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ヨコハマ・ディスコグラフィティー 第57回 第7章 独立編 10

by staff on 2017/3/10, 金曜日


 
 

 

HEART&SOUL代表 原 正行

1958(昭和33)年9月7日横浜生まれ、12歳よりギターをはじめ17歳からミュージシャンとして活動。39歳の時に念願だったライブハウスを開業、現在は関内駅北口駅前に60年代から80年代の洋楽ヒット曲を演奏するライブハウス、ハート&ソウルの経営者。他にもミュージシャンとして演奏活動、作曲、プロデュース等、幅広く活動している。

 

 

横浜、街と風(独立編) 10

新チーフ

セクハラ事件後、新しいチーフにT君が決まりました。T君は30才位でしたが色んな料理を学んでいて天才的なヒラメキを持っていました。いつも関心していたのは、お客様が今何卓に何人いて何を注文して何が出たか常に把握しているのです。満員になれば50人近くなる時でも順番にコンピューターの様に順番を考えお客様を待たせないよう、怒らせないよう気を配っていました。クレームの数は格段に減りました。又、新メニューの味はいつも斬新で鮮烈なインパクトを持っていました。時に味が強すぎる時もありましたがそれを越えるくらいの良さがありました。気性は荒くちょっと難しい性格で色々問題もありましたが約5年ほど勤め上げてくれました。

苦情

同じビルの2階に移って最大の問題にぶつかりました。移るまで全く気がつかない盲点でした。移転先2階の上、つまり3階から演奏の音がうるさい! とクレームが来たのです。上は有名な高級クラブで最初は電話でしたが、その内階段で降りてきて文句を言いに来るようになりました。仕方が無いので音を下げますがそれでもまだうるさいと来ます。どれだけうるさいのか直接営業中に聞かせてもらいに行きました。驚いたのは信じられないくらい静かな店内で営業していてBGMは鳴っているのか分からない程で、ピアノも響かないように工夫がされていて、更に超やんわり弾いています。これでは下げても聞こえます。特にベースの音が柱を伝って振動で響くようなのです。

以前に書いたベース7人衆はとびっきりのプロ集団です。ただでさえ生ドラムでなくコンピューター相手にやってもらってる彼らに頭を下げまるで鳴っていないが如くのボリュームに落としてもらいます。彼らはありがたい事に文句も言わず我慢してくれました。

12時に上のクラブが閉まると、それっとばかりにボリュームを上げガンガンやりました。この頃はまだ深夜の時間帯の方が忙しかったので助かりましたが早い時間だけではやっていけません。防音の工事をしようと思いお客で来ていたゼネコンのお偉方に相談して見積もりをとってもらったりしましたが、この規模でも1千万以上は掛かるとの事。他にも色々考えましたが結局天井と防音材を詰めて音を下げる位しか手はありませんでした。

この後も苦情は続き、その度頭を下げ音を下げましたがそれでも来るのです。これは結局この次に移転する4年後まで続きました。

更にアクシデント、地獄に仏

上からの苦情で苦しんでいたら、今度は下のお寿司屋さんから水が漏れていると電話があり真っ青になりました。行ってみると天井からぼたぼた水が滴り客席に落ちています。そんなに凄い量ではないのですがこれでは座敷は使えません。翌日調べてみるとやはりウチの店のカウンターの下の配管が傷んでいて下に流れていっていました。流しと床を補修をしてもらいましたが、下のお店も補修工事が必要とのことで天井と床を工事しました。上と下の店舗補修工事代、その間営業できなかった下の店の営業補償、悪いのは一方的にこちらなのでいくらふっかけられるか解りません。更にうちの店もカウンターの床を全部剥がしたので何日か営業できなかったのでそれも痛手でした。もう踏んだり蹴ったりで、工事が終わってもお金のことを考えると夜も寝られませんでした。

