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やさしい革命-「ココ塾」の発達支援
(第7回) 親の願いが届くとき

by staff on 2023/1/10, 火曜日

児童発達支援・放課後等デイサービス
こども発達支援教室「ココ塾」代表
金谷 さおり

やさしい革命 「ココ塾」の発達支援

第7回 親の願いが届くとき

 「ココ塾」での私の主な役割は、保護者さまへの相談援助です。特に学年の上がったお子さまの中には、”いつも親と話している人”と認識している先生に悩みを打ち明けることには抵抗があるお子さまもいらっしゃいます。そのため、お子さまのお話を聞く職員と、保護者さまのお話を聞く職員を別々に設け、職員同士がしっかりと情報共有しながら、チームプレイでご家族全体を支えることを大切にしています。私自身が相談支援専門員として勤務していた経験や、ペアレントメンターの資格を取得していることも役立っていると感じます。これほどしっかりした相談援助の体制が整っていることは、「ココ塾」の強みだと言っても過言ではありません。

 保護者さまとお話をしていると、日ごろの親子関係の中でお子さまに言いづらいことを、代わりに私に言ってほしいという相談を受けることがあります。それが他愛もないことであれば、保護者さまや他の先生も一緒にいるときに、会話の自然な流れの中で話すことはあります。しかし、とても重大なこと、例えば「薬を飲むように言ってほしい」などの場合は、「分りました」と快諾してご本人に話すことは決して行いません。親子が本音で話し合う機会を、第三者が奪ってしまうことはあってはならないことだからです。

 お子さまに対して、本気で向き合うことに恐れを感じている保護者さまは、わりと多くいらっしゃいます。「対応を間違えてしまい、親子の関係性が悪くなったらどうしよう」と不安になってしまう気持ちは、痛いほど分かります。特性のあるお子さまたちなので、保護者さまも伝え方が難しいのです。
 しかし、だからと言って、それを安易に第三者に委ねてしまうことは得策ではありません。親子の話し合いは、お子さまの年齢が上がるにつれてより大切になりますが、同時にだんだん難しくなっていきます。初めから第三者に委ねるのではなく、まずは親子でしっかりと話し合うことはとても重要なことなのです。

 保護者さまの本気の働きかけが、どれほどお子さまの心を動かすものなのか、私は先日、あるお母さまの例から再確認させていただきました。そのお母さまは、いつもお子さまの登下校に寄り添い、お子さまが教室に入れない時は一緒に別室で過ごしたり、授業を受けているときは少し離れた場所で見守っていたりと、常にお子さまのコンディションを気にかけながら、「私の対応はこれで合っているのか」とご自身に問いかけ続けていらっしゃいました。一方でお子さまは、元々苦手だった環境の変化にさらされたり、重度の感覚過敏がある状況で、なかなか学校にも「ココ塾」にも慣れることができない日々が続いていました。ご自身の考えていることや感じていることの辛さを、上手に言葉にすることができる年齢でもなかったため、大きな声を出してしまうことも多くありました。
 その親子が、ある日、とてもしんみりとしたご様子で来所されました。お母さまは、お子さまの対応に入る予定だった心理士と私に声をかけ、前日に起きた出来事について涙を流しながら話し始めました。学校で個別に対応してくれようとした先生に、大きな声を出したり強い言葉を発してしまったお子さまに対して、かなり厳しく叱ってしまったそうなのです。これまでどんなときも優しく穏やかな心でお子さまを見守ってきたお母さまでしたが、自分(お子さま)のためを思って色々してくれる先生に対して反抗的な態度を取ることがどれだけいけないことなのか、かなりの熱量を込めて伝えたことが想像できました。
 泣いているお母さまに対して、心理士も肩をさすりながら「お母さまも、お子さまも、何も悪くないですよ」「気持ちはしっかり伝わっていますよ」と声をかけてくれました。お子さまのありのままの姿を受け止めてあげたい思う気持ちと、人に迷惑をかけず誰からも愛される子でいてほしいという気持ちが交錯し、お母さまもギリギリの状態だったのです。

