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絵本から笑本へ(第74回) 絵本作家のしゃべりたい絵本。
~絵本作家になりたいなら知っておくべき隠れた名作絵本3冊~

by staff on 2023/1/10, 火曜日

絵本作家 保科琢音の連載コラム「絵本から笑本へ」

第5期では「絵本作家のしゃべりたい絵本。」というテーマで
絵本作家らしく絵本についておしゃべりしています。

公共図書館に十年間勤め、絵本作家になる前に日本一絵本を読んできた
絵本にも絵本作家にも詳しい、そんな絵本作家 保科琢音の
新しい絵本の楽しみ方、絵本の読み方をご紹介しています。

第5期3回目のテーマは…
「絵本作家になりたいなら知っておくべき隠れた名作絵本3冊」

今回は他ではなかなか紹介されてない隠れた名作絵本をご紹介。
この絵本を知らずして絵本好きは公言出来ない!
絵本作家を目指せない!…と、ちょっと言い過ぎですが(笑)
それくらい凄い絵本達なので。
是非是非、最期までご覧ください。

1冊目「かさ」

作・太田 大八
文研出版・1975年

絵本作家であり、画家でもある太田大八さん(享年97歳)の名作絵本。
この絵本は「文章」がありません。そして、色も白と黒と「赤」だけ。文章と色が限りなく削除された絵本です。

文章や台詞がありませんが、そのぶん絵本の中から「音」が聞こえてきます。雨の音、靴の音、行き交う人々の音、かすかな話し声、風の音、空気の音…。ぼくが知る限りここまでたくさんの「音」が聞こえてくる絵本は他にはない。
色も限りなくモノクロに近いからこそ、主人公の女の子の考えている事や心情が伝わってくる。すると今度はそこから風景に「色」が見えてくる。読む度になんだかいつも不思議な感覚にさせてくれる絵本。

ぼく自身は台詞の掛け合いの多い絵本やカラフルな絵本が好きだったりするのですが。この絵本は関係ない。そんなぼくにも「音」や「色」がしっかりと見えてくる。そして、絵本の中の世界へ読者を連れて行ってくれる凄い絵本。読み継がれるべき名作絵本の1冊です。

2冊目「じんべえざめ」

作・新宮 晋
扶桑社・1991年

作者の新宮晋さん(85歳)は彫刻家です。絵本も何冊か出版されていますが、絵本は新宮さんにとっての表現方法のひとつ。
新宮さんが出されている絵本のなかでぼくはこの「じんべえざめ」が大好きです。深い海の色のような「青」に、彫刻刀で刻まれた「黒」の線が繊細に表現されています。

この絵本の凄いところは、魚類のなかで一番大きな「じんべえざめ」を絵本のなかに描きながら、その大きさや偉大さををまったく縮小することなく表現していることです。
更にこの絵本は、ページをめくる度にどんどんカメラのアングルが上がっていきます。そして最終的には宇宙まで行くのですが、地球の大きさですらシッカリと絵本の中に表現できている。

モノを立体的にとらえる彫刻家だからこそ出来る表現なのかもしれません。ただの絵本作家ではこんな表現なかなか出来ない。だからこそ読み継がれるべき名作絵本なんです。

3冊目「はせがわくんきらいや」

作・長谷川 集平
すばる書房・1976年

この絵本は作者長谷川集平さん(67歳)が創作絵本新人賞を受賞した後に出版されたデビュー作です。

1955年におきた「森永ヒ素ミルク中毒事件」を主とした内容の絵本。長谷川さん自身も赤ちゃんの頃、このヒ素の入った粉ミルクを飲んでいたそう。お母さんが早期に気付きそこからは母乳で育ったと、絵本のあとがきにも書かれています。
一見すると絵本としてはかなり重いテーマを扱った内容になっています。しかし、そこから見えてくる時代背景や人間関係、人と人の価値観の違いがしっかりと絵本の中から読みとれます。
長谷川さんの実体験を見ているようにも感じれるし、長谷川さんを長谷川さん自身が俯瞰して見ているようにも感じる。

「森永ヒ素ミルク中毒事件」から「障害児者」、さらには「生と死」についても考えさせられる。長く読み継がれるべき名作絵本だと思います。

今回は様々な角度から

隠れた名作絵本をご紹介しました。

今の時代SNSや様々な媒体で絵本を紹介しているものはたくさんありますが、
今回ご紹介したこの絵本3冊はなかなか知られていないんじゃないかな。

世の中にはもっともっと隠れた名作絵本は存在します。

ひとの紹介では出会えない。
本屋さんでは出会えない。
図書館でも出会えない。

そんな絵本はこの世にたくさん…
本当にたくさん存在します。

それを伝えていけるのも
絵本作家で出版社社長の保科琢音だからこそ出来ることだと思っています。

今回のテーマ「絵本作家になりたいなら知っておくべき隠れた名作絵本3冊」も
絵本作家 保科琢音のYouTubeチャンネル『笑える絵本ダナ』にて
同じテーマで動画公開しています。

第5期「絵本作家がしゃべりたい絵本。」は
YouTubeとの連動していくカタチの連載コラムになっています。

コラムでは書ききれない部分を動画で。
動画でしゃべりきれない部分をコラムで。

コラムとYouTubeの新しい試みを是非、楽しんでもらえると嬉しいです。

絵本作家 保科琢音チャンネル『笑える絵本ダナ』
絵本作家になりたいなら知っておくべき隠れた【名作絵本3冊】

絵本作家 保科琢音 チャンネル『笑える絵本ダナ』

https://www.youtube.com/channel/……

<ラフコネクトホームページ>

https://www.laughcnt.com/

<ラフコネクトYouTubeチャンネル>

https://www.youtube.com/channel/…

(文・イラスト:保科琢音

筆者紹介

【保科琢音】
1983年生まれ。br />
神奈川県横浜市在住br />
2013年 絵本「あっかんべー」出版br />
2019年 絵本「ままも」出版br />
2019年 ベトナムにて絵本「ままも」・「よぞらのおくち」同時出版br />
2020年 絵本「ちーちゃんのおなかのあな」出版br />
2020年 ベトナムにて絵本「ねてばかりいるカバ」出版br />
2022年 絵本「よぞらのおくち」・「たまちゃん」同時出版
 
公立図書館に10年間勤めた後、絵本作家・紙芝居作家として本格的に活動を始める。 絵本や紙芝居の創作だけでなく「読絵ん会(どくえんかい)」という名の読み笑わせ口演を精力的に行っている。 幼稚園、保育園、小学校、図書館、美術館、科学館、寺院、子ども病院、療育施設、障害者施設等… 口演場所はこれまでに600カ所以上。 他にも、子育て支援施設業務委託。障害児施設美術プログラム講師。コラム執筆等。 活動は多岐に渡る。また、絵書家筆之輔(えかきやふでのすけ)の芸名で落語家としても活動。
 
2021年 出版社「ラフコネクト」設立 取締役社長に就任

ヨコハマNOW取材記事
「僕にとっての横浜は「未来へ笑がおをつなぐ街」。絵本作家の保科琢音さん」
https://yokohama-now.jp/home/?p=13904

『読絵ん会(どくえんかい)』の様子を動画でご覧下さい。

 

 

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