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絵本から笑本へ(第72回) 絵本作家のしゃべりたい絵本。
~初めての絵本づくりに参考になる絵本3冊~

by staff on 2022/11/10, 木曜日

絵本作家 保科琢音の連載コラム「絵本から笑本へ」

第5期では「絵本作家のしゃべりたい絵本。」というテーマで、
絵本作家らしく絵本についておしゃべりしています。

公共図書館に約十年間勤め、
絵本作家になる前に日本一絵本を読んできた、
絵本にも絵本作家にも詳しい、
そんな絵本作家 保科琢音の
新しい絵本の楽しみ方、絵本の読み方をご紹介していきます。

第5期2回目のテーマは…
「初めての絵本づくりに参考になる絵本3冊」

ぼくは現在、出版社社長として
新人絵本作家さんの育成にもチカラを入れています。

世の中に絵本をつくりたい人、絵本作家になりたい人は
本当にたくさんいるんだと日々感じています。

という訳で今回は、

「絵本をつくる前にまずはこの絵本を読んでみたら」って絵本を
3冊ご紹介します。

1冊目「ノンタンぶらんこのせて」

作・キヨノ サチコ
偕成社・1976年

こちらの絵本もいわずと知れた有名絵本シリーズ。シリーズ作品としては40巻が出版されています。

ぼくはこのノンタンシリーズは絵本をつくるうえでの完璧な教科書だと思っています。
「絵本はどうあるべきか」だなんて考えをする必要はありませんが、「絵本の見やすさ・絵本の伝えわりやすさ」を考えておく必要は絶対にある。
そのうえで、シンプルでありながらシッカリと細部まで考え抜かれたこのノンタンシリーズは素晴らしお手本のような絵本だと思います。だからこそたくさんのシリーズ作品が出版され、長年愛され続けているのでしょうね。

この絵本の凄いところは、言わずもがなキヨノサチコさん(享年60歳)のえがく「ノンタン」というキャラクターです。名前・フォルム・性格や言葉づかいまで、絵本のキャラクターとして「アンパンマン」に並ぶ最高傑作だとぼくは思っています。
ノンタンたちの後ろでずっと飛んでいるハチがいたり、物語の進む奥で繰り広げられる別の物語も可愛くて面白い。絵本に隠された「ナニカ」を発見するたびに、いつの時代の子ども達も楽しい気持ちにしてくれるそんな絵本です。

2冊目「ちいさいおうち」

作・バージニア・リー・バートン
訳・石井 桃子
※原作初版1942年

アメリカで初めて出版されたのが1942年というまさに長年愛され続けている大ベストセラー絵本。この表紙は見覚えあるなんてひとも多いんじゃないでしょうか。

長い間世界各国で愛されている絵本だけあってこの絵本の凄いところはたくさんあるのですが…「はじめての絵本づくりの参考になるところ」とすれば、一番は構図の考え方ですね。
この絵本は時の流れ、時代の移り変わり、社会の歴史をテーマにしている絵本です。
絵の中央にえがかれた「ちいさいおうち」はずっと変わらず、周りの背景がどんどん様変わっていく。いわば定点カメラの構図なんですね。色々なアングルで構図が変わるのが絵本の面白さのひとつかもしれませんが、この絵本はそうではない。構図だけでいえばずっと「変わらない」。でもページをめくるたびにどんどん「変わっていく」。構図の面白さを教えてくれる絵本でもあります。

バージニア・リー・バートンさん(享年59歳)が何十年も前につくってくれた「変わらないけれど変わっていく絵本」を是非、読んで見て欲しいですね。

3冊目「1、2、3 どうぶつえんへ」

作・エリック・カール
※原作初版1968年

「はらぺこあおむし」でも有名な世界的絵本作家エリック・カールさん(享年91歳)が初めてつくった絵本。

この絵本から学べることは「色づかい」です。色の魔術師なんて言われることもあるエリック・カールさん。独自の技法で色紙をつくり、紙をコラージュして絵をつくっています。
どんな絵を見ても一瞬でエリック・カールさんの絵だと解ることから一見すると独特な色づかいをしている様にも思われがちですが…実は、エリック・カールさんは突拍子もない色づかいはしていません。キャラクターや物にちゃんと合った色を使っています。それは、子ども達が見たときに色と形で解りやすい様にを考えているのだと思います。

ひとと違った絵をかきたいという想いから、独特な色を使って絵をかくこともあるかもしれませんが、やはり伝わらなかったら意味がない。
生涯子ども達に向けて絵をかき続け、絵の楽しさ、素晴らしさを伝えてきたエリック・カールさんだからこそ行きついた「他のひととは違う当たり前の色づかい」の世界を、絵本を通して今一度体感してみるのも面白いかもしれませんよ。

さあ、いかがだったでしょうか?

今回は…「キャラクター」・「構図」・「色づかい」という
3つの視点から絵本を選んでみました。

自分らしい絵本をつくるには、
世の中にあるたくさんの絵本を読むことが一番の近道だと
ぼくは考えています。

たくさんの絵本を読んで
たくさんの絵本をつくって
あなたもあなただけの絵本をつくれる日がくると良いですね。

今回のテーマ「絵本作家になりたいなら読んでおくべき絵本3冊」も
絵本作家 保科琢音のYouTubeチャンネル『笑える絵本ダナ』にて
同じテーマで動画公開しています。

第5期「絵本作家がしゃべりたい絵本。」は、
YouTubeとの連動していくカタチの連載コラムになっています。

コラムでは書ききれない部分を動画で。
動画でしゃべりきれない部分をコラムで。

コラムとYouTubeの新しい試みを是非、楽しんでもらえると嬉しいです。

絵本作家 保科琢音チャンネル『笑える絵本ダナ』
初めての絵本づくりに参考になる【絵本3冊】

絵本作家 保科琢音 チャンネル『笑える絵本ダナ』

https://www.youtube.com/channel/……

<ラフコネクトホームページ>

https://www.laughcnt.com/

<ラフコネクトYouTubeチャンネル>

https://www.youtube.com/channel/…

(文・イラスト:保科琢音

筆者紹介

【保科琢音】
1983年生まれ。br />
神奈川県横浜市在住br />
2013年 絵本「あっかんべー」出版br />
2019年 絵本「ままも」出版br />
2019年 ベトナムにて絵本「ままも」・「よぞらのおくち」同時出版br />
2020年 絵本「ちーちゃんのおなかのあな」出版br />
2020年 ベトナムにて絵本「ねてばかりいるカバ」出版br />
2022年 絵本「よぞらのおくち」・「たまちゃん」同時出版
 
公立図書館に10年間勤めた後、絵本作家・紙芝居作家として本格的に活動を始める。 絵本や紙芝居の創作だけでなく「読絵ん会(どくえんかい)」という名の読み笑わせ口演を精力的に行っている。 幼稚園、保育園、小学校、図書館、美術館、科学館、寺院、子ども病院、療育施設、障害者施設等… 口演場所はこれまでに600カ所以上。 他にも、子育て支援施設業務委託。障害児施設美術プログラム講師。コラム執筆等。 活動は多岐に渡る。また、絵書家筆之輔(えかきやふでのすけ)の芸名で落語家としても活動。
 
2021年 出版社「ラフコネクト」設立 取締役社長に就任

ヨコハマNOW取材記事
「僕にとっての横浜は「未来へ笑がおをつなぐ街」。絵本作家の保科琢音さん」
https://yokohama-now.jp/home/?p=13904

『読絵ん会(どくえんかい)』の様子を動画でご覧下さい。

 

 

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