといったような判断では、危険、注意、安全の判定に危険度のような尺度が必要かもしれません。

 次に例外の発見です。つまり、1つの軸を考え、 ○○ と ○○ 以外とするのは単純なことですが、 ○○ 以外に例外は無いかという確認が重要です。例えば、「動物」と「植物」とすれば、生命をMECEに分かたように見えます。しかし、近年の研究では、動物と植物の両方の性質を持った生物も多く発見されていることから、MECEとなっていないことが分かります。さらに、動物と動物以外が、MECEかどうかを考えると、動物と植物の両方の性質を持った生物はやはり、動物の枠か動物以外の枠かは判定がつかない事になります。動物、植物、動物と植物の両方の性質を持った生物の3つに分けねばMECEではありません。

 対立軸が正反対や対極であれば、モレやダブリについては心配なく、明確に対象としていることがどちらに分類されます。ただし、この時に注意しなければならないのは、分類するのが目的ではなく、この対立軸を含めた、広くて浅く、周囲を探索する考え方(思考)が重要なのです。そこでの気付きが多くのアイデアや示唆を生むところだからです。

2.ビジネス戦略の弱点をMECEで探索する

 MECEを使ってビジネス戦略の弱点を考えてみましょう。

 MECEの応用のフレームワークとして、ビジネスでは4Pと呼ばれる分析があります。4Pは、Product(商品:顧客価値)・Price(価格:顧客コスト)・Promotion(広告宣伝:販売促進)・Place(販売する場所:流通)の頭文字をとったものです。

 それでは、4Pで単純な考え方として、以下のようなMECEを考えてみましょう。対立軸の中身は以下の表中の項目以外にも設定できますが、説明上、仮に以下の項目としておきましょう。

 では、あなたが新商品の企画をしているとして、4Pがどこに分類するかを検討してみましょう。

 明らかに組合せ的には16通りの4Pが考えられます。言い換えれば、その商品が売れて儲かるかは別として16個の企画が成り立つことになります。例えば、商品企画Aでは、単純機能の製品で、低価格、大きな宣伝もしないが、全国で販売といった内容です。

 そこで、企画Aを考え、上司にこれを認めてもらい、説得することを考えます。上司は、企画のヌケやダブリであるビジネスの弱点を突いてくるかも知れません。これについても予め検討しなくてはなりませんね。

 そこで、MECEを応用してみましょう。商品企画Aの選択以外をあえて選ばない理由あるいは選べない理由を考えてみることです。4Pの一つ一つを取り上げてみましょう。

(1)単純機能であって多機能な商品を選ばない/選べない理由
(2)高価格でなく低価格を設定する理由
(3)大々的な広告宣伝を行わない理由
(4)地域限定などでなく、あまねく全国で販売する理由

 いかがでしょう?(1)では、想定する市場やお客さまにとってメリットがあることが、単純機能で実現できることが説明できれば、企画としては納得できるかもしれません。(2)~(4)ではどうでしょう?

 このように、4Pを1つの商品投入の尺度として設定し、それぞれをMECEで考えると、ヌケやダブリを防ぐだけでなく、検討による気付きや説得材料などを発見することができるのです。

 皆さんもMECEを活用して、全体を眺め、そこでの気付きを見出すことで、発想を整理、発展させてみてください。

※発想や創造に関する「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

次回は、「応用のフレームワーク(1):マトリクスを学ぼう」で、商品戦略を考えてみましょう。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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