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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第35回)

by staff on 2016/2/10, 水曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第35回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 イノベーションでは、ただ頑張れという叱咤激励でなく、何よりも大事なのが人間への信頼。信頼する人間のやることは最後には果実につながるはず。米国3Mでは “イノベーションを超えたコンセプト” を重視。狙いは “単なる前進” ではなく “異なる意識レベルへの跳躍” 。3Mの15%ルールはよく知られていますが、この文化のおかげで、奇妙な接着剤の意見を求めて社内をウロウロしても咎められることはありませんでした。といって誰も真剣に耳を貸そうとする人がいないのが世の中。しかし、関心はないけれど、社員の記憶の片隅に接着剤のことが残るところが “組織文化” の底力。それが讃美歌集の “ノリのついた栞” につながり、最終的に莫大な利益を生む “ポストイット”へ。これぞ“文化が生む勝利の方程式”。シリコンバレー企業がもつ“特定の目標に向かって社員が猛烈なスピードで疾走する” というイメージとは異質なもの。 “汝(なんじ)アイデアを殺すなかれ” との戒律は、そのアイデアが失敗すると証明できない限り誰も止められないということ。他方、人事評価は徹底した成果主義で、貢献度が “非常に高い・満足できる・満足できない” でバッサリ。梁塵秘抄では “伊勢の海に朝夕に海女の居て 採り上ぐなる、鮑の貝の片思いなる” とあります。仕事でも片思いはしばしあること。“今わかりやすくとも10年後に変わる言葉は使いたくない” と作家・黒田夏子。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

リベラルアーツの重要性 ものの見方・人間の見方・状況の把握
どんな判断を下すか それをまとめて・他者に伝えて・説得する
限られた時間の中で、是非ともやるべきことをやれるかが分水嶺
先人が考えた内容の反復 自分の考えの明白で効果的なロジック

 最新技術を捨てることで新たな価値を創りだした代表格がウォークマン。録音できない再生機なんて売れないと社内ではボロクソ、開発メンバーは売れなかったら転職しようと覚悟したとか。発売当初は予想通り売れず、ソニーショップも “こんな半端物” と見向きもしない有り様。唯一、丸井の担当者が “これは売れる” とまとめて注文。その後ウォークマンは大ヒットして品薄状態に。ただ恩義ある丸井への出荷は最優先。最近では、大学発ベンチャーで東証一部上場を成し遂げた “ユーグレナ” も九転十起。土壇場で伊藤忠商事の目利き力が現在の大躍進へ。感謝の気持ちはずっと忘れず、関係者がコンビニを利用する時は遠回りしてもファミリーマート以外へは行かないとか。教訓は “ベンチャーに準備万端はありえないこと” 。“合目的すぎる”風潮から身を守る手立てがリベラルアーツ。 “演奏をしくじったら、それも見せ場にしていく” とボブ・ディラン。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

ジャックウェルチの株主への手紙(二) 改革は勝利へのワークアウト
競争優位性が境界のない企業を創造する 小企業精神の融合とその成果
能力を無限に開発する三条件 境界のない行動・スピード・ストレッチ
三つの行動規範の徹底 和・漢・洋の精妙な複合をめざすことを最重視

 米国GEのCEOとして約20年間君臨したジャックウェルチは毎年 “株主への手紙” を送り続けました。内容は株主だけでなく顧客・社会・社員に向けての提案&叱咤激励。 “世界のニーズに対応する事業創造” “企業文化を不良事業部門から学ぶ”“競争優位性が境界のない企業を創造する”“中小企業精神との融合” “改善する能力に終わりはない” “加工情報には流されない”。特に、伝統的大企業の強みの中に中小企業の長所を積極的にとり込むという洞察と覚悟はみごと。企業改革では “リストラ” “ダウンサイジング” に世界で最初に挑戦した一人。企業の合併・買収(M&A)と国際化の推進でも先鞭をつけました。成果を生む能力を培う三条件は “境界のない行動・スピード・ストレッチ” の三つ。行動のすべては “顧客の獲得か顧客の維持を目的とする” と極めて明快。“やりたくなければ楽をしていい。その代りツケは必ず回ってくる” とサッカー・三浦知良。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

戦略思考とは生きて学ぶロジック 歴史から学び他者にも学ぶ
戦略目標&実行計画 永く生き延びるには闘う相手を持つこと
生活や学習では対象の範囲を拡大・縮小 遊び心と知的好奇心
鯉を描くのでなく鯉を見た感動・感動の色を描く、と棟方志功

 居間のテレビを双眼鏡で視るといわれたほど極度の近眼だった板画家・棟方志功。少年時代にゴッホの絵画に出会って感動し “ゴッホになる(ゴッホも我流で師匠につかなかった)” と芸術家を目指したのは有名な話。“大和し美し” が出世作になり、生涯の代表作の一つは “二菩薩釈迦十大弟子板画柵” 。私が最初に “棟方志功” 展を見たのは数十年も前で、その時一番印象に残ったのが “二菩薩釈迦十大弟子板画柵” 。印象に残った一枚の複製を購入、今も自分の部屋に飾っています。先日、ある美術館で “二菩薩釈迦十大弟子板画柵” を再度観る機会があり、勁さと大胆さにあらためて魅せられました。駒場にある日本民芸館には板画・書など、棟方芸術のエッセンスが詰まっています。草野心平の詩のままに “日本のゴッホにならうとして世界のムナカタ” になりました。好奇心と統一性のなさの妙味。“人間が備える理性と不合理性の両方を甘受する” とケインズ。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第35回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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