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ビジネスのフレームワーク入門(第4回)

by staff on 2013/4/10, 水曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.応用のフレームワークであるマトリクスを学ぼう

 たくさんの応用が考えられる MECEを前回紹介 しましたが、今回はさらに、ビジネスで応用されるフレームワークを幾つか紹介しましょう。

マトリクス型のフレームワーク

 マトリクスとは、簡単に言えば、2つの異なった切り口を2次元で示したものです。もちろん、2つ以上の切り口を考えて、もっと次元を増やすこともできますが、フレームワークを考える上で、シンプルで使い勝手を考えると2次元のものが多用されています。

 2次元のマトリクスとは、イメージ的に行と列からなる表ですね。さて、マトリクス型で良く使われるフレームワークを紹介しましょう。

応用事例:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)のフレームワークは投資を行う際の戦略を考える場合に使われます。つまり、具体的にどの事業に投資をすべきであるかを検討する場合です。それによって商品戦略も変えていくことになります。

 PPMはMECEとは異なって、検討する切り口にダブリはありませんが、事業を分類する際に、対象となる商材をダブって入れることも許します。

 マトリクスとなる切り口は、市場の成長率の高低と相対的なマーケットシェア(=業界の地位)の大小です。つまり、

  1. 市場成長率「高く」×相対的なマーケットシェア「小さい」:問題児
  2. 市場成長率「高く」×相対的なマーケットシェア「大きい」:花形
  3. 市場成長率「低く」×相対的なマーケットシェア「大きい」:金のなる木
  4. 市場成長率「低く」×相対的なマーケットシェア「小さい」:負け犬

において事業の状態をこれら4つの状態に分類します。これは、コンサルティング会社のボストンコンサルティンググループが投資の意思決定を行うフレームワークとして開発したもので、(1)から(4)に上記のようなニックネーム?を付けています。目安として、市場成長率は、米国で10%、日本では米国よりも市場成長率が低いため5%をとります。相対的なマーケットシェアは、業界1位が最も左側、業界2位以下は右側におき、業界1位は業界2位の売り上げを1として何倍かを計算します。

 さて、自社の事業を上図のマトリクスに分類してみましょう。

 PPMのフレームワークの便利さは、分析がこの分類のどこに事業が入るかで自動的にその特徴が分かることです。言い換えれば事業の現状把握を行うにはもってこいのフレームワークです。それぞれの特徴を述べると、

  1. 市場成長率「高く」×相対的なマーケットシェア「小さい」:問題児:売上が少ないのにお金がかかりすぎる
  2. 市場成長率「高く」×相対的なマーケットシェア「大きい」:花形:成長のために先行投資が莫大なので利益は低迷する
  3. 市場成長率「低く」×相対的なマーケットシェア「大きい」:金のなる木:花形から成長率が減り、先行投資が小さくなる
  4. 市場成長率「低く」×相対的なマーケットシェア「小さい」:負け犬:ほぼ勝敗が決した状態である

となります。以上から、問題児が花形になるには思い切った先行投資が必要ですが、挽回のチャンスはあるとも言えます。一方、負け犬は、成長率が低いため挽回が極めて困難といえます。従って、投資すべきは、金のなる木と問題児の事業と商材となります。

2.フレームワークの利点と欠点

 PPMのフレームワークと同様に、マトリクス型のフレームワークとして米ゼネラル・エレクトリック(GE)が長年使ってきた事業への投資判断をより精緻に判断するフレームワークあります。実は、GEのフレームワークは2つあります。PPMのフレームワークでつかったマトリクス型とMECEの2つのフレームワークです。GEでは、この2つを段階的に使った、いわば2段構えのフレームワークです。

  • 1段目:事業の成長を考えるMECEのフレームワーク
  • 2段目:業界の魅力度×自社の強さのマトリクス型フレームワーク

を使います。

1段目:「再建」、「売却」、「撤退」を選択します。

 これは事業を抜本的に見直すためのフレームワークで択一です。

 「再建」なら、業界一位を目指して取り組むことで黒字化は当然と考えるもので、業界一位になれないなら、「売却」か「撤退」を選びます。売却の対象となる事業は、黒字の事業にも適用します。収益が上がっていても業界一位になれないなら、シビアですが、高く売れる今こそ、売却するというものです。撤退は赤字の事業の場合で赤字のたれ流しを早期に食い止めるために事業撤退を決めるものです。

2段目:「業界の魅力度」×「自社の強さ」をそれぞれ大中小の3分類して9個の領域に分類します。

 これは現状の事業の状態を9つの状態に分析することになります。例えば、事業の魅力度が大で、自社の強さも大であれば、「再建」を前提として優位死守を決定するのです。反対に業界の魅力度が小さく、自社の強さも小さいならば、売却か撤退を考えます。

 実際、この2つのフレームワークは、CEOとして著名なジャック・ウェルチ氏が、事業の日本でのテレビ事業を撤退する際に利用したと言われています。

 ここで注意事項として、PPMでもGEのフレームワークでも、分類によって分析される事柄が自動的であることから、その判定を分析の結果から見てしまうことで失敗することです。つまり、負け犬として分類されないように、成長率の判断のパーセンテージを甘く見たり、マーケットシェアも事業ではなく、一部の商材の優位性をもってきたりするといったことです。あくまでも客観的な分析を行うことが前提です。

 次に注意が必要なことは、判断がどちらにもならない中間的な位置付けになった時の取り扱いです。例えば、相対的なマーケットシェアが3位であるというのは、これからの傾向として上昇なのか下降なのかといった予想も必要です。その傾向によって判断しなければなりません。

 さて、皆さんも今回のマトリクス型フレームワークを活用して、自社の事業を整理してみてください。次回は、手順や変化と言った時間的な経過を含むフレームワークについて解説します。

※発想や創造に関する「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

次回は、「応用のフレームワーク(2):時間的な経過」で、マーケティング戦略を考えてみましょう。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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