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書評 「ちいさな城下町」 文藝春秋 安西水丸 著

by staff on 2015/4/10, 金曜日
 

世界遺産・国宝の姫路城は、「平成の大修理」を終え3月27日から約5年半ぶりに一般公開が再開された。
「平成の大修理」は、2009年10月から始まり、延べ1万5千人の職人が取り掛かり、「白鷺(しらさぎ)城」のまばゆい輝きがよみがえった。

世界最大級の米旅行口コミサイト “トリップアドバイザー” による「死ぬまでに行きたい世界のお城」では、姫路城はランキング世界2位。1位は、ディズニーランドのお城のモデルと言われている、ドイツの「白鳥城」と呼ばれるノイシュバンシュタイン城。
「白」が共通項のこの二つの城は、世界の人々から最も愛されるお城のツートップであるのだが、逆に、「白」だから故に世界の人々を魅了し続けているのだとも言える。白色は世界人の共通言語なのだ。

さて、ここに紹介する著書「ちいさな城下町」に登場するお城には、天守閣も堀も石垣も存在しないし、白色をイメージすることもない。誰かが語り継いでいかなければ、いずれは風化して路傍の一木一草と化すであろうそんな風景の一つである。

旅の楽しみの一つとして、何処か地図で城址を見つけ、そこを訪ねることがある。たいていの城下町には城址があるわけだが、ぼくの城下町の好みは十万石以下あたりにある。そのくらいの城下町が、一番それらしい雰囲気を今も残している。城址に立つと「兵どもが夢のあと」とでもいうか、ふしぎなロマンに包まれる。なまじっか復元された天守閣などない方がいい。わずかな石垣から漂う、敗者の美学のようなものがたまらない。
(著書から引用)

著者の安西水丸さんは、イラストレーターとして書籍の装画や雑誌の挿絵などを多数手がけ、文筆業でも小説やエッセイの著書をたくさん持っている。安西さんがこの世を去ったのは、2014年3月19日のことである。イラストレーターとして偉大だっただけではなく、業界団体である「東京イラストレーターズ・ソサエティ」の理事長として、また新しい人材を育成する指導者として、イラストレーションの活性化や地位向上に尽力した人でもあった。

前述の著作の引用文でも判るように、この本には、安西さんの哲学と美学を感じることができる。町の見方や風情の感じ方を元祖へたうまな絵と魅力的な文章で伝えてくれている。

安西さんのオススメ20の城下町。
登場するのは、村上市(新潟県)、行田市(埼玉県)、朝倉市(福岡県)、飯田市(長野県)、土浦市(茨城県)、壬生町(栃木県)、米子市(鳥取県)、安中市(群馬県)、岸和田市(大阪府)、中津市(大分県)、掛川市(静岡県)、天童市(山形県)、新宮市(和歌山県)、西尾市(愛知県)、大洲市(愛知県)、亀山氏(三重県)、木更津市(千葉県)、高梁市(岡山県)、沼田市(群馬県)、三春町・二本松市(福島県)。

エッセイというよりは、上質の紀行文として皆様の愛読書の棚に納まるはずである。

安西水丸さんの面影

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安西水丸さんの面影

 

安西水丸さんの面影

 

安西水丸さんの面影

(文:辰巳 隆昭


 

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