 しかし、その渾身の説得は、見事なくらいにお子さまに伝わっていました。その日、自分の思いが伝わらないからと言って大きな声を出すことは一度もなく、深呼吸をしたり、黙って歩き回ったりと、必死に気持ちをコントロールしようとしていたお子さまは、授業が終わると「今日一度も怒らなかったこと、お母さんに伝えて」と心理士に言ったのです。
 もちろん、怒ることそのものは悪いことではないことは、担当の心理士も伝え続けてきたことです。しかし、だからといって何も我慢せずに怒りをぶつけていると、大好きなお母さまを悲しませてしまうということを、このお子さまはしっかりと学んでいました。
 これ以降、お子さまが大きな声を出すことはなく、学習に取り組む時間も格段に増えました。学習が終わりお母さまが迎えに来ると、「今日は○○を勉強したよ!」と嬉しそうに報告するお子さまに、「あら、がんばったね!」と褒めてあげるお母さま。その二人の笑顔が見られると、私たちも本当に嬉しい気持ちになります。

 保護者さまの本気の想いは、必ずお子さまに伝わります。お子さまは、やっぱり保護者さまに褒められたいのです。それに対して、私たち支援者ができることは、本当にささやかなことだけ。安易な介入は逆効果でしかありません。

 私は、どんな保護者さまに対しても、尊敬の念を抱いて関わらせていただいています。自分にできることをわきまえつつも、必要な時にはいつでも味方になって、お話を聞き、ご家族の笑顔のために精一杯動く覚悟を決めています。私だけでは足りない時は、それ以上に専門知識に長けた専門職がついています。だから、どうか安心して、親子で話をしてください。「ココ塾」は、いつもそんなお子さまと保護者さまを全力で応援しています!

(第7回了)

 

子どもの感覚と行動について | 「ココ塾」YouTubeチャンネル

「ココ塾」YouTubeチャンネルをご覧のみなさん、こんにちは。代表の金谷さおりです。
この、「ココ塾」チャンネルでは、すべてのお子さまたちに「学ぶ楽しさ」を届けることをテーマにした、様々な情報発信をしています。ご家庭や学校での対応のヒントになりましたら嬉しく思います。
今回は、作業療法士の石田ちひろ先生から、お子さまの感覚と行動に関するお話をしていただきます。本編は4部作となる大作でございますが、お子さまの行動の理由を理解するうえでのたくさんのエッセンスが詰め込まれています。ぜひご視聴いただけますと幸いです。それでは石田先生、よろしくお願いします。

石田ちひろ先生による、「子どもの感覚と行動について」。いかがでしたでしょうか。
私も支援者として、また発達障害のある子どもを育てる母親として、石田先生との出会いは大きな転機でした。学校での不適応や、お子さまの抱える不安を理解するために、感覚特性の学習は欠かすことができません。もし一人でも多くのは保護者さまや学校の先生たちが、石田先生がおっしゃっていたような感覚特性の視点からお子さまの行動を見つめ直すことができたなら、救われるお子さまたちは大勢います。私はこの石田先生のプレゼンテーションが、世の中に変革をもたらす、優しい革命の一つであると確信しています。

これからも、「ココ塾」チャンネルでは、様々な専門職によるお話しや療育のアイディアをご紹介してまいります。これからの活動の励みになりますので、少しでも良いと思っていただけましたら、ぜひチャンネル登録といいねをお願いいたします。

 

筆者プロフィール

金谷 さおり(かなや さおり)  

金谷 さおり(かなや さおり)
社会福祉士・精神保健福祉士
学習院大学経済学研究科博士前期課程修了 (経済学修士)

<CAREER>
大学院にて働くことができない若者たちの雇用問題について学ぶ。
大学院修了後は、ニート・ひきこもりの就労支援、重度障がい者の生活支援、農福連携を推進する自治体のコンサルティング、公的機関での相談支援など、多岐にわたる障害福祉の現場を経験する。
三男一女の母で、次男は発達障がい。医療・福祉・教育の各分野の専門家にサポートしていただきながら、子育てを満喫中!

<VISION>
障がいのあるなしにかかわらず だれもが自分の望む道のりで 夢をかなえられる社会をつくる

<「ココ塾」ホームページ>
https://coco-jyuku.com/

こども発達支援教室「ココ塾」 創設に込めた思い

これからも、「ココ塾」チャンネルでは、様々な専門職によるお話しや療育のアイディアをご紹介してまいります。これからの活動の励みになりますので、少しでも良いと思っていただけましたら、ぜひチャンネル登録といいねをお願いいたします。

 

 

 

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