Skip to content

書評「日本企業にいま大切なこと」PHP新書  野中郁次郎/遠藤功 著

by staff on 2011/11/10, 木曜日
書評「日本企業にいま大切なこと」PHP新書  野中郁次郎/遠藤功 著  

 「日本に欧米型のリーダーはなじまない。現場から遊離したカリスマ性など不要なのだ。逆に必要になるのは、民の国であり、現場の国だからこそ、民や部下から慕われ、尊敬される資質であり、言動である」ここに言わんとすることが集約している。著者の野中さんは長年海外にも指導にいかれ、世界的経営学者である。遠藤さんは「見える化」や「現場力を鍛える」に見られる現場に精通した経営戦略家である。

 リアリズムなき日本政治は「失敗の本質」を繰り返すといい、イデオロギーがもたらす単眼思考を戒めている。中国の今の急成長を「マルキシズムの思想と資本主義の手法をプラグマティックに現実に適応させた結果」と位置付けている。プラグマティズムは実用主義のこと。国家の枠を超えて知を結集し、収束にあたるべき原発事故において、IAEAをはじめとする世界は、

日本に不審の目を向けた。必要な時に必要な人脈をもっていることこそが政治のリアリズムであると論じる。経験がないから手が打てないではなにごとも始まらない。

 「たとえばチャーチルはヒトラーが台頭しなければ、ただの老政治家としてその役割を終わっていた。」「ヒーローとは、まさに時代がつくるものだ。」「東北地方を特区にして住民の英知を結集し、思い切ったチャレンジを超法規的に行う。リアリズムと実行力をもった潜在的リーダーをその中枢に抜擢し、国内だけでなく、世界レベルでスマートシティなどの経験者を集めながら、彼らを支援する仕掛けを産官学民が総力を挙げ、構築するのだ。」次がなるほどと思う。

 「どれだけ彼らが優秀でも、使いこなせなければ意味がない。結局のところ、優秀な官僚をコントロールできる哲学や胆力をもった政治家がどれだけいるか、という問題に立ち戻るのだ。政治家自身も与野党を問わず、抜擢を行って人材育成の格好の場とすべきだろう。さらには民間の優れた人材を組み込みながら、より有機的なエコシステムによって構築される21世紀の世界において、先駆的なビジョンを東北から発信する気概が必要とされているのだ。」

 今求められているのは「やってみなはれ」のように、やらせて励ましていく人、組織なのだ。野中さんはそのなかで、企業経営について「サイエンスとアートを融合させるような考え方が求められている」「いうまでもないことですが、意思をもたない”モノ”に対して、人間には”かくありたい”という意志があります。企業ならば、たんに売上や利益などの客観的な数字を追いかける以前に、”自分たちの会社はどうありたいのか”"どんな善をめざす会社なのか”といった習慣的なテーマがあってしかるべきでしょう。」サイエンスを標榜したアメリカ型の経営が限界に突き当たった以上、今後の企業は自分たちにとっての「善」が何であるかを再確認することで、新しい経営モデルを生み出すべきといわれます。

 さて現実に目をむけてみる。「多くの人々の目にふれやすい家電製品などは韓国や中国メーカーに勢いがありますが、そうした完成品を支える素材や部品のジャンルにおいては、日本企業が世界市場で着実に根をはっている。」「あらためてふりかえってみると、失われた二十年とは日本企業が自我を失っていた二十年でした。グローバリゼーションの激流に翻弄されて欧米的な価値観を盲目的に導入した結果、日本的な価値観が消滅し、去勢され、根無し草になってしまったのです。日本企業にはむかしから欧米とは異なる職業倫理感や経営哲学がありました。日本独自なアイデンティティを回復させ、私達はいったい何者なのかを再認識することが、未来の創造へと繋がるのだと思います。」

 神々が沢山いらっしゃる日本だからこそ、謙虚に大胆にリアリズムをもって対処すべきなのだ。

(文:横須賀 健治)

<Amazonで購入>

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top