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絵本から笑本へ(第73回) 絵本作家のしゃべりたい絵本。
~絵本づくりの参考にしてはいけない絵本3冊~

by staff on 2022/12/10, 土曜日

絵本作家 保科琢音の連載コラム「絵本から笑本へ」

第5期では「絵本作家のしゃべりたい絵本。」というテーマで
絵本作家らしく絵本についておしゃべりしています。

公共図書館に約十年間勤め、絵本作家になる前に日本一絵本を読んできた、
絵本にも絵本作家にも詳しい、そんな絵本作家 保科琢音の
新しい絵本の楽しみ方、絵本の読み方をご紹介していきます。

第5期3回目のテーマは…
「絵本づくりの参考にしてはいけない絵本3冊」

絵本作家としては、また現在は出版社社長として
新人絵本作家さんの育成もしているぼくのところへは、
たくさんの「絵本をつくりたいひと」・「絵本作家になりたいひと」から
日々ご連絡があります。

そんな訳で今回は、前回のテーマとは真逆のテーマ。
「絵本をつくるときにこの絵本を参考するのはやめておいた方が良いよ」
って絵本を3冊ご紹介します。

はじめに断っておきますが、決してネガティブなご紹介ではありませんよ。

1冊目「へんてこ へんてこ」

作・長 新太
佼成出版社・1988年

長新太さん(享年78歳)はたくさんの絵本を世に送り出されていますが…その中でもぼくにとっては一番と言っていいほど不思議な絵本です。

「ナンセンス絵本の神様」といわれた長新太さん。どこかシュールでユーモアのある不条理な物語を得意としていらっしゃいました。長新太さんがつくった他の絵本も理解不能なテーマは確かにあるのですが(笑) この絵本は更に、絵本のページ数にも注目してもらいたい。なんと36ページもある。絵本としてはかなり長い。長編大作。と思いきや、最初から最後まで絵の構図も変わりません。ずっと同じ。それでも最後まで長新太節を崩さない。それがまさに長新太!こんな絵本は長新太さんにしかつくれない。絵本をつくったことのないひとが簡単に参考にしてはいけません。

しかしこの絵本の凄いところは、その不条理なストリートを長いページ数をかけ最後まで絵本として昇華できているところ。この「長さ」というのもこの絵本のテーマのひとつにもなっているので興味のある方は是非、読んでみてください。

2冊目「ぽぽぽぽぽ」

作・五味 太郎
偕成社・1988年

日本で一番絵本を出版されている五味太郎さん(77歳)の作品の中でも異色の絵本。

内容としてはタイトル通り「ぽぽぽぽぽ」で話が進んで行きます。途中「ととととと」や「ののののの」等に変化はしていきますが、文章は基本これだけ。最後まで何かを説明するようなト書きもなければ、誰かの台詞もありません。それでも最後まで絵本として見れるのは、この限りなく少ない文章と五味太郎さんの絵がベストマッチしているから。
カラーインクでかかれた五味太郎さんの絵は、誰が見ても五味太郎さんの絵だと解る絵。もはやカラーインクで絵をかくとどうしたって五味太郎風になって見えてしまうという位に、五味太郎さんは初期の頃から既に自分の絵が確立されていました。だからこそ絵本づくりの参考にはならない。これは五味太郎さんだかこそ出来る絵本です。

絵本を出版している数も多いのでシッカリと参考になる絵本も勿論たくさん出されていますが…同じようなシリーズで「りりりりり」、「ぬぬぬぬぬ」、「ビビビビビ」なんていうのも出ているので興味のある方は読んでみてください。

3冊目「バムとケロのにちようび」

作・島田 ゆか
文溪社・1994年

カナダ在住の絵本作家 島田ゆかさん(59歳)の大人気「バムケロ」シリーズの絵本です。

どこの本屋さんへ行っても必ずと言っていいほど置いてある絵本ですね。絵本好きな方は勿論、子どもから大人まで楽しめる本当に素晴らしい絵本だと思います。
細部までかき込まれた絵。ストーリーの内容や展開。愛嬌のあるキャラクター。作品の世界観。どれをとっても一級品です。だからこそ絵本づくりの参考には絶対にならない絵本。この絵本を参考にしたとしても、素人ではまずどこから手をつけて良いのかも解らないと思います。

