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書評 「すべては1979年から始まった 21世紀を方向づけた反逆者たち」 草思社 クリスチャン・カリル 著 北川和子 訳

by staff on 2015/3/10, 火曜日
 

21世紀は歓声とともに幕を開けた。誰もが新しい時代の訪れに心から祝福した。少しでも早く平和と希望に満ちた未来に進みたいから、20世紀は過去の遺物として記憶の外に放り出した。そして、もう過去には戻らないぞ、二度と争いは繰り返さないぞ、と人類は誓いを立てたのだ。それは、たった15年前のことである。

しかし、9・11アメリカ同時多発テロの発生で夢は破れ、新世紀幕開けの喜びは長続きしなかった。

本書は、題名からも推察できるように、現代の混迷した時代は1979年に起源があると仮定したした歴史物語である。1979年は現在の世界を取り巻くパズルの台座だという。それは、誰も予見できななった事だったと説明する。1979年に台頭した「21世紀を方向づけた反逆者たち」のとった行動が現代に何をもたらしたのかを知る事は、これからの未来を生きる知恵に多くの栄養分を含んだ糧であるし、「温故知新」の書としてお勧めする。

以下に、「あとがき」の文章をいつくか引用することで本書の紹介としたい。

歴史はつかみどころがない。様々な出来事に出くわす度に、私たちはそれを前例というプリズムを通して解釈し、同じ行動が繰り返されることはないと気づいて目を見張る。私たちは「過去の教訓」について自信ありげに語る。まるでこの世の混沌としたありさまが、秩序正しく整理されるかのように、、、

1970年代の終わりほど、未来を予見できない時期はなかった、、、、

本書は、アメリカのジャーナリスト、クリスチャン・カリル氏の邦訳である。「1979年と21世紀の始まり」という副題が示す通り、本書は「1979年」をめぐる物語である。この年、遠く離れた場所で無関係に生じたようにみえる様々な出来事が、実は21世紀の現代に大きな影響を与えていること、現在の世界情勢や世界が抱える問題は1979年に端を発していることを、ジャーナリストならではの視点で生き生きと描き出している、、、

1979年を振り返ってみると、1月には米中の国交が樹立、2月にはホメイニーが亡命先のフランスからイランに帰国、4月にイスラム共和国の樹立が宣言された。言うまでもなくイスラム教はその後の世界に大きな影響を及ぼしている。5月には、イギリスでサッチャーが首相に就任、新自由主義的経済政策を推進した。6月にはヨハネ・パウロ二世が祖国ポーランドを訪問。この訪問は東欧の人々に大きな影響を与え、非暴力の抵抗運動はやがて共産主義体制の崩壊をもたらす。11月にはテヘランでアメリカ大使館占拠事件が起こった。12月にはアフガニスタンでソ連の軍事介入によるクーデターが勃発した。中国ではこの年、鄧小平が経済改革に着手し、7月には経済特区が設置された。中国はいまや経済大国と呼ばれるまでに発展している。つまり1979年は、社会主義の終焉、市場経済の台頭、宗教の政治化が始まった年だった、、、

一方、1979年にアメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン アメリカへの教訓』が刊行された。日本がなぜ、第二次世界大戦後に驚異的な経済復興を遂げたのかを研究した名著である。副題が示すように、ヴォーゲルは日本企業の目覚ましい成功の分析を通して、アメリカの読者に教訓を与えたいと考えていた。この頃、アメリカ人は長引く不況に苦しみ、自信を失っていた。過去100年の間、日本は欧米の先進国に追いつこうと懸命に努力してきたが、いまや立場は逆転したかに見えた、、、

ヴォーゲルが日本を「ナンバーワン」と称えた1979年は、世界経済の序列にやがてもたらされる劇的な変化の始まりの年でもあった、、、

(文:辰巳 隆昭


 

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