アートのひみつ(第12回) アートが見せる顔
第12回 アートが見せる顔
みなさん、こんにちは! 12月は1年を振り返りながらあわただしく過ぎていきますね。
これまでアートの持つ魅力をさまざまな芸術作品ともにご紹介してきましたが、今回はアートが見せるもうひとつの顔についてふれてみたいと思います。
私がいつも出張アート教室でうかがっているある施設には20年、30年と絵を習っていらしてとても素敵な作品を描かれる方がいらっしゃいます。この方は私がおこなうレッスンに一時期、困惑していました。
「私の習ってきたこととだいぶ違うようで…でも、先生のレッスンは楽しい。何が、どう違うんでしょう??」
この方のおっしゃった「楽しい」がじつはポイントです。「いろいろ工夫することを考えて悩む時間もあるけど、それも楽しい。」とおっしゃる生徒様もいます。世の中にはお金という物差しによって計られる芸術作品の価値、または上手、下手など、評価されるための芸術作品だけではないはずです。なぜでしょう?
アートは趣味、学術・研究などのシーン、または芸術作品を造るプロの表現者だけに必要なことではないし、誰しも生きていくのにいらないということはないと私は思ってきました。でも何かスッキリしなかったのです。「どうしてアートが必要なのか?」
それをスッキリできたこととして「臨床美術」に出会ったことなどいくつかありましたが、そのひとつに1983年、ハーバード大学の心理学者ハワード・ガードナーが提唱した「多重知能理論」との出会いがあります。ちょっと覗いてみましょう。
「人間はみんなそれぞれMultiple Intelligences(多重知性)の組み合わせを持っており、少なくとも8~9つの知的活動の特定の分野で、才能を大いに伸ばすことが出来る。(1983)」
※「多重知能理論の概要」恒安眞佐(芝浦工業大学)より引用。
その8つの知能・能力とはこちら。
(1) 言語的知能
(2) 論理数学的知能
(3) 音楽的知能
(4) 内省的知能
(5) 対人的知能
(6) 身体運動的知能
(7) 空間的知能
(8) 博物的知能
「芸術」はこの8つに含まれません。
なぜなら、これらの能力をつなぐ、組み合わせて活性化する、リンクさせていくことにゲージュツは大いに関わっています。というより、その働き、そのものなのだということなのです。
仕事や、日常生活の中で何か問題を解決しようとするとき、「(頭の中にイメージする)こういう状態に持って行きたいけど、どうしたらよいか?」さて、自分には何ができるか?どんな方法で、どのように行動すればよいか?またどのように身体を使えばよいか?
これは学校の授業の図工や美術の時間に工作や絵を制作するときに自分の思い描くイメージに近づけるために試行錯誤するときの思考と似ています。
この創造性を持った思考を英語ですと「art thinking」になります。
つまり、ゲージュツ、アートは全ての分野に関わっているということなのです。大人になり、クリエイティブなことなんて縁がないと思っていても知らず知らずに「art thinking」をしているのではないでしょうか?
8つの領域の分野をどのようにリンクさせるかで人それぞれで伸ばしていける可能性は広がるとガードナー博士は言っています。職業についても、音楽的能力が高いからといって必ずしも音楽家になる、というような単純なことではなく、ちょっと極端ですが論理的数学的能力が高い芸術家や、アスリートが生まれることもあるわけです。
私は心理学が専門ではないので深く掘り下げることはできませんが、さまざまな知性の組み合わせはその人の性格や生きる姿勢にも影響が表れていくかもしれないと思ったりします。
8つの知能に「art thinking」が関わるときがアートがどのように作用しているかはこれまでの私のコラムを読んでいただくとおわかりいただけると思います。
身近にアートを感じたり、気づいたりしたらぜひ「アートの横顔」を見てください。きっとこれまでと違う景色をアートは見せてくれますよ。
「見たいと願う人たちのために、いつも花はあります。」
ー アンリ・マティス
筆者紹介
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