アートのひみつ(第8回) 身体はアートを生み、楽しむ。
第8回 身体はアートを生み、楽しむ。
みなさん、こんにちは!
東京オリンピックまで3年をきりましたね。しかし、ずいぶんと暑い時期にやるのだなあ、と思いました。気温も高いでしょうが、きっと出場する側も観ている側もアツい夏になるのでしょうね。
競技のスポーツの身体能力を最大限に発揮している瞬間を観るとき、強いなあ、美しいなあ、と私は思います。そしてアスリートのみなさんは身体能力が長けているだけではなく、たくさんの努力や発想力もすごいですよね。まったく関係なさそうでもそこには少なからずゲージュツの作用が関わってるのではないかと私は思うのです。
ダンスや演劇のように、人間が持つ身体的な特徴や能力が芸術表現に深く関係するものもあります。身体を使った表現は私たちの心を動かします。では、反対に絵を描くときなどは身体は作品にどういった影響を与えるのでしょうか?
もちろん、脳も身体の一部ですから、心(=思考や感情)におおいに関係します。しかし、もっと意識しない部分でも身体は活躍しています。この美しい絵中にも、です。
フランスの印象派の画家、ルノワールが描いた女性や子どもを描いた肖像画はダンスホールに集う人々を描いた「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」や、戸外で制作された風景画と並んで、日本で人気の高い作品かと思います。
そのなかでも最も美しいと言われている作品がこちら。
1877年作。ルノワールの代表作品の一つでモデルは舞台女優のジャンヌ・サマリー。やさしい色合いと筆触(タッチ)は彼女の愛らしい生き生きとした表情と作品の暖かい色あいが観る者をふんわりと、しあわせな気持ちにさせてくれます。
印象派は戸外制作や、絵の具の進化、変化した制作する状況に合わせて描く方法も変わっていきました。
印象派以前が、「静」だとしたら印象派以降は「動」のスタイル。
風景などを見るとよくわかりますが、画題になる対象の細かな部分よりも本質をとらえるために効果的な方法が使われています。短いストロークですばやく描く、よりあざやかに明るく見せるために色を混ぜることを避ける(筆触分割)、などなど…。
この「動」のスタイルが確立してから数年後、ルノワールは自分のスタイルをさらに追求していきます。
対象の一瞬の表情をとらえるための「動」のスタイルは、画家の手の動きや、筆を運ぶスピード、描くときの筆圧、絵の具の扱い方、「静」のスタイルでは見えなかった画家の身体を通したそれぞれの特徴が見えてきます。
究極の筆触分割は点で描くまでになっていきましたが、無意識のクセなのか、意図したものなのか? できるならば独特の筆触の画家にインタビューしてみたいものです…。
ルノワールともう1人、気になる画家がこちら。
ゴッホの自画像です。ルノワールのジャンヌの肖像画と同じ年代に描かれました。
うねるようなリズムを持つ独特な筆触。隙間なく埋められた背景。実物大で模写をするとサイズ感がよくわかると思いますが、ゴッホの感性と手だからこそ生まれた筆触です。この自画像は色彩のトーンはおだやかです。眼光は鋭いけれど瞳の色はこの絵の基調になる色で描かれています。
また、背景を文様で埋めるような「平べったい」描き方から、このころのゴッホが浮世絵に魅了されていたことがうかがえます。
一方のルノワールのジャンヌの肖像画は羽根がふわふわと舞っているような空気感があって、ルノワールの筆の運び方が持つスピード感と「間」が艶やかさを生み出しています。
印象派の描き方の特徴で輪郭は柔らかく曖昧に描かれていますが、全体的にやさしい筆触です。その中に瞳の色は深みのある青色でくっきりと。まなざしが際立って見えます。
このほほえみに吸いこまれるように惹きつけられるひみつがここにもあります。
描く方法といえば、絵画は絵筆や鉛筆を使って描くとは限りません。足で絵筆を使うことだってできます。また、手や指で直接描いたりすれば手の大きさや指の長さ、腕の長さが人によってちがうので表現にそれぞれの味わいが出てきます。
真っ白な画用紙をわざわざ用意しなくても壁に新聞紙を貼って、好きな色の絵の具をペタペタと手で混ぜてみる。または腕をぐーっと伸ばして鉛筆で思いきり長い線を引いてみる。
身体を意識したこのドローイングあそびはストレス解消にもなりますので大人の方にもおすすめです。
身体の動きは描く作品に影響を与える一方で、身体で感じるアートは心もほぐしてくれると私は思います。
筆者紹介
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