しかし救いの神があったのです。下のお店はチェーン店で大きな会社組織だったのですが、その偉い方がウチの店の演奏を気に入ってしばしば来店されていたのです。名刺交換をしていたので直接そちらにコンタクトを取り、今回の件について直接お詫びを申し上げました。すると会社に働きかけてくださったのか、営業補償は温情ある金額で抑えてくださいました。正に地獄に仏です。それでもかなりの金額がかかりました。この方を含めこの時救いの手を差し伸べていただいた方々には今でも心から感謝をしています。

 

ここからは原の音楽夜話 - 原の勝手な視点で様々な音楽を語ります。
ソロボーカル(ブラック女性編4)
ダイアナロス(ソロ)

70年代のダイアナ

1970年スプリームス解散後、ダイアナはソロシンガーに転向。残りのメンバーは違うメンバーをいれてスプリームスとして活動します。ビートルズ解散と同じ時期ですね。ソロになってもモータウンのドル箱スターとして活躍。まずはマービンゲイとタミーテレルで大ヒットした「エイントノーマウンテンハイイナフ」をスローなアレンジに変え語りを入れたバージョンでNo.1ヒットさせます。

その後モータウンがハリウッドに進出。人気絶頂だったダイアナを女優としても成功させようとバックアップします。 ’71年伝説のジャズシンガー “ビリーホリディ” の伝記映画「ビリーホリディ物語/奇妙な果実」に主演し、まずまずの評価を得ます。私も2度ほど見ましたが、差別や恋に翻弄され酒や薬物に溺れていくビリーを演じるのはかなり大変だったと思いますが、私なりにとても良い演技だったと記憶しています。ゴールデングローブ新人賞を受賞しました。またこのサントラはビリーホリディの作品をカバーしたもの。賛否はありますがわたし的には大好きな作品です。ビリーホリディの作品は本物でジャズファンから絶対の評価を受けていて、私も素晴らしいと思いますが、何度も聞くには重すぎます。ダイアナのはとても聴きやすい仕上がりでスイングにもとても乗る声だとわかります。サントラのアルバムは200万枚売れたそうです。シングルではなくアルバムですよ、すごいですね。

その後 ’75年は映画「マホガニー物語」で主演。この当時はアフリカ系米国人を中心にしたブラックの映画が流行り、興行収入は成功したようですが、批評家からの評価は低かったようで、私これは見ていないのですが、今はあまりお眼にかかれないようです。しかし主題歌は絶品、No.1になり日本でもコーヒーの宣伝に使われたり現在でも歌い継がれています。

’77年、ブロードウェーのミュージカルで黒人だけの出演者による「オズの魔法使い」のリメイクが大ヒット。これを映画にする権利をモータウンが獲得、当初は主演はミュージカルの女優がやるはずでしたがダイアナが、自分がやりたいと希望し主演に抜擢されます。しかし映画は当時最高の制作費をかけたにも関わらず不評で興行成績は振るわずモータウンとユニバーサルは2040万ドルの損失。これを機にブラックを中心としたハリウッド作品は下火になっていったようです。ダイアナもこれを最後に映画主演はなくなりました。

しかし私はVHSビデオでこの映画見ましたが中々面白かったと記憶しています。特にカカシ役のマイケルと踊るシーンのダンスは印象的でした。

’70年代のダイアナロスのヒット曲は丁度私の中学高校の青春時代。深夜放送でかかっていた彼女の声に好きだった女性の面影がオーバーラップしました。「タッチミーインザモーニング」 「わかれ」 「グッドモーニングハートエイク」 「マホガニー」。今聴いても名曲です。そしてわたし的にはデュエット作品としてこれ以上の最高傑作はありえないマービン・ゲイとのデュエットアルバム「ダイアナ&マービン」! 声質はマービンとタミーテレルの方が合ってるかなとも思いますが、タミーは若かったし声が可愛い感じです。一方「ダイアナ&マービン」は成熟した男女の極上のデュエット! 黒人音楽の要であるセクシーさの極致です。曲もスタイリスティックスのカバーや名曲ぞろいでアルバム1枚全くムダがありません。

