ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第14回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第14回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
ミレニアム(千年紀)の2000年、OECD(経済協力開発機構:本部パリ)は “21世紀の人材像” に関するレポートを発表、偶然読む機会に恵まれました。そこで指摘されている能力を独断で要約しますと次の3つになります。第一は “未体験の状況での課題を的確に[発見・設定・解決・展開]する能力” 。第二は “異なる文化的背景を持つメンバーとチームを組み、コミュニケーションをはかりながら成果を出す能力” 。第三は “何を学ぶ必要があるかを特定して持続的・効率的に学習できる能力” です。大リーグでプレーするイチローが国内だけでなく海外でも高く評価されるのは、これらを見事なまでに体現していることにあるような気がします。梁塵秘抄では “甲斐の国より罷り出でて、信濃の御坂をくれぐれと、はるばると、鳥の子にしもあらねども、産毛も変らで帰れとや“ とあります。古里から都に出てきて今や元には戻れぬすれっからし。それでもあきらめず生き抜くのが人生。今であれば “抽象力(コンセプト化・モデル化)” の強化が起死回生策になるかもしれません。 “抽象化するとは、数理的・論理的な形に整理するということである。更に突き詰めると、矛盾を取り出してそれを排除するということである” と日本初のノーベル賞受賞者・湯川秀樹博士。文楽の竹本住大夫師匠がいう “台本にない文章と文章の間の字のない空間” に通じるかもしれませんね。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
変化を凌いできた上での世界的行き詰まり 誰もに哲学の習慣化が求められる
現在と未来・形式知と暗黙知・利益と共通善 矛盾の解決が人類共通のテーマ
周囲が喜ぶことを大事にする 優れたものを認めないことこそ野蛮、とゲーテ
ゲーテは日本でも深く親しまれている文豪の一人ですが、その才能は多彩で、詩人・劇作家・小説家・自然科学者・政治家・法律家など多方面で活躍しました。少年時代まで過ごしたフランクフルト(ドイツ)の “ゲーテハウス” は知的価値創造の本源とは何かを感じさせてくれます。これからはあらゆる状況に対応できる “リベラルアーツ&ユビキタス” の時代。ジャンルを問わず、優れたものを素直に受け入れる気持ちこそが大切だということでしょうか。今後の環境変化は避ける・凌ぐというレベルを超える大規模なもの。“現在と未来”“形式知と暗黙知”“利益と共通善”。人類がめざすコンセンサスは未だ不明確であり、答がないところに挑む “野生の思考” を突破口にするしかなさそうです。変化が繰り返し生み出すアンビバレンツ(二律背反)の対応には、すぐには役立たないことにも好奇心を失わずやり続ける “ライブ感” が不可欠になりそうですね。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
自らが自力で機会を生みだし、機会を通じて自らを変える 思い切り泣き笑う
話すことが上手な人は、聞く能力をもっている ひらめきに、妥協は要らない
ウィーンオペラ座は、同じオペラを毎年公演 深みを極める上では賢明な判断
ウィーンはドイツから北イタリアまでを支配したハプスブルク帝国の首都でした。その威信をかけた歌劇場がウィーンオペラ座。同じオペラを毎年公演するのは深みを極める上では実に優れた知恵というほかありません。オペラ座で実感する質実さと偉大さ。磨き込むことの凄さと創造価値。2002年から数年間、日本を代表する指揮者・小沢征爾さんが音楽監督として活躍されたことも頷けます。グローバル化の中で、汎用品はますます安価に提供されるようになっていますが、一方で、鍛えられた技に支えられる高級品は、一段と高い評価を得るようにもなっています。付加価値が日々深化していく領域での勝負こそが日本の主戦場。同じオペラを毎年公演することで、修練を重ねた深みの度合を絶えず検証するプロセスはビジネスでも大いに学べるはず。あくまで原則を重視した上での実践。周囲の汎用価値に安易に妥協する道だけは避けたいものです。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
人生では、あらゆることが偶然の産物 一方で、すべてが必然ともいえる
価格競争のように見えるが、あくまでも価値競争 税制も民族固有の問題
人間が賢いのは経験自体ではなく経験に対する能力、とバーナードショー
バーナードショーは19-20世紀にかけて英国で活躍した劇作家・劇評家・音楽評論家です。代表作“ピグマリオン”はミュージカル化され “マイ・フェア・レディ” としてブロードウェーや映画で大ヒットしました。大器晩成型で才能が認められたのは40代。94歳で亡くなるまでに数多くの戯曲を残し、1925年にはノーベル文学賞を受賞しています。常に前向きで進取の精神に富み、新しい考え方に対しては一貫して賛成に回ったといわれます。これからは、思いを込めて分身となる技・道具に磨きをかけながら道なき道を歩む時代。何が起きても不思議ではない時代ですが、本命は愚直に自らがめざす価値を極め続ける人材。単に経験を重ねるということではなく、経験への対応力であり経験からどれだけ深く学ぶか。それは “現場・現実・現物に徹した哲学” に戦略的に挑むことなのかもしれません。それには、思う存分失敗が許される環境が欠かせないですよね。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(八)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第14回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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