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書評 「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」 集英社インターナショナル 矢部宏治 著

by staff on 2015/4/10, 金曜日
 

「廃炉」とか「脱原発」とか「卒原発」とか、日本の政治家がいくら言ったって、米軍基地の問題と同じで、日本側だけでは何も決められないようになっているという。え!え?

この本を大変尊敬する方から勧められた。
「ぜひ読んでいただきたく、帯の後ろに書かれている文章を引用します。なぜ、戦後70年たっても、米軍が首都圏上空を支配しているのか?なぜ、人類史上最悪の原発事故を起こした日本が、再稼働に踏み切ろうとするのか?なぜ、被曝した子どもの健康被害が、見て見ぬふりをされてしまうのか?なぜ、日本の首相は絶対に公約を守れないのか?だれもがおかしいと思いながら、止められない。日本の戦後史に隠された『最大の秘密』とは?」

だから、この国を愛していながら、この国に生まれて良かったと思っていただけに衝撃の中で私は読み終えた。

沖縄の面積の18%が米軍基地だといいましたが、上空は100%ですという。そして「日本国の当局は、(略)所在地のいかんを問わず合衆国の財産について、捜索、差し押さえ、または検証を行う権利を行使しない。」というのが公式議事録になっている。だから「米軍機の墜落事故が起きたとき、米軍はその事故現場の周囲を封鎖し、日本の警察や関係者の立ち入りを拒否する法的権利を持っている。」というのだ。そして沖縄国際大学・米軍ヘリ墜落事故では、米兵の許可を得て大学構内に日本の警察が入っていく姿は、植民地そのものといった風景だと著者はいう。

こんな議論にもなる。「憲法9条2項の戦力放棄と、沖縄の軍事基地化は、最初から完全にセットとして生まれたものだということがわかりました。つまり憲法9条を書いたマッカーサーは、沖縄を軍事要塞化して、嘉手納基地に強力な空軍を置いておけば、そしてそこに核兵器を配備しておけば、日本国土に軍事力はなくてもいいと考えたわけです。」

戦争責任は誰にあったかというという問いがなされないと同じような構図が今回の福島の原発事故にもあったといいます。「福島のみなさんは、30万人もの方たちが家や田畑を失い、仮設住宅のなかで明日をも知れぬ日々を送ることになりました。いくら室内をふいても、またもとにもどってしまう放射能の数値。とくに小さいなお子さんをもつお母さんの苦しみは、まさに言葉ではいいつくせないものがあったでしょう。そんななか、少し事態が落ち着いてくると、被災者たちは信じられない出来事に次々と直面することになったのです。なかでもおかしかったのは、これほどの歴史的大事故を起こし、無数の人々の家や田畑を奪っておきながら、その責任を問われた人物がひとりもいなかったということでした。」「考えてみてください。工場が爆発して、被害が出たら、必ず警察が捜査に入ります。現場を調べ、事情を聴取して安全対策の不備を洗い出し、責任者を逮捕するはずです。」「安全対策に不備があったかどうか、なぜ検証しないのか、家や田畑を失った被害者に、なぜ正当な補償がおこなわれないのか。」

著者はすすめます。「日本と同じく戦争放棄条項を持つ、フィリピンやイタリアの憲法から学んで、二項を“前項の目的を達するため、日本国民は広く認められた国際法の原則を自国の法の一部として取り入れ、すべての国との平和および友好関係を堅持する”とすること、つまり国連中心主義の立場を明らかにすることです。フィリピンはこれとほぼ同じ条項のもとで米軍を撤退させ、しかもアメリカとの安全保障条約を継続しています。したがうべきなのは国際法の原則です。」

著者は指摘します。「決め手は憲法です。憲法によって政府の暴走をとどめ、戦争を防ぎ、人々の人権を守るしかない。でもいったい、いまの憲法をどう変えればいいのか。」

「もう一度初めからやり直しましょう。」という提案なのだと思います。

(文:横須賀 健治)


 

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