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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第36回)

by staff on 2016/3/10, 木曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第36回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 最近は美術館・博物館での“浮世絵”展が人気ですね。浮世絵は江戸時代に成立した絵画ジャンル。現在では多色摺り木版画(錦絵)のことを思い浮かべますが、それ以前はモノクロの墨摺りや紅による彩色の時期が100年以上も続いたとか。また、浮世絵では木版画を真っ先に思い浮かべますが肉筆画も実に圧巻。いずれも遊び・戯れが根っこにあり、生きることを貪り食う喜怒哀楽が命。21世紀はAI(人工知能)と連携して生きる時代といわれ、たいていの仕事はAIがやってくれそうな気配。最近経験した銀行窓口サービスでは、ベテラン社員が不在で役割単位の担当者がいるだけ。複合するサービスの依頼はたらい回しになりAIに任せた方がよっぽど早いと実感。接客も人間がやるから無条件にいいとは限らない世界がすぐそこまで。“フィンテック”が教える本質は、求められているのが“金融サービスであって、金融機関サービスではない”ということ。仕事の定義も歴史の中で常に変化しており、いくつかの仕事は姿を消す運命に。人生の意味や人間の価値も、自分で自分を判断するしかなさそうです。梁塵秘抄では“思ひは陸奥に、恋は駿河に通ふ也 見初めざりせばなかなかに、空に忘れて已みなまし”とあります。千里の道も厭わない思いの深さはいまも同じ。“浮世”には“現代風”という意味もあるんだとか。“菊の井のお力は鋳型に入った女でござんせぬ”と樋口一葉。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

あまり自分の細工におぼれない 事実には忠実になる
世界の動きを見るのでなく世界の動きに関わる心意気
不器用を一つの武器にする 一人で死ぬ孤独に慣れる
ウソは常備薬で真実は劇薬、とは心理学者・河合隼雄

 心理学者・河合隼雄は日本人として初めてスイス・ユング研究所で分析家の資格を取得した“人間学”の達人。“せっかく生まれてきたこの世で、自分の人生をどのような物語に仕上げていこうかという生き方こそ幸せ”というのが持論。現在は変化のスピードがあまりに速いため、無理に合せようと器用に振る舞いがち。だけど細工におぼれるとかえって落とし穴にはまることに。真実を大切にしながら、ウソも承知して生きるのが遊びの精神ということですかね。世界の動きをただ見るのでなく、不器用を一つの武器にしながら、世界の動きに多少とも関わりをもつ心意気ということでしょうか。世界の目線は“東京は何ともクレイジーな街”との見立て。昼は形式的で閉じているのに、夜は開放的な宴会モード。だけど、このギャップこそがもしかしたら創造力の源泉かも。“現在が未来へ食い込むにつれて過去はその姿を新しくする”と社会学者・清水幾太郎。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

ビジネス展望 科学・技術・芸術・デザイン・ビジネスを一体化
人より速く走るのでなく、観客も計器もないトラックの中を走る
生命に学ぶ 要素技術から生命のあり方を教えるシステム技術へ
スキルセットとマインドセットの統合 北斎の色は藍・茜・余白

 葛飾北斎は、米ライフ誌が選ぶ“この1000年で重要な功績を残した世界の100人”に日本人で唯一選ばれました。100人の中にはエジソンをはじめ、ダ・ヴィンチ、ニュートン、ナポレオンなど多士済々。その北斎の生活は困窮を極め、“餓死しても絵の仕事をやり通してみせる”と覚悟する生き様だったとか。狭い長屋で布団を頭からかぶりながら、朝から夜更けまで筆を走らせたという天性の努力家。“日経・私の履歴書”で、相撲をとるために生まれてきたといわれた横綱大鵬が1か月の連載中に数回“俺は天才じゃない。ヘドを吐くほど稽古してきたんだ。天才だったら稽古しなくても勝てるはずだ”と反論したことを思い出します。北斎も最晩年の90歳まで、毎朝起きると布団の中で3枚の獅子図を描くのが日課で、自らを“画狂人”と言って憚りませんでした。“黒澤明は自分が作りたいものを作った。客を集めようと企画を立てた訳ではない”と俳優・仲代達矢。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

組織活性化(二)アイデア・才能・経営資源の社内市場を設ける
組織内外の力を動員できるように新たなマネジメント手法を考案
絵画は二次元 三次元に変換する詩的想像力 詩こそ資本主義に
何が起きているかでなく何が起こりそうかが決め手、と萩本欽一

 萩本欽一は入団当時、“才能がないからやめたほうがいい”と言われる一方、“どんなに才能がなくても、1人でも応援する人がいたら成功する”とも諭されて奮起。“得意なこと・やりたいこと”は一致しないから、まず得意なことを見つけること。それが成功したら“やりたいこと”ができるようになるとの発想。一直線の最短距離でなく回り道が大事なんだとの信念。組織活性化はいつの時代でも必要ですが、2点間の最短距離が一番危険。現状には安住せず、潜在する才能やスキルを内部の市場機能で時間をかけて顕在化させる工夫。回り道とは、抽象化・概念化を熟成させることで、次元を増減していく変換プロセス。絵画・写真も三次元を二次元に変換する詩的想像力の勝負。詩こそ資本主義の潤滑油。“大きな思想が世界を支配する時代は終わり、柔らかくて弱いけどじわっと浸透していく文化が時代をつくる状況が生れている”と美術史学者・青柳正規。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第36回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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