’80年代以降

’80年代に入るとシックのナイル・ロジャーズと組んだ「アップサイドダウン」がヒット! これ以降80年代のディスコブームに乗っかりいくつかのヒットを出していきます。’81年にはライオネルリッチーとのデュエット「エンドレス・ラブ」が大ヒット。そして個人的に忘れられないのが84年に亡くなったマービンゲイに捧げた「ミッシングユー」!印象的なビデオが秀逸で、又ダイアナの切ない声が耳に残っています。その後はあまり目立ったヒットはなくなっていきますが’85年にはUSAフォー・アフリカに参加しウィアーザワールドのサビを歌っていました。

その後 ’90年に映画の主題歌だった「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」がそこそこのヒットを記録しますが、日本ではテレビドラマ「想い出にかわるまで」の主題歌やCMに使われ当時の洋楽では異例の大ヒットになり、度々来日してコンサートやディナーショーをこなしていました。この曲いまではスタンダードと化し当店でも若いシンガーが歌っています。

スプリームスで12曲、ソロで6曲、計18曲のナンバーワンヒットを持つダイアナロス。1993年には70曲のシングルヒットがあることでギネス世界記録にも認定されています。いま活躍するシンガーたちにも影響を受けていない黒人女性シンガーなんていないんじゃないでしょうか!

19年ぶりの来日

先日は19年ぶりの日本公演に行ってきました。70歳を超えていましたが声は全然衰えていません。少しハスキーでハリのある高音も色っぽいささやき系の声も健在でした。二日間だけ武道館のみの公演で、特別VIP席は5万円! 即完売だったそうです。私が行った初日は、私の後方2階席最前列に安倍総理が婦人と来てました。近い世代ですから思い入れがあるのでしょう! ダイアナは相変わらずのキンキラキンの真っ赤なドレスに身を包み、「アイムカミングアップ」で登場! 曲はこれでもかというくらいのヒット曲オンパレード! 何度泣きそうになったことか、、、心洗われた素晴らしいライブでした。残念だったのはアンコールで歌った「イフ・ウィ・ホールド・オン・トゥゲザー」を最初のワンフレーズだけ歌い後は客席に歌わせようとしたことです。みんな歌詞など分かるはずもなくタイトルの歌詞の所と歌詞を覚えているわずかの人の声が微かに響くだけでした。途中から自分で歌うのかなと思っていましたが最後まで歌わずそのまま終演、、、残念!!

個人的見解

ダイアナロスで不思議だと思う、あくまでも個人的な見解を一つ。それはマイケルジャクソンとの関係です。ジャクソン5はダイアナロスが発掘したと言われていましたが、それはモータウンの戦略だったと後に分かります。しかし幼かったジャクソン兄弟は、デビューの為故郷から出てきて、兄弟を二手に分けられて預けられマイケルジャクソンは、ダイアナの自宅で数年を過ごしました。マイケルにとっては母親替わりで相当慕っていたようです。実際彼の唱法にダイアナの影響が濃く見られますし、声も似て聞こえる時が多々あります。本当にダイアナが大好きだったようです。ダイアナは1985年に白人の船舶王の大金持ちと結婚しました。マイケルはアルバム「オフ・ザ・ウォール」でソロとして才能を開花! 続く「スリラー」で世界的な成功を収めます。その次のアルバム「バッド」でマイケルは「ダーティ・ダイアナ」(ずるい(汚い?)ダイアナ)という曲を歌っています。歌詞の内容もダイアナはひどい奴だといったミステリアスな内容。当時、なんでこんな歌を? と不思議に思ったものです。その後マイケルの死後、彼の遺言でマイケルの子供たちの後見人であるマイケルの母が亡き後は、ダイアナロスにその後をお願いしたいとしているのに、これについてダイアナからは一言のコメントもなし、マイケルの葬儀や追悼式すらも顔を出していません?? いろんな文献を読みますがこれについてはあまり触れたものを見ていません。14歳の年の差!? ふたりの間に何があったのかは想像の世界に委ねられるだけです。

MICHAEL JACKSON AND DIANA ROSS- MISSING YOU
https://youtu.be/jWRm-5Yb1do

次号へ続く

HEART&SOUL代表 原 正行)

 

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