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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第64回)

by staff on 2018/7/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第64回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

先日まで横浜美術館では “ヌード展” が開催されました。西洋を中心に、これまで芸術家がずっと “人間の裸の姿” に向き合い挑み続けた歴史。神話画や歴史画から現代の身体表現まで、時代と共に保守的なヌード画からモダンアートまで、大きく幅広く変化してきたことが目の当たりに。初期では男性画家が女性のヌードを描いたものが圧倒的。しかし、最近は女性画家が男性のヌードを描くことも多くなり、今回の展覧会も後半の展示は女性画家による男性ヌードが多数。フェミニズムの流れは美術の世界で大きく先行している印象。ビジネスの世界だけを見ていると、世の中の大きな時代の流れを見失う恐れがありそうです。ビジネスの基本が “人間を観察すること” にあるとすると、これまでありえない切り口がビジネスでも求められているのかも。 “新しいものの見方の発見は新大陸の発見に相当する” とのプルーストの指摘は今日でも新鮮。梁塵秘抄では “女人五つの障りあり 無垢の浄土は疎けれど 蓮華し濁りに開くれば 龍女も仏になりにけり” とあります。法華経にある説話を踏まえたもので、時代の背景・流れを見据えた視点こそ肝。“弟子はとらず、自ら墨をすり、自分で筆を洗う”と画家・横山大観。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

現状維持願う風潮が強い 反発・怒りの軸がみえない
芸は人なり 心の内が全部噺の中に出てくる 守破離
現在の社会が必要としているのは購買者・消費者だけ
怒れる人間や変革する人間ではない、と作家・辺見庸

作家・辺見庸は共同通信記者としてベトナムのハノイ勤務を経験。その後、日本のバブル経済絶頂の中、個としての人間が物質に飲み込まれてゆく悲しみを基調にした小説を書き続けました。私にとっては著書 “もの食う人びと” の印象が圧倒的。この本は処分することができず、今も私の本棚を飾っています。何をどう食べるか、食えるか食えないのか。人間の苛烈な “食” への関わりを訴えた強烈なルポルタージュ。人間がモノに拘り離れられない宿命と悲惨。購買者・消費者だけしか見ないで、人間そのものを観ないと、本源的イノベーションは起こりえないのかも。人間は時に怒り、時に変身したりできるはず。 “異常に緊張する時は練習が足りなかった時” とバレリーナ・森下洋子。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

経験知やノウハウ・知識・知恵 組織の知の引き出しを開示しないと
何の得にもならない プロは 他のメンバーが知の引き出しを通じて
仕事の成果実現やスキルアップ 知に貢献した本人も次のステップへ
挑戦意欲が次なる成長へ 満足は衰退の第一歩、と実業家・渋沢栄一

渋沢栄一は日本資本主義の父と称えられた幕末から昭和の実業家。藍玉と養蚕を家業とする半農半商の家庭に生まれ、幼少より商売と論語を学びました。江戸幕府最後の将軍徳川慶喜の弟・昭武の付き人としてヨーロッパに留学。いつの時代でも、日本の外を観る、外から日本を観ることは値打ちがあるもの。エジソンや孫文との書簡も残っており、人脈と行動の広さには驚嘆。飛鳥山には晩年まで暮らした邸宅があり、今も残る洋風茶室の “晩香廬” は名建築。飛鳥山は、江戸時代から浮世絵にも残る桜の名所ですが、桜だけではなく名園も。人は死ぬまで同じ事をするのでなく、理想に向かって挑戦し続けるとの信念。“今やらねば何時できる、儂がやらねば誰がやる”と彫刻家・平櫛田中。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

私の一生は無意識の自己実現の物語である
一人が光れば みなが光る、と河井寛治郎
研究所は人間の気持ちを研究するところで
技術を研究する処ではない、と本田宗一郎

河井寛次郎は陶芸家。陶芸のほかに彫刻・デザイン・書などでも多くの作品を残しました。師を持たず、学校という教育機関で指導を受けた新しい世代の陶工。学校の後輩である益子焼の濱田庄司と1万種以上の釉薬・中国陶磁の研究も行っています。盟友である柳宗悦は、無名の職人が作る民衆の日常品の美に魅了され、それを “民芸” と位置づけ、駒場に日本民芸館を開設しました。日本民芸館では河井寛次郎の作品にも接することができ、美と宗教の奥深い宇宙空間が魅力。卓抜した芸術性は国の内外で高い評価を受けています。文化勲章・人間国宝も辞退、無位無冠の陶工として創作活動を完結。 “楽器を弾きこなせればよい音楽になるとは限らない” とジャズピアニスト・秋吉敏子。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

「ビジネス梁塵秘抄」購入ご希望の方はこちらからどうぞ!
http://www.syplus.jp/ooura/

(第64回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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