絵本から笑本へ(第75回) 絵本作家のしゃべりたい絵本。
~今、絵本作家になりたいなら知っておきたい絵本3冊+1冊~
絵本作家 保科琢音の連載コラム「絵本から笑本へ」
第5期では「絵本作家のしゃべりたい絵本。」というテーマで
絵本作家らしく絵本についておしゃべりしています。
公共図書館に十年間勤め、絵本作家になる前に日本一絵本を読んできた
「絵本にも絵本作家にも詳しい絵本作家」
そんな保科琢音の新しい絵本の楽しみ方、絵本の読み方をご紹介しています。
第5期5回目のテーマは…
「今、絵本作家になりたいなら知っておきたい絵本3冊+1冊」
今回のテーマは「今」です!
今この時代に、絵本をつくりたい!
今この時代に、絵本作家になりたい!
そう考えているひとには是非是非ご覧頂きたい内容です。
1冊目「おかあさんのパンツ」
作・山岡 ひかる
絵本館・2005年
食べ物をテーマにした絵本が多く出版されているイメージの山岡ひかるさん(56歳)ですが、ぼくのなかで一番好きな絵本はこの「おかあさんのパンツ」です。
山岡ひかるさんの絵のかき方…というか、つくり方は「切り貼り絵」です。
実は、この切り貼り絵で絵本をつくられている作家さんはあまりいません。わかりやすいところだと、せなけいこさん(91歳)が有名です。というか、他に見当たらない。それだけ切り貼り絵は絵本に昇華するのが難しい手法なんですね。その中でこの山岡ひかるはシッカリと切り貼り絵を絵本に昇華されています。とくにこの「おかあさんのパンツ」は勉強になる。
あまりこの手法を使った絵本作家さんがいないのだからこそ、これから絵本をつくりたい、絵本作家になりたいひとは、切り貼り絵にチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
冊目「どこいったん」
作・ジョン・クラッセン
訳・長谷川 義史
原作初版・2011年
カナダ生まれの絵本作家ジョン・クラッセンさん(41歳)の絵本デビュー作。
大阪生まれの絵本作家 長谷川義史さん(61歳)が日本語訳をされていることもあって、外国の絵本なのに全編大阪弁で読めるのは日本ならではですね。
この絵本を説明するときには様々な表現の仕方があるかと思います。まぁ読んで頂くのが一番解りやすいのですが…そんなこと言ってしまうと元も子もないので(笑) ネタバレにはならない程度に内容にもふれたいと思います。
淡々と繰り返しで展開していくストーリーだと思って読み進めていくと、だんだんと何かおかしな雰囲気が気になってくる不思議な絵本。最後のオチも読むひとによって解釈の仕方がいろいろあるようにつくり込まれています。「ブラックユーモアな絵本」と安易に言い切ってしまえない、ナニカ本当に不思議な魅力のつまった絵本です。
作者のジョン・クラッセンさんは41歳とまだまだ若い絵本作家さん。ここから彼の絵本がどんどん世界中に広がっていくだろうなと感じさせてくれる存在です。
3冊目「ちょっとだけまいご」
作・クリス・ホートン
訳・木坂 涼
原作初版・2011年
アイルランド生まれのクリス・ホートンさん(45歳)の、こちらもデビュー作の絵本。絵本作家以外にも、デザイナーやイラストレーターとしても活躍されています。
この絵本は個人的にまさに「今の時代にマッチした絵本」だと思っています。
一見するとレトロな風合いを感じさせる絵なのですが、ストーリーを展開していく際の構図や世界観の表現の仕方は新しいアニメーションを見ているかのよう。決して奇をてらった手法を用いている訳ではないのですが、キャラクターの造形を含めとても動きのある絵本に見えます。絵本の大きさやサイズもとても計算されているなと感心させられる凄い絵本。
前出の絵本作家ジョン・クラッセンさん同様、新しい絵本の時代をつくっていく世界的絵本作家さんだと思っています。
と、いつもですと3冊の絵本を紹介して終わりなのですが…今回はギリギリまで紹介しようか迷っていた絵本もついでに紹介しちゃいたいと思います。という訳で「+1冊」です。
+1冊「ルイスがたべられちゃったひ」
作・ジョン・ファーデル
訳・tupera tupera
原作初版・2011年
イギリス生まれのジョン・ファーデルさん(56歳)の絵本。もともと漫画家・作家・イラストレーターとして活動されていて絵本をかくようになったとか。
この絵本は「とにかくおもしろい!」につきます。この絵本を読んだとき「あーこれからこのひとの絵本がどんどん出るんだろうなー」と思っていたのですが…一向に出る様子がない(笑) 勿論、本国では数冊の絵本が出版されてるようですが、日本ではこの絵本1冊で止まっています。なぜだ!?
