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ビジネスのフレームワーク入門(第5回)

by staff on 2013/5/10, 金曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.時間・経過を意識したフレームワークとは

 応用のフレームワークとしてマトリックス型を 前回 紹介しましたが、今回は、時間や経過を意識したフレームワークを考えてみましょう。

手順やプロセスを考えるフレームワーク

 手順は、経験的あるいは論理的な目標達成の枠組み(フレームワーク)を示します。言い換えれば、フレームワークの中で考えると、抜けや無駄を排除することが期待できます。

 今回はビジネスで役立つマーケティングのフレームワークを例に活用を考えてみましょう。

 ここでいうマーケティングとは、販売でいう売り込み方や方法ではなく、顧客のニーズ(需要)を読み取り、ニーズにあった製品やサービスを提供することを指します。つまり、販売が売り手中心の概念であるとすると、マーケティングは、買い手の心理を読んだ概念と考えましょう。

 マーケティングのフレームワークとしてよく使われるものに、

  • R:リサーチ(対象の市場調査):現状分析や情報収集を行う。内部外部の環境分析。
  • STP:セグメンテーション(購買傾向のまとまりの把握)・ターゲティング(重点市場の絞り込み)・ポジショニング(差別化による自社の位置付け)で「お客様」を定義する。
  • MM:マーケティング・ミックスで売れる仕込みを通常4つのP(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)を組み合わせて想定する。

といった手順があります。ここで重要なのは、R>STP>MMといった順序です。順序がおかしいと、売れる需要があっても商品やサービスに結びつかないことになります。例えば、商品ありきで、R(市場調査)をしっかりと行わないで進めると、押し付けの販売戦略を立てることになり、継続的な目標達成ができない結果となるかもしれません。ここでは、このマーケティングのフレームワークの内容について詳細は追いませんが、重要なことは時間的あるいは段階的な順序が重要なフレームワークであることを理解してください。

経験的な流れによるフレームワーク:市場価値の分析

 同じマーケティングでの応用として、市場に対する価値観をフレームワークで分析するものがあります。ここで紹介する内容は、手順のように予め設定された段階ではなく、経験的な流れになっている点で上述とは異なります。

 企業が市場に対する価値観として、

  • プロダクトアウト(企業が自社の販売・製造計画に基づいて、市場に製品やサービスを投入):供給不足の時代の主流な価値観
  • マーケットイン(生活者の需要を汲み上げて、それを形にすることで市場に出すこと):顧客のニーズを重視する時代の主流な価値観
  • カスタマーイン(顧客一人一人が望む商品やサービス内容に沿ったものを提供すること):顧客のニーズをジャンストインタイムで提供する時代の価値観

という流れです。歴史的に多くの産業は、この流れに沿って発展をたどってきました。このフレームワークでは、明らかに進化や展開の過程を示しており、自社の現状分析を考える上で、戦術というよりは、大局的な戦略を考える上で重要です。この流れに逆らって、いつまでもプロダクトアウトだけの一辺倒では、何れ立ち行かなくなることがわかります。

 マーケティングに関するフレームワークは、バリューチェーン分析など、商品と対価の流れから自社の価値をどこで発揮するかなどという、同時に起こる現象にも適用することがあります。詳しくは、拙著の コラム をみてください。

2.循環型のフレームワーク

 時間的あるいは段階的なフレームワークのさらに応用として、循環型とも言えるフレームワークがあります。1つの輪ができるフレームワークで、始点と終点が定まらないものとも言えます。

商品のライフサイクル

 商品が生まれて消えて行くまでのプロセスです。一商品に限ってみると循環型のフレームワークではないですが、商品に系列がある場合やシリーズ化を考えると、循環型になります。

 フレームワークとしては、「導入期」、「成長期」、「成熟期」、「衰退期」に分けて考えることができます。

  • 「導入期」:新製品を投入した段階で、市場の認知度は低く、売上もわずかです。投資した開発費なども未回収で利益はマイナスです。
  • 「成長期」:売上が急成長する段階。市場から高い評価を得れば、成長期に入り、利益はピークになります。
  • 「成熟期」:売上に陰りが見えてくる段階。他社も魅力的な市場だと気付き、後発の参入が増え、激しい価格競争が起こり始めます。利益は徐々に低下します。
  • 「衰退期」:売上と利益が急激に激減します。撤退なども視野にいれる段階です。

 このフレームワークの分析は企業が新製品を出すこと、つまり、導入期と成長期の商品を継続的に出さないと生き残れないことを示しています。自社の商品の位置付けを念頭にいれ、市場の需要とのギャップを埋めるべく、新製品を投入しなければならないのです。

 さらに、このフレームワークは、ある意味で自社の商品を俯瞰する分析であり、打ち手を考えるポートフォリオ戦略としても応用できます。成長期にある商品での利益をうまく、導入期の別の商品に流し込み、企業全体として勝ち残るといった戦略です。成長期を長く維持することも経営手腕が問われるところです。

※発想や創造に関する「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

次回は、「フレームワークを用いた分析法」でフレームワークの実際の応用について考えてみましょう。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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