ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第24回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第24回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
プロの将棋棋士と将棋ソフトが対戦する“将棋電王戦”は今年が最後。来年からはプロ棋士と将棋ソフトが組んで対戦する“電王戦タッグマッチ”へ。プロ棋士も将棋ソフトから学ぶことが多くなり、人工知能を敵ではなくパートナーと位置付ける狙いのようです。最近“2045年問題”が話題になり、2045年には1台1000ドル(約12万円)程度のPCの情報処理能力が全人類の能力を超えるとの予測も。人工知能が人間の意思を介さずに仕事をしたり、自らを超える人工知能をつくり出したりする時代の予感。トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一先生の教えは“人間の知能を尊重し、創造性を高め、良い製品をつくる。人間の思考力、発想力を最大限活かす“というものです。ただ、今後はその中に”人工知能との連携“を暗黙の前提に置く必要があるかもしれません。しかし、登山では途中まで舗装道路で突っ走れても、頂上に近いところは石ころだらけのはずで、モノマネでなく自力突破の世界。この砂利道こそが人智の腕の見せどころ。“やりたいこと”“やれること”“やるべきこと”の自問自答の繰り返し。梁塵秘抄では“太子の身投げし夕暮れに、衣はかけてき竹の葉に 王子の宮を出でしより、沓はあれども主もなし”とあります。釈迦の前身である王子が衣服を脱ぎ、虎の棲む谷間に身を投げて飢えた虎を救うという話。“人間のもつ仏心”が人工知能と組む上での切り札かも。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
経済は縮小均衡 生活の質を下げなくとも、幸福は追求できる
世界は文明間の挑戦と応戦 お互いに鍛えあいながら進化する
地球上の不安定を嘆かない 進化を生み出す独創の前提と置く
“石器時代は石がなくなったから終わったのではない。青銅器・鉄器など、石器に代わるイノベーションが生まれたから終わったのだ。石油も同じだ”とサウジ元石油相ヤマニ。石油に代わるイノベーションの萌芽は、少しずつですが観察されるようになってきました。一人ひとりが独自の幸福・充実や覚悟の尺度をもつ時代がきたようです。歴史を振り返れば、障害がなく食糧・資金の欠乏もない時代などほんの僅か。不確実・不安定を象徴する相場の世界の極意は“判断”と“実行力”の合致にあるとか。種々雑多な情報を集約して売り・買いの判断を下す最大のポイントは“大局観”。目先観を排除し、大局観から判断を出したら間髪を入れず実行に移すこと。ぐずぐずしていると、どんな立派な判断も宝の持ち腐れということですかね。 “幸運は待つ人のところに来るかもしれないが、エネルギッシュに行動する人の残り物だけだ”とアブラハム・リンカーン。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
うまいと強いとは異質 アマはうまくプロは強い
関係性を維持しながらも 心を込めすぎないこと
均質化圧力を排除 真・善・美と習慣、とカント
難解この上ないカントの思想は“批判哲学”と呼ばれますが、批判は哲学のための準備・予備であり、批判の上に真の“形而上学としての哲学”が築かれると考えていたようです。馬具職人の四男坊として生まれ、研究のために家庭教師をして生計をたてた時期もある苦労人。“形而上学としての哲学”こそ、実はイノベーションの原点。技術は教えられても、それを乗り越える術は教えられず、自分で見つけるしかないもの。“習慣”への信頼が篤く、人間らしい習慣こそが危機・難関の突破口になるとの確信。常時予期しておくこともまた習慣のなせるワザかも。“最大限(やり放題)と最小限(極限まで切り詰めたもの)を稽古しておいて、本番の舞台はその中間をやる”と歌舞伎役者・坂東玉三郎。人間・芸事の世界では想定外のことが何時起きるかわからないことへの対応。 “冬の木々はすべての虚飾をはぎとられて本来の思想だけで立っている”と作家・藤沢周平。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
相手に届く表現を工夫し続ければ、コンセプトは自ずと熟成していく
文化風土を無視し、情報だけがそれを飛び越えて行き来すると危ない
懐徳堂、浪花商人の学校 商売の技でなく人間観・道徳観を敲き込む
江戸時代の教育は、制度・インフラが貧弱で劣悪でしたが“人間として社会に出てやっていけるようにする”ことにおいては、非常にすぐれていたようです。まさに“文字”と“非文字(人間として一人前にする)”を併せた教育の理想形。懐徳堂も浪花商人の学校ながら、商売の技でなく人間観・道徳観を敲き込む場との位置付け。学ぶことの最大の成果は“自力で脱皮していけること・世の中の景色が変わって見えること”。文化風土は人間にとって根底にある基盤、これを度外視したコミュニケーションは不安定で危険。宮大工の世界では“研ぎ”はすべての基本で、よく切れる刃物を手にすれば誰でもいい仕事ができること。だからこそ“研ぐべきものを持つ”ことが大切であるとの教え。 画家・モネは代表作“睡蓮”を描く頃、白内障で目が見えなくなっており、それゆえに“目が見えていれば見えなかったものを描くことができた(心眼)”と画家・堂本尚郎。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第24回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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