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田中健介の麺食力-それから- 第5回 「沖縄と横浜」

by staff on 2019/2/10, 日曜日

第5回 沖縄と横浜

2010年に出版した自著「麺食力-めんくいりょく-」。横浜の麺料理とその周辺の情景を描きながらほとんど売れなかった可哀想な本。著者自身も出来上がった本に向き合うことなく、ついに来年に出版10周年となるのを機に、改めて当時の内容を振り返り、現在の移り変わりを綴っていく、ついでに啜っていく企画の今回が第五回目でございます。

2月に入り、プロ野球は春季キャンプ真っ盛り。下旬から3月にかけてオープン戦で実戦感覚を掴み、3月下旬にはペナントレースの開幕となります。
我が横浜DeNAベイスターズは私の記憶が確かならば、もう30年以上沖縄県宜野湾市にて春季キャンプを行っています。また近年では2014年入団の嶺井博希捕手、2017年巨人から移籍の平良拳太郎投手、2018年入団の神里和毅外野手など、虎視眈々と定位置の座を窺う沖縄県出身のプレーヤーが多く在籍しており、ベイスターズにとって沖縄はとてもゆかりのある土地の一つといえます。

沖縄と横浜の関係は野球だけではありません。
横浜最東端の行政区・鶴見。京浜工業地帯の一角である鶴見には、横浜市に編入する前の大正時代から、沖縄出身者が職を求めて京浜工業地帯に集まり、近代化著しい日本経済を支えてきたといわれています。
沖縄出身者たちは故郷を思い同士でコミュニティを形成、やがて鶴見区仲通には「リトル沖縄」といわれるエリアができ、沖縄県人会館や沖縄の物産センター、沖縄料理店などが集結し現在に至っています。

鶴見区仲通のリトル沖縄。
「鶴見沖縄県人会会館」がリトル沖縄のランドマーク的存在となり、
周辺にいくつかの沖縄料理店などがある。

今回はそんなエリアの中から「うちなーすば ヤージ小(やーじぐわぁ)」の今をレポート。拙著をお持ちの数少ないファンの皆様は157ページを開いてこちらと合わせてお読みくださいませ。ない人は、ないなりに楽しめるよう書いていきますのでご安心ください。

ヤージ小店舗外観。「かりゆし」な雰囲気ある看板が目を引く

三代目店主である有限会社沖縄そば・ヤージ小代表の雪山秀人氏にお話を伺うことができました。
雪山氏の祖母にあたる沖縄出身の屋宜(やぎ)ナベイさんは、兵庫県尼崎市で終戦を迎えます。そこで商売をしようと考え、大阪市大正区にある「リトル沖縄」へ行くことを検討しましたが、上京志向のあったナベイさんは東京に近い鶴見の「リトル沖縄」を選択。
1955年に「ヤージ小(やーじぐわぁ)」を開業します。拙著でも述べていますが、店名は姓の屋宜(やぎ)を沖縄読みで「やーじ」、「小(ぐわぁ)」は「○○ちゃん」と意味するそうで、すなわち店名を標準語で表すと「屋宜ちゃん」ということになります。

「ちなみに名前の『ナベイ』は、『ナビィ』と発音するの。ほら、昔映画であったでしょ、『ナビィの恋』って。それよ!」
※「ナビィの恋」…1999年公開の映画。沖縄が舞台。中江雄二監督、西田尚美・平良とみ主演。

店内に入れば「うちなー」な雰囲気満載。沖縄そばだけでなく沖縄料理の定食も充実。

「沖縄そばっていうのは、うどんと中華麺のちょうど中間といった位置づけですね。うどんのような太さで中華麺のキモであるかんすいが入ってるのが特徴です。また沖縄そばは茹で置きが一般的。さっと出せるし独特なモチモチ感が出ます。」

茹で置きは私の属する日本ナポリタン学会でもよく聞く言葉。乾麺のスパゲッティを茹で置きすることで中心部まで水分が浸透し、ソースに馴染みやすくなる、モチモチした食感が出る、という利点があります。この茹で置きの製法はホテルニューグランド二代目総料理長である入江茂忠氏が考案したもの。ナポリタンの起源は諸説あるといわれていますが、サッと提供できるというオペレーションの簡略化をもたらしたことで、のちにナポリタンを提供する喫茶店が全国に広まったという意味では、今あるナポリタンの形はニューグランドから生まれたものであると私は思っています。