更にこの絵本の凄いところは、主となるストーリーの後ろで展開されている「後ろのストーリー」のクオリティの高さです。前回ご紹介した「ノンタン」シリーズ等、絵本ではよく使われる技でもありますが、島田ゆかさんの絵本はこの後ろのストーリー構成が素晴らし過ぎます。ただでさえ主役の「バムとケロ」が完璧といって良いほど可愛いキャラクターなのに、その後ろで動く言わばサブのサブのサブのキャラクター達までが可愛くお話を進めている。島田ゆかさんは後ろのストーリーの天才だとぼくは思っています。
「バムケロ」シリーズだけでなく、島田ゆかさんのつくる絵本には素敵なキャラクター達がたくさん登場するので他の絵本も是非、読んでみてください。

今回は一見ネガティブなテーマだったかもしれません…

が、ぼくが言いたかったのは
「この絵本のような絵本を簡単につくれると思うなよ!」
って事でもあるんですね。

今回の絵本3冊に共通している事は、
絵本作家さんにシッカリと個性があること。

この絵本作家さんだからこの絵本がかける。
この絵本作家さんだからこの内容に違和感がない。
この絵本作家さんだからこのテーマを扱える。

そういった「この絵本作家さんだからこそ」というのが存在します。

自分にはどういう絵本が合っているか?
どういう絵本をつくることが違和感ないか?

たくさんの絵本を読んで、そんな事を考えるのも楽しいかもしれません。

今回のテーマ「絵本づくりの参考にしてはいけない絵本3冊」も
絵本作家 保科琢音のYouTubeチャンネル『笑える絵本ダナ』にて
同じテーマで動画公開しています。

第5期「絵本作家がしゃべりたい絵本。」は、
YouTubeとの連動していくカタチの連載コラムになっています。

コラムでは書ききれない部分を動画で。
動画でしゃべりきれない部分をコラムで。

コラムとYouTubeの新しい試みを是非、楽しんでもらえると嬉しいです。

絵本作家 保科琢音チャンネル『笑える絵本ダナ』
絵本づくりの参考にしてはいけない【絵本3冊】

絵本作家 保科琢音 チャンネル『笑える絵本ダナ』

https://www.youtube.com/channel/……

<ラフコネクトホームページ>

https://www.laughcnt.com/

<ラフコネクトYouTubeチャンネル>

https://www.youtube.com/channel/…

(文・イラスト:保科琢音

筆者紹介

【保科琢音】
1983年生まれ。br />
神奈川県横浜市在住br />
2013年 絵本「あっかんべー」出版br />
2019年 絵本「ままも」出版br />
2019年 ベトナムにて絵本「ままも」・「よぞらのおくち」同時出版br />
2020年 絵本「ちーちゃんのおなかのあな」出版br />
2020年 ベトナムにて絵本「ねてばかりいるカバ」出版br />
2022年 絵本「よぞらのおくち」・「たまちゃん」同時出版
 
公立図書館に10年間勤めた後、絵本作家・紙芝居作家として本格的に活動を始める。 絵本や紙芝居の創作だけでなく「読絵ん会(どくえんかい)」という名の読み笑わせ口演を精力的に行っている。 幼稚園、保育園、小学校、図書館、美術館、科学館、寺院、子ども病院、療育施設、障害者施設等… 口演場所はこれまでに600カ所以上。 他にも、子育て支援施設業務委託。障害児施設美術プログラム講師。コラム執筆等。 活動は多岐に渡る。また、絵書家筆之輔(えかきやふでのすけ)の芸名で落語家としても活動。
 
2021年 出版社「ラフコネクト」設立 取締役社長に就任

ヨコハマNOW取材記事
「僕にとっての横浜は「未来へ笑がおをつなぐ街」。絵本作家の保科琢音さん」
https://yokohama-now.jp/home/?p=13904

『読絵ん会(どくえんかい)』の様子を動画でご覧下さい。

 

 

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