内容も展開も表現の仕方も他の絵本にはい独自性を感じるので、もっともっと日本でも有名になっていってくれると嬉しいなと。そんなめちゃめちゃ個人的な願いを込めてご紹介しておきたいと思います。
今回の絵本をご紹介しながら
自分自身もとても勉強になる絵本ばかりだなと感じました。
だって同じ時代に生きる絵本作家さん達なのだから。
特に、後半にご紹介した外国の絵本作家お三方は
「新しい絵本の世界をつくっていく新しい時代の絵本作家」だと思っています。
だからこそ、目標であり、ライバルでありたいと思っています。
まぁ彼らからしたら、ぼくなんてなんの脅威も感じない無名の絵本作家なんですが。
でも、ここからです。
追いつき、追い越していきます。
と、なんだか決意表明みたいな最後になってしまいましたが。
ご愛嬌ということで。
今回のテーマ「今、絵本作家になりたいなら知っておきたい絵本3冊+1冊」も
絵本作家 保科琢音のYouTubeチャンネル『笑える絵本ダナ』にて同じテーマで動画公開しています。
第5期「絵本作家がしゃべりたい絵本。」は、YouTubeとの連動していくカタチの連載コラムになっています。
コラムでは書ききれない部分を動画で。
動画でしゃべりきれない部分をコラムで。
コラムとYouTubeの新しい試みを是非、楽しんでもらえると嬉しいです。
絵本作家 保科琢音チャンネル『笑える絵本ダナ』
今、絵本作家になりたいなら知っておきたい【絵本3冊+1冊】
絵本作家 保科琢音 チャンネル『笑える絵本ダナ』
<ラフコネクトホームページ>
<ラフコネクトYouTubeチャンネル>
(文・イラスト:保科琢音)
筆者紹介
【保科琢音】
1983年生まれ。br />
神奈川県横浜市在住br />
2013年 絵本「あっかんべー」出版br />
2019年 絵本「ままも」出版br />
2019年 ベトナムにて絵本「ままも」・「よぞらのおくち」同時出版br />
2020年 絵本「ちーちゃんのおなかのあな」出版br />
2020年 ベトナムにて絵本「ねてばかりいるカバ」出版br />
2022年 絵本「よぞらのおくち」・「たまちゃん」同時出版
公立図書館に10年間勤めた後、絵本作家・紙芝居作家として本格的に活動を始める。 絵本や紙芝居の創作だけでなく「読絵ん会(どくえんかい)」という名の読み笑わせ口演を精力的に行っている。 幼稚園、保育園、小学校、図書館、美術館、科学館、寺院、子ども病院、療育施設、障害者施設等… 口演場所はこれまでに600カ所以上。 他にも、子育て支援施設業務委託。障害児施設美術プログラム講師。コラム執筆等。 活動は多岐に渡る。また、絵書家筆之輔(えかきやふでのすけ)の芸名で落語家としても活動。
2021年 出版社「ラフコネクト」設立 取締役社長に就任
ヨコハマNOW取材記事
「僕にとっての横浜は「未来へ笑がおをつなぐ街」。絵本作家の保科琢音さん」
https://yokohama-now.jp/home/?p=13904
『読絵ん会(どくえんかい)』の様子を動画でご覧下さい。
ヨコハマNOW 動画
新横浜公園ランニングパークの紹介動画 | ||
ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。 |
横浜中華街 市場通りの夕景 | ||
横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。 |
Comments are closed.