沖縄焼きそばケチャップ味。
沖縄そばとスパムが特徴的で「那覇ポリタン」と比喩されるほど沖縄ではポピュラーである。

沖縄焼きそばはソース味・塩味・しょうゆ味・ケチャップ味から選択できますが、やはり私はケチャップ味を頼んでしまいます。
キャベツ・もやし・小松菜・ニンジンという焼きそば要素がありながら、玉ねぎとスパム、それらをケチャップでまとめると見事なナポリタンです。沖縄そばのこの太さが良く合うのですよ。

「へー、長崎には『ちゃポリタン』ってのがあるの!?エッ、名古屋のナポリタンは鉄板で出されるの?ナポリタンって、面白いんだねぇ!!」

雪山氏もナポリタンの奥深さには興味があるようです。
横浜は戦後進駐軍の影響を多く受けた街。沖縄は今も米軍の影響を多く受けている街。
トマトケチャップというのはそれらに共通していて、象徴的なアイテムなんですね。

ソーキそば大盛。頼んで5分足らずで出てくる嬉しさ。ゲンコツ大のソーキが3つも添えられる。

拙著では沖縄そばをいただきましたが、ソーキそばを大盛で頼んでみました。
ゲンコツ大の骨付き肉が3本。とてもやわらかく仕上げており、臭みもなく、余分な脂を落としてあるので野獣の如く食らいついても胃もたれしないすっきりとした味わい。
豚骨とかつおだしのスープも優しい。毎日食べられる仕様なんでしょうね。香川の讃岐うどんや駅そばなど同様に、毎日食べても飽きない感じ。卓上に常備されている紅ショウガやコーレーグスなどで味の変化を楽しめます。

初めて買ってみたお持ち帰り用の沖縄そば。
スープを買い忘れるという相変わらずのポンコツ野郎だが、
「これでナポリタンを作りなさい。」という暗示だと思っている。

人気の沖縄そばはなんと2016年から自家製麺に切り替えています。店舗裏に工場があり、1日1,000食以上製造可能な能力を有します。

「創業64年、やーじ小の恩返しプロジェクトです。
長年お世話になった皆様に 安くて美味しい沖縄そばを提供したい、そういう思いから自家製麺に切り替えました。」

その言葉の通り、この食材高騰の昨今でも沖縄そばメニューは500円からと低価格を維持。
そして、お持ち帰り用の自家製麺は1玉100円で買える手軽さ。店舗の暖簾がデザインのパッケージが素敵!スープも売っていますので、自宅でも気軽に「ヤージ小」の味が楽しめます。焼きそばにも、沖縄そばにも。いろんなアレンジが出来そうですね。

雪山秀人氏と拙著。俺が生きている限りは店を続けて行くからと。カッコイイ!

「前はこの界隈で沖縄料理店は10店舗あったんだけどねぇ。今はウチを含めて3店舗になっちゃったね。この街が変化しているのもあるけど、やっぱり飲食店ってどこも人手不足だしね。大変だよね。」

お世辞にも賑わっているとはいえないこの仲通界隈ではありますが、この5卓ほどのお店には昼も夜も入れ替わり立ち替わりで多くのファンが沖縄そばを求めて来店します。
多種多様な横浜の麺文化の一角として、鶴見区仲通の「リトル沖縄」は貴重な存在です。

筆者紹介

 
本 名 田中 健介(たなか けんすけ)
略 歴 1976年9月生まれ。横浜市出身。横浜市在住。
武相高校、神奈川大学卒業。
自称エッセイスト、本業は福祉関係。
ベイスターズファン歴35年、CKBファン歴17年。
 
2009年9月、日本ナポリタン学会設立、会長となる。
http://naporitan.org
 
2010年3月、著書「麺食力-めんくいりょく-」(アップロード)刊行
https://amzn.to/2DGVqiU(Amazonへ短縮リンク)
 
2017年5月~ 連載「はま太郎」(星羊社)「田中健介のナポリタンボウ」
https://www.seiyosha.net/
 
連絡先:hamanomenkui@gmail.